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第二百六十八話 小さな大魔導師(後編)



-----三人称視点---



 帝国の西部エリア。

 連合軍の第二軍の司令部がある天幕。

 その場にて、リーファはグレイス王女と再会した。


「リーファさん、お久しぶりです」


 グレイス王女は、以前のように、

 黄緑の髪を頭の右側で結わってアップにして、 

 手足も相変わらず長く、眉目は当然秀麗。


 紺色の半袖のインナースーツの上に、

 ミスリルの軽鎧ライト・アーマーという出で立ち。

 前に会った時とほぼ同じ格好であった。


「グレイス王女殿下、お久しぶりです」


「ええ、いつ以来かしら?

 でもアナタ達が来てくれれば百人力よ」


「……全力を尽しますわ」


「よく見れば、炎の聖龍討伐時の狙撃手スナイパーさんも居るわね。

 確かお名前はジョンソンさんでしたっけ?」


「そうです、グレイス王女殿下」


「正直、今回の風の聖龍には苦戦していたけど、

 アナタ達の協力があれば何とかなりそうね。

 ん? そちらの黒のレッキスの兎人ワーラビットはどなたかしら?」


「ボクは兎人ワーラビットのハイ・セージだピョン。

 名前はラッピー・ラビンソンだよん。

 この名前に聞き覚えない?」


「ラッピー・ラビンソン?

 いえ知らないわ、エルネス団長はご存じかしら?」


「ラッピー・ラビンソン……あっ!!

