第二百五十九話 枕戈寝甲(後編)
-----主人公視点---
案内された野営テントは、
そこそこ広いわね。
テントの端にランタンがぶら下げられており、
テントの中でも充分に明るいわね。
そしてテントの中央に円卓があり、
その周りに四つの木製の椅子が並んでいた。
「とりあえずその円卓を囲んで、
椅子に座りましょう。
でも四つしかないから、
誰か一人は立つ事になるわね」
「ならアタシが立つだわさ。
皆、気にせず椅子に座って頂戴」
「ロミーナ、ありがとう。
じゃあ皆、ここは彼女の厚意に素直に甘えましょう」
そして円卓の北側の椅子に私。
その東側の椅子にジェイン。
南側の椅子にアストロス。
西側の椅子にエイシルが座った。
「お姉ちゃん、今レベルいくつ?
それと残りスキルポイントは?」
「ええっと……ジェイン。
レベルは56で、スキルポイントは80あるわ」
「リーファさん、戦乙女のスキル一覧表を
円卓の上に置いて頂けますか?」
「そうね、皆で確認しましょうか」
エイシルに言われて、
私は円卓の上に戦乙女のスキル一覧表を置いた。
それからしばらく皆で、
スキル一覧表に隅々まで目を通した。
「対マリーダ戦を想定するならば、
やはり新しい能力か、剣技が欲しいとこですね」
と、アストロス。
「となると強化系の能力がいいですわね」
と、エイシル。
「それならばこの能力が良さげね」
私はそう言って、
右手の人差し指でスキル一覧表の中央部を指差した。
「なに、なに。 え~と「神の肉体。
何か凄そうな能力だね」
暢気な声でそう言うジェイン。
「成る程、能力値倍加の能力ですか。
「能力覚醒」に重ね掛けできるみたいですね。
発動時間は二十分、蓄積時間は十五分。
但し使用時に体温と血圧が上昇するので、
使用の際には、細心の注意を払うように……っと」
エイシルが「神の肉体に関する情報を読み上げた。
すると周囲の仲間も「成る程」や「ふむ」と相槌を打つ。
「「能力覚醒」に重ね掛けすると、
かなり能力値が強化されそうですが、
体温と血圧の上昇が気になりますね。
使うなら、一気に勝負を決める時が良さそうですね」
「そうね、私もアストロスと同じ考えだわ」
強力そうな能力だけど、
使いどころが重要になりそうね。
「能力覚醒」に重ね掛けして、
「ゾディアック・フォース」を発動。
そして強力な剣技。
あるいは独創的技を使う。
と言うのが理想的な使い方のようね。
「でも瞬間最大とはいえ、
能力値の四倍化は、
かなり魅力的だわさ。
これなら一発逆転もあり得るわね」
感心気味にそう言うロミーナ。
「ええ、だからこの能力を習得するわ」
「「はい」」「「ウン」」
私は自分の冒険者の証を指で触りながら、
スキルポイント60を戦乙女のパッシブ・スキル『勇気』の項目に割り振る。
すると『常時・力+50』、『常時・耐久力+50』、『常時・器用さ+50』を習得。
更には神帝級の職業能力・『神の肉体』も習得した。
これでまた私の能力値がまた強化されたわ。
でもスキルポイントがまだ20ポイントも残っているわ。
「これは凄いパッシブ・スキルですね」
「はい、これはまさに虎に翼ですね」
と、アストロスとエイシル。
確かに想像以上に強化されたわね。
これならマリーダに勝てるかもしれないわ。
そしてスキルポイントがまだ20も残っている。
「スキルポイント、まだ20も残っているよね。
お姉ちゃん、何処に振るつもりなの?」
「ジェイン、悩んでいるところよ。
ちょっとスキル一覧表の剣技の項目を見るわ」
え~とスキル一覧表の剣技の項目はここね。
なに、なに、後、スキルポイント20あれば、
神帝級の剣技が覚えられるのね。
スキル名は「ライトニング・ブレイク」か。
「アストロス、「ライトニング・ブレイク」っていう剣技って分かる?」
私は唐突にそう言ったが、
アストロスは少し考えてから、言葉を紡いだ。
「確か神帝級の剣技ですね。
名前の通り、剣身に雷光を纏わせる剣技で、
その雷光で周囲に範囲攻撃。
あるいはそのまま雷光を放射する事も可能です。
雷光の蓄積に何秒かかかりますが、
簡易的に使える電撃魔法と考えて良いです」
「へえ、それが本当なら凄いわね。
でも貴方、よくそんな事まで知ってるわね」
「一応、自分の職業に関する事。
また戦乙女に関する事も一通り頭に入れてます」
「まあそれは心強いわ」
「……それが私の仕事ですので」
流石はアストロスね。
やることに抜かりがないわ。
「雷光の付与魔法。
そしてそれを自由に放つ、そういう技と考えていいのかしら?」
「基本的にはそれで良いと思いますが、
習得した後に何度か試してみるべきでしょう」
「それもそうね、決めたわ。
残り20ポイント全て剣術スキルに振るわ」
「私もそれが良いと思います」
私は自分の冒険者の証に右手の人差し指で再度触れた。
そして剣術スキルに20ポイント全てを振った。
それによって『片手剣装備時・力+50』、
更に神帝級の剣技の「ライトニング・ブレイク」を習得した。
「……今、習得したわ」
「では全ステタースとスキル表を見てみましょう」
「ええ」
私はアストロスの言葉に小さく頷く。
さて、さて、どうなったかしら?
