第二百六十二話 因縁のラバーマッチ(前編)
-----三人称視点---
「マリーダ殿、周囲は私やイザック。
そして護衛部隊が護ります」
「カリル、ありがとう。
ならば私はこのまま前へ出るわ」
魔剣士カリルやイザック。
その他の護衛部隊に護られながら、
マリーダが漆黒の軍馬を前へ走らせた。
「戦乙女リーファに告ぐ!
私は漆黒の戦女マリーダである。
私は貴君に再度、一騎打ちを申し出る。
貴君に勇気があるのであれば、
この一騎打ちに応じるが良いっ!!」
マリーダは声高らかにそう宣言する。
すると周囲の視線も自ずと彼女に集まった。
対するリーファも周囲の味方の視線を一身に浴びていた。
彼女の盟友、また同行者である騎士フローラとバジーリオ。
またそれ以外の多くの味方も彼女を見ていた。
……正直、マリーダに確実に勝てるとはいえない。
だがこの状況下で逃げる訳にはいかないわ。
ならば自分の力を信じて、戦うまでだわ。
リーファはそう心に刻み、
跨がった白馬をひとまず前へ走らせた。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「お嬢様、お気をつけて!」
「リーファさん、負けないで!」
「あたしはアナタの勝利を信じるだわさ」
盟友四人もリーファの勝利を願った。
そしてマリーダ、リーファの両者は、
ゆっくりと馬を走らせて、お互いの距離を詰めた。
「お義姉様、またお会いしましたわね」
「ええ、でも多分これが最後となるわ」
「あら? 戦う前から死ぬつもりなのですか?
ならば遺言や遺書を残すお時間を差し上げますわ」
「結構よ、それに死ぬのはアナタよ」
「……で騎兵戦、それとも地上戦が良いかしら?」
「……地上戦がいいわ」
「分かりましたわ、ならお互いに馬から降りましょう。
カリル、私の馬をお願い」
「はいっ!」
マリーダは漆黒の軍馬から降りて、
魔剣士カリルに馬を預けた。
同様にリーファも白馬から降りて、
騎士フローラに自分の馬を預けた。
「……封印結界はどうしましょう?」
「私が張っていいかしら?」
「お義姉様、宜しいですわ」
「……ならお言葉に甘えるわ」
そしてリーファは、封印結界の範囲を設定し始めた。
全長300メーレル(約300メートル)、幅二五メーレル(約二十五メートル)。
高さは、十五メーレル(約十五メートル)に設定。
前回の戦いより、いくらか横幅が広かった。
「我は汝、汝は我。 嗚呼、母なる大地ハイルローガンよ!
我が願いを叶えたまえっ! 『封印結界』ッ!!」
リーファがそう呪文を詠唱するなり、
リーファとマリーダの周囲がドーム状の透明な結界で覆われる。
そして二人を閉じ込めるように、
ドーム状の結界が広がった。
縦と横の広さも程良く、高さも問題ない。
この広さなら、十二分に戦えるであろう。
「マリーダ、結界の強度を確認して頂戴」
「ええ……」
マリーダはそう答えて、
周囲を覆う透明の結界に近づき、左手で触れた。
するとマリーダの左手がビリッと痺れる。
「……この強度ならば問題ないでしょう。
ではお義姉様、私達の三度目の戦い。
因縁のラバーマッチを始めましょう」
「ええ、じゃあ行くわよ! 『ソウル・リンク』ッ!!」
「了解、リンク・スタートォッ!!」
そしてリーファは『ソウル・リンク』を発動させた。
リーファと守護聖獣ランディの魔力が混ざり合い、
リーファの能力値と魔力が急激に上昇する。
「ガーラ、『ソウル・リンク』よっ!」
「了解ニャン、リンク・スタートォッ!!」
そしてマリーダと猫妖精ガーラの魔力も混ざり合い、
マリーダの能力値と魔力も急激に上昇した。
これで条件的には互角となった。
「ランディ、分析をお願いっ!」
「了解。 ――分析開始!」
「ガーラ、こちらも分析するわよっ!」
「了解だニャン、分析開始っ!」
いつもと同様に、
二人は互いに分析をする。
彼女等の戦いを見守る仲間、観客は、
固唾を呑んで、二人の戦いを見守っていた。
「マリーダちゃん、分析終了だよん」」
次の瞬間、マリーダと守護聖獣ガーラの意識が共有化された。
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名前:リーファ・フォルナイゼン
種族:ヒューマン♀
職業:戦乙女レベル56
能力値
力 :1850/10000
耐久力 :2540/10000
器用さ :1301/10000
敏捷 :2077/10000
知力 :2540/10000
魔力 :4257/10000
攻撃魔力:2540/10000
回復魔力:2701/10000
※「ソウル・リンク」で能力値強化中
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「流石ね、しばらく会わない間に、
地味にレベルアップしてるじゃない」
「うん、数値の上ではマリーダちゃんより上だね。
でもこれくらいなら、誤差の範囲だよ」
「ふふ、ガーラ。 ありがとう」
一方の守護聖獣ランディも分析を終えた。
「リーファ殿、分析を終えました」
「ランディ、ご苦労様」
そしてリーファの意識、p守護聖獣と共有化されて、
マリーダの能力値の数値が露わになった。
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名前:マリーダ
種族:ヒューマン♀
職業:漆黒の戦女レベル49
能力値
力 :1615/10000
耐久力 :2320/10000
器用さ :1215/10000
敏捷 :1925/10000
知力 :2450/10000
魔力 :4287/10000
攻撃魔力:2355/10000
回復魔力:2285/10000
※「ソウル・リンク」で能力値強化中
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「気がつけば、ここまで来たのね。
もう私とそんなに大差ないレベルと能力値ね」
「いや細かい数値では、リーファ殿が勝っている。
戦い方さえ間違えなければ、充分勝機はあるさ」
「ふふふ、ランディ。 貴方、口が上手いわね。
いいわ、ならば私も本気を出すわっ!
女神サーラよ、我に祝福を与えたまえ!
――「戦乙女の祝福」っ!!」
リーファがそう呪文を唱えると、
リーファの身体に目映い光が降り注がれた。
これによってリーファの力と耐久力、敏捷性の能力値が強化された。
また『自動再生』の効果も発動した。
そして更にリーファは、
職業能力・『能力覚醒』を発動させる。
「『能力覚醒』っ!!」
先程、同様にリーファの周囲が目映い光で覆われる。
この結果、五分間、リーファの能力値の数値が倍化された。
「――零の鼓動』」
リーファは更に職業能力を重ね掛けする。
これで彼女は一定時間、
無詠唱で魔法を使用出来るようになった。
対するマリーダも同様に自己強化の職業能力の重ね掛けをする。
「――能力覚醒」
まずは無難に能力値を倍化する。
「――魔力覚醒っ!」
今度は魔力覚醒。
どうやら彼女も短期決戦を挑むようだ。
「――速射っ!!」
速射の効果時間は五分。
立て続けに能力とスキルを使い、
マリーダも十二分に自己を強化させた。
「……じゃあ、始めようかしら?」
「ええ、これで三度目の戦い。
今回は完膚なきまで叩きのめしますわ」
「……それはこちらの台詞よ」
お互いに言葉を交わして、
リーファは聖剣、マリーダは漆黒の魔剣を構えた。
絶対に負けられない三度目の戦い。
両者その緊張感を感じながらも、
闘志と覇気を漲らせて、
己の勝利を信じて、戦いに挑もうとしていた。
次回の更新は2024年9月21日(土)の予定です。
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