 聞いた事があります。

 超個人主義だけど、物凄い大魔導師の兎人ワーラビット

 確かその名がラッピー・ラビンソンだった筈」


 エルネス団長が驚いた表情でそう述べる。

 するとラビンソンは、気を良くしたようだ。


「うひひひ、ボクの名前もエルフ族にも知られてるピョンね」


「この人、さっきからピョンピョン言ってるけど、

 本当に大丈夫なの? なんか少し心配だわ」


「む、エルフ族の王女ともあろう御方が

 この小さな大魔導師の力を見抜けないとはね」


「まあ確かに全体に漂う魔力は凄いわね。

 そうね、喋り方で差別しちゃ駄目ね。

 ラビンソンさん、私が悪かったわ」


「うむ、分かれば良いピョン」


「……それで西部エリアの聖龍の属性は何でしょうか?」


 場の空気を変えるべく、

 リーファが別の話題を振った。


「風属性よ。 風の聖龍オルパニーアという名前らしいわ。

 能力値パラメーター的には、前に戦った炎の聖龍とほぼ同等ね。

 正直、私一人では太刀打ち出来なかったわ」


「でもこの面子、それと第二軍の支援があれば、

 必ず勝機は見えてくるでしょう」


「そうね、リーファさんとその盟友。

 それと小さな大魔導師ラビンソンさんも居るし、

 ちゃんと作戦を立てて、

 作戦通りに戦えば、勝てると思うわ」


「うん、ボクが居れば大抵の事は出来るピョン。

 ボクはこう見えて闇属性以外の七属性の魔法が使えるピョン。

 標的は風属性ならば、

 基本は炎か、土属性攻撃で攻めると良いピョン」


「へえ、それは頼もしいわね」


 と、グレイス王女。


「グレイス王女殿下。

 今回の風の聖龍も額に例の宝石があるのでしょうか?」


 リーファの問いにグレイス王女が「ええ」と頷く。


「その辺は炎の聖龍と同じだわ。

 あの額の宝石を破壊すれば、きっと勝てるわ」


「グレイス王女殿下。

 その聖龍は人語を喋るピョンか?」


「ええ、喋るけどそれがどうかしたのかしら?」


「その宝石は「進化の宝玉」かもしれないピョンね」


「進化の宝玉? あの伝説の?」


「進化の宝玉は、只の伝説上の秘宝じゃないピョン。

 ガースノイド帝国、またそれ以外の国も裏では、

 保有している可能性があるピョン。

 成る程、自我を持った高い知能の聖龍か。

 確かに通常なら、勝てない相手ピョンね」


「あら、小さな大魔導師さんにしては弱気ね」


「うひひひ、でも今回はボクが居るピョン。

 それにグレイス王女殿下とリーファくんも居る。

 それ以外の人達と上手く共闘すれば、必ず勝てるピョン」


「そう、それは心強いわねピョン」


 語尾にピョンをつけるグレイス王女。


「うひひひ、今はボクを莫迦ばかにしてたらいい。

 でも実際のボクの力を見れば、

 王女殿下、それと周囲の味方の考えも変わるよ」


「是非、良い意味で期待を裏切って欲しいわ」


「問題ないピョン、必ず期待以上の働きをするピョン」


「……それじゃとりあえず作戦を決めましょう。

 過去の炎の聖龍戦を踏襲して、

 前衛部隊は防御を固めながら中衛ポジションを維持。

 接近すれば風の聖龍は、

 強力なブレス攻撃や魔法攻撃で反撃してくるでしょう。

 だから各自の射程圏内には絶対入らないように!

 そして前衛が防御を固めている間に、

 中衛、後衛の弓兵や銃士は遠隔攻撃。

 魔導師部隊は攻撃及び対魔結界、レジスト、と臨機応変に動いてもらうわ」


「そうですね、聖龍相手にはこの戦い方が良いでしょう」


 リーファも相槌を打つ。


「うむ、基本方針はそれで良いと思うピョン。

 ボクは最強の大魔導師だけど、

 この通りの小さい身体だから、

 耐久力は紙装甲なんだピョン」


「ええ、でもそれも計算内よ。

 兎に角、聖龍は並の龍じゃないわ。

 例えどんなに凄い大魔導師が居ても、

 独りじゃ勝てないわ。

 だから皆で力を合わせて戦いましょう」


「はい」「そうするピョン」


 次第にグレイス王女がラビンソンを上手く誘導し始めた。

 リーファとしても、

 歓迎すべき事態なので、この場はあえて口を挟まなかった。


「でも今回は前回と違って、

 契約者マスターが一人ではなく、

 複数人居るようなのね。

 恐らく一人じゃ聖龍を制御できないみたい。

 だから隙を見て、契約者マスターにも攻撃して頂戴。

 それと前回のように、聖龍を転倒させれば、

 額の宝玉も破壊しやすくなるわ」


地形変化テレイン・チェンジを上手く使えば、

 聖龍相手でも転倒させれるかもしれないピョン」


「あるいは自分がまた足を狙撃。

 それからロミーナ殿が額の宝玉を狙い撃ち。

 という手を使えるな」


「その時はあたしに任せなさい」


 ジョンソンとロミーナの自分の力をアピールする。

 するとグレイス王女は、微笑を浮かべて――


「それぞれが各々(おのおの)の役割を果たせば、

 いずれ勝利は見えてくるでしょう。

 だから皆で協力して、風の聖龍を討伐するわよ」


 グレイス王女の言葉に、

 リーファやその盟友、ジョンソン。

 そしてラビンソンも「はい」や「任せるピョン」と声を張り上げた。


 こうして風の聖龍討伐チームが結成された。

 自称・大魔導師のラビンソンの実力の程は?

 いずれにせよ、リーファ達とその盟友は、

 再び激戦に身を投じる事となった。


次回の更新は2024年10月12日(土)の予定です。


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黄昏のウェルガリア
― 新着の感想 ―
チームが結成されて本格的に動き出しますね。果たしてどうなるのか気になります! それにしてもラビンソンは癖のあるキャラでありですね。
更新お疲れ様です。 風の聖龍との戦いも始まりそうですね。 前回は勝てましたし、今回はラビンソンがいるようですから大丈夫でしょう。 これほど自信満々ってことは、強くいてもらわないと困ります。
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