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名前:リーファ・フォルナイゼン
種族:ヒューマン♀
職業:戦乙女レベル56
能力値
力 :1855/10000
耐久力 :2500/10000
器用さ :1235/10000
敏捷 :1975/10000
知力 :2480/10000
魔力 :4200/10000
攻撃魔力:2475/10000
回復魔力:2635/10000
※他職のパッシブ・スキル込み
魔法 :ヒール、ハイヒール、ディバイン・ヒール
キュア、キュアライト、ホーリーキュア
プロテクト、クイック、アクセル、フライ
フレイムボルト、ファイアバースト、フレアバスター、炎殺
ライトボール、スターライト、
ライトニングバスター、シャイニング・ティアラ
スキル :結界、対魔結界、封印結界、戦乙女の陣
戦乙女の波動、戦乙女の祝福、速射
武器スキル:イーグル・ストライク、ヴォーパル・ドライバー
ダブル・ストライク、トリプル・ドライバー
ハイ・カウンター、グランドクロス、
ライトニング・スティンガー、
ダブル・デルタスラッシュ、
ライトニング・ブレイク、シールド・ストライク
正拳突き、ローリング・ソバット、掌底打ち
能力 :予測眼 分析眼 魔力探査 能力覚醒、
魔力覚醒、メディカル・リムーバー、
ゾディアック・フォース、
零の鼓動、神の肉体
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「お嬢様、能力値も大幅に向上しましたね」
「これならマリーダにも引けを取らない筈よ」
「ボクもそう思います。
後はライトニング・ブレイクを試し打ちしたいですね」
と、エイシル。
「そうね、王太子殿下の許可を頂いて、
適当な場所で試し打ちしてみるわ」
そして私達は、本陣に戻って、
事情を説明して、王太子殿下の許可を得た。
「うむ、それなら近くの平地でやるが良い。
但しパワーは制限するように頼む。
地形が崩れると大変だからな」
「はい、肝に銘じます」
十五分後。
私達は王太子殿下が指定した平地へ移動した。
そして私は周囲を確認して、
剣技・「ライトニング・ブレイク」を発動させた。
「――ライトニング・ブレイクッ!」
するとアストロスの説明通り、
私の聖剣に雷光が宿った。
……想像以上に身体が重く感じるわ。
これは相当、魔力を食いそうね。
「ハアァア……アァァァッ!!」
私は気勢を上げて、
雷光を宿らせた聖剣を頭上に掲げる。
そして近くの大木に視線を向けて、照準を合わせた。
次の瞬間、耳を裂く雷鳴が響くなり、
標的である大木に稲妻が落下した。
稲妻が落下した大木は、
左右に真っ二つに裂けて、激しく燃え盛った。
……この威力なら色々使いどころが……。
「お、お姉ちゃん!」
「お嬢様っ!!」
気がつけば、私は右膝を地面についていた。
頭がクラクラする。
どうやら魔力不足のようね。
「大丈夫よ、少し魔力不足のだけよ。
でもこの剣技はかなり使えそうね。
これならきっとあの女――マリーダにも勝てるわ」
私がそう言うと、周囲の仲間も落ち着きを取り戻した。
……。
今回、習得した剣技と能力。
組み合わせ次第では、
きっとマリーダにも勝てるわ。
ううん、絶対に勝って見せるわ!!!
次回の更新は2024年9月11日(水)の予定です。
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