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第二十五話 戮力協心


---三人称視点---



 夜が明けてハイルローガンの大地に朝が訪れる。

 連合軍の主力部隊軍はレミオン要塞に本陣を置いて、

 アスカンテレス王国の王国騎士団とサーラ教会騎士団の第一軍。

 騎士団長エルネス率いるエルフ族で構成された第二軍。

 そしてオルセニア将軍率いる冒険者及び傭兵部隊の第三軍を帝国領のバルタナス平原に向けて進軍させた。


 その一方で犬族ワンマンのシャーバット公子が指揮する第四軍。

 ニャールマン司令官の猫族ニャーマン軍、

 兎人ワーラビットのジュリアス将軍率いる各種族の混成部隊に

 戦乙女ヴァルキュリアとその盟友を加えた第五軍が

 ベテオ山を右に迂回して、レオフォーテの森へと兵を進める。


 そしてレミオン要塞城砦の本陣で、

 若き総司令官ラミネス王太子が自らの鞘から銀の剣をぬき放ち天をさして、

 兵を鼓舞させるように勇ましく叫ぶ。


「連合軍の諸君、帝国軍は強いが、無敵の軍隊ではない。

 それは先のパールハイム城奪回作戦で我が連合軍の手によって証明された。

 この度の帝国領の進行作戦は、今後の戦いにおける試金石となる。

 だが我々の結束力があれば、必ず帝国軍に勝てるっ!

 だから諸君、臆することなく勇敢に戦って勝利を収めようではないかぁっ!!」


 若き総司令官の覇気と鋭気に満ちた宣言に周囲の兵達が歓声をあげた。


「悪しき帝国をこの手で倒せっ!」


「我々には女神サーラと戦乙女ヴァルキュリア殿がついている。何も恐れる事はない、皇帝と称するエレムダール大陸の反逆者ナバール・ボルティネスを倒すのだ!」



 風が心地よい綺麗な青い空の下で連合軍は、

 バルタナス平原とレオフォーテの森の森に向けて行進を開始した。


 ざっ、ざっ、ざっという規則正しい足音。馬の鳴き声が響き渡る。

 迎え撃つ形になる帝国同盟軍はバルタナス平原に、

 ヴィクトール・ラング将軍率いる『帝国鉄騎兵団ていこくてっきへいだん』、

 ハーン将軍率いるブラックフォース騎士団ナイツ、双方合わせて約三万の兵で、

 連合軍の第一軍、第二軍の進撃を防いだ。


「皇帝陛下から与えられたこの大任。

 我らは勝利を収める事でしか陛下のご厚意に応えることができぬ。

 貴様らも誇り高き帝国軍人であるなら退くな、

 怯えるな、教会軍など所詮は我々の敵ではない。それを奴らに教えてやれ!」


 そう云ってラング将軍は自身と兵士達を鼓舞させるように怒号を放つ。

 剣と戦斧、槍と大剣が激しい衝突と鈍い金属音を鳴り響かせる。

 騎士団長エルネスが率いるエルフ騎兵隊が先陣を切り、

 白銀の甲冑と白銀の長剣を豪快に馬上から振り回して、エルフ騎兵隊は戦場を駆け巡った。


 だが敵も一人では向かって来ない。

 エルフ騎兵隊には三人対して、同時に襲いかかる戦術でその進撃を止めた。

 エルフ騎兵隊も三対一では分が悪かった。


 それでもエルフ騎兵隊は敵の長槍、戦斧を受け止めて、切り払うという行動を繰り返したが、

 相手は必要以上には踏み込んでこない。


 『帝国鉄騎兵団』の騎士、兵士達は前線を重装甲歩兵で固めて大楯を片手に持ち、

 長槍とフレイルを振り、防御陣を敷いた。

 連合軍の第一軍と第二軍が交わり、

 その防御陣に苛烈な攻撃を仕掛ける。

 だが『帝国鉄騎兵団』の兵士達は強固なる意思と力を持ってその攻撃を防いだ。



 一方、レオフォーテの森に攻め込んだ連合軍の第四軍と第五軍は、予想以上に善戦をしていた。レオフォーテの森で帝国軍の第四軍を率いるジェルバ総督府のタファレル将軍は、主に守勢に回り、敵の戦線を意図的に伸ばせて自陣に引き入れるように誘い込んだ。


