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第二百六十話 伝家の宝刀(前編)



-----三人称視点---



 リーファ達が小休止を終えると、

 ラミネス王太子は、各部隊を以下のように配置した。

 左翼にバイン将軍率いる三万五千の部隊。

 中央にバウアー将軍率いる四万の部隊。


 そして右翼には、

 騎士レバンを急遽、騎士団長代理に据えて、

 サーラ教会騎士団約二万人の連合軍第四軍。


 更にニャールマン司令官率いる猫族ニャーマン軍二万五千の兵力の一部を

 中央、左翼の空騎士スカイ・ナイト部隊の操る魔獣に相乗りさせて、

 敵の竜騎士ドラグーン部隊を牽制する構えだ。


 そして本陣には、

 ラミネス王太子率いる六万人の部隊。

 ワールスリー地方の連合軍は、

 このような陣形を組んで、

 再び戦いに挑もうとしていた。


 対する帝国軍は、

 旧バズレール元帥の残存部隊一万人と、

 タファレル元帥の部隊二万人と合せて、

 第六軍の戦力を増加させて、左翼に配置。


 そしてシュバルツ元帥率いる三万の第四軍を中央に、

 クインラースの一万まで減った部隊に、

 傭兵隊長マクトレフ率いる二万の傭兵、冒険者部隊を

 合流させて右翼に配置。


 ナバールとドミニクは、

 以前と同様にワールスリーの北部エリアに陣取り、

 ナバール本隊に約五万五千人の部隊。

 ドミニク本隊に約三万五千人の部隊。

 

 連合軍の総勢十八万人。

 帝国軍の総数十八万人。


 以上のような戦力と戦力配置で、

 10月20日の昼の十四時過ぎに再び戦端が開かれた。


 両軍とも数の上では大軍であったが、

 急遽集められた部隊が多くて、

 戦場における連携度は想像以上に低かった。


 だがそんな中でも中央に陣取る帝国軍の第四軍は、

 飛龍に竜騎士ドラグーン部隊を乗せて、

 機動力を生かした空中戦の展開を試みる。


 それに対して、

 総司令官ラミネス王太子は、

 連合軍も同様に猫族ニャーマン軍の魔導師を相乗りさせた空騎士スカイ・ナイト部隊を解き放った。


 その後、激しい空中戦が繰り広げられた。

 空中戦を得意とする竜騎士ドラグーン部隊だが、

 先日の雨の影響で飛龍の動きは思いのほか鈍かった。


 同様に連合軍の空騎士スカイ・ナイト部隊の魔獣の動きも

 鈍かったが、相乗りした猫族ニャーマンの魔導師部隊が

 長距離から次々と強力な魔法攻撃を仕掛けた。


 その姿はまるで鼠を狩る猫。

 ひたすら火水風土の四大属性の魔法攻撃を使い、

 動きの鈍い竜騎士ドラグーンを攻め立てた。


 これによって空中戦では、

 連合軍が帝国軍を上回り、

 地上の連合軍は空戦部隊の空からの支援を受けて、

 有利な状況で地上戦を展開。


 左翼のバイン将軍。

 中央のバウアー将軍の部隊は北上して、

 右翼のクインラースとマクトレフの部隊。

 中央のシュバルツ元帥の部隊とも肉薄した。


「良し、地上の敵に目掛けて魔法攻撃を仕掛けるニャン」


「ニャ、ニャ、了解ニャーン」


「帝国軍なんてやっつけちゃえっ!」


 それぞれ掛け声を上げる猫族ニャーマン達。

 そして尋常ではない数の火の玉や氷弾。

 風の刃、石の雨が帝国軍の地上部隊を襲う。


「ぎ、ぎ、ぎゃあああ……あああっ!!」


「く、糞……味方の空戦部隊は何をしている!?」


「空に居るのは……猫族ニャーマンかっ!!」


「糞っ……化け猫共がっ!!」


 帝国軍の地上部隊は、散々な状況で怨嗟の声を上げる。

 そして空から攻撃で相手が怯んでいるうちに、

 地上の猫族ニャーマン軍は、

 魔導師部隊に各種のゴーレムを生成させた。


「行くだニャン、ゴーレム」


「とりあえず視界に入る者を次々ボコるニャン」


 基本となる土のゴーレムに加えて、

 ウッドゴーレム、ストーンゴーレムが横一列に並んで、

 眼前の帝国軍の地上部隊目掛けて突貫する。


「今度は何だ!!」


「ご、ゴーレムです! 大群のゴーレムが迫ってます」


「そうか、なら慌てる必要はない。

 ゴーレムは『分解』に弱い。

 だからこちらの魔導師部隊に、

 『氷結魔法』を最初に撃ち、

 その後に風魔法を撃つように命じよ!」


「はっ!」


 シュバルツ元帥は、咄嗟にそう命令を下す。

 この作戦自体は正しい判断であったが、

 如何せんゴーレムの数が多すぎた。


 『分解』で倒す事は倒したが、

 それ以上に次から次へとゴーレムが沸いて出た。

 この辺はヒューマンや竜人族と猫族ニャーマンの魔力の差が大きかった。


 普段は能天気で飽き性の猫族ニャーマンだが、

 一度の狩りのスイッチが入れば、

 徹底的に標的を狩る。


 猫族ニャーマン軍のニャールマン司令官は、

 猫族ニャーマンのその特性を最大限に生かした。


「ニャールマン司令官、作戦どおり事が運んでます」


 と、副官ニャーモン。


「うむ、昨日の大雨が影響してか、

 帝国軍の動きが想像以上に鈍いニャ。

 だから今のうちに徹底して魔法攻撃を仕掛けよ。

 いずれ帝国軍も本調子に戻るだろうが、

 その時は我が猫族ニャーマン軍は素早く撤退して、

 後はラミネス王太子殿下のご采配に任せよう」


「そうですね、長期戦になれば、

 飽き性で虚弱な猫族ニャーマンに不利なのは明白。

 ですがこのように戦場や戦術を限定すれば、

 我々、猫族ニャーマンも決して他種族に引けは取りません」


 熱くそう語る副官ニャーモン。

 それに対してニャールマン司令官は、何処までも冷静であった。


「うむ、だが我等が無理に主役になる必要もニャい。

 ここは王太子殿下に大トリを務めてもらおうニャ」


 こうして序盤の戦いでは、

 猫族ニャーマン軍の予想外の大活躍で、

 連合軍が地上戦でも空中戦でも帝国軍を圧倒した。


 本陣の床几しょうぎに腰掛けながら、

 ラミネス王太子は、満足そうに戦況を見据えていた。


「いいな、我が軍が優勢ではないか」


「ええ、予想以上に猫族ニャーマン軍が良い動きをしてます」


 と、副官レオ・ブラッカー。


「嗚呼、これは嬉しい誤算だ。

 後は戦乙女ヴァルキュリアという伝家の宝刀を何処で抜くかだな」


 だがしばらくして異変が起きた。

 伝令兵から右翼部隊と猫族ニャーマン軍の連携が上手くいってない。

 という報告を受けるなり、

 ラミネス王太子は、急に不機嫌そうな表情へ変わった。


次回の更新は2024年9月14日(土)の予定です。


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黄昏のウェルガリア
― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 猫族、かなり大活躍。 いつもは不憫ですが、こうやって活躍すると嬉しいものですね。 猫族の特性を活かした活躍なので、かなり好きです。 だが、最後... 何があったのでし…
[良い点] 戦いの行方はどうなるのかですね。あと、ニャーマンという種族もいたとは驚きました。
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