 第四軍の指揮官シャーバット公子も途中でその意図に気づき、

 進軍を控えて、弓兵(アーチャー銃士ガンナー

 魔法銃士マジック・ガンナーによる遠隔攻撃で敵の体力と気力を削る消耗戦を挑んだ。


「さあ、どんどん撃つワン」


「了解っ!」


銃士ガンナー及び魔法銃士マジック・ガンナーは、

 氷の属性弾で標的の眉間か、喉元を狙うワンッ!」


「はいだニャン!」


 シャーバット公子の命令に従い、

 味方の獣人部隊が氷や風の闘気オーラの篭めた矢や氷の属性弾を次々と放つ。


「行くだワン! ――スナイパーショットォォッ!」


「鼻だ、嗅覚で相手の居場所を掴むだワンッ!」


「おうっ! 我が銃弾を食らうだワンッ!」


 犬族ワンマン銃士ガンナー魔法銃士マジック・ガンナー部隊が銃撃技じゅうげきスキルを使用して、300から500メーレル(約300から500メートル)の長距離射撃で敵を狙い撃つ。狙撃用の魔法銃の銃口から放たれた氷の属性弾が前方の帝国兵の眉間に命中。 炸裂した属性弾が標的の頭蓋骨の中で砕けて、弾の残骸が脳の中に漂流する。 


 この氷の属性弾は一発の殺傷能力は、他の属性弾に劣るが、

 敵に命中すればこのように傷口に弾丸の残骸が散らばるという仕様。 

 これならば非力な獣人でも、矢や属性弾を急所に命中させれば、

 敵を射殺、あるいは敵を行動不能に追い込める事が可能である。


 また森という戦場においては、

 獣人達の小柄な身体が有利には働いた。


 獣人達の弓兵(アーチャー銃士ガンナーは移動速度とジャンプ力が上がる魔道具。

 『フェザー・シューズ』を履いて、素早く地を駆ける。

 あるいはジャンプして木に登り、そこから射撃、敵に見つかれば逃走。


 そういった行動を繰り返して、

 敵の前衛部隊や魔導師部隊をジワジワと射殺していく。


「タファレル将軍、想像以上に敵の遠隔攻撃が厳しいです。

 このままでは我が軍は消耗する一方です」


 タファレル将軍の副官ミルザがそう進言する。

 すると禿頭とくとうの中年男性ヒューマンのタファレル将軍が「ううむ」と唸った。


「将軍っ、ここは森での戦闘は避けて、全軍を後退させましょう。

 そしてラグルーラ街道のレッジ丘陵地帯で敵を迎え撃ちましょう」


「……確かにこのままでは味方の被害も馬鹿にならんな。

 だが少しでも敵の進軍を止めたい。

 ここは竜人族とダークエルフの前衛部隊で

 敵の進軍を食い止めつつ、他の部隊を後退させて

 ネイラール将軍の本隊の合流しよう」


「ええ、それでは全軍にそう伝えます」


「ああ……」


 その後、タファレル将軍の部隊は、

 竜人族とダークエルフの前衛部隊を前進させるが、

 連合軍もリーファとその盟友、ヒューマンとエルフ族の前衛部隊を

 前面に押し出して、森の木などを遮蔽物代わりにして勇猛果敢に戦った。


「トリプル・ドライバーッ!!」


「クロス・スラッシュッ!!」


「パワフル・カッターだワンッ!!」


 リーファ、アストロス、ジェインもスキル能力アビリティを駆使して敵を倒していく。それに負けじとヒューマンとエルフ族の前衛部隊も後に続く。

 そして獣人達の射撃、狙撃部隊も小まめに射撃、狙撃、移動を繰り返して、

 確実に帝国兵を負傷及び戦闘不能状態へと追いやった。


 突進と突進、突撃と突撃。

 激しい接近戦が三時間近く続いたが、

 勢いで勝る連合軍が帝国軍の竜人族とダークエルフの混成部隊を見事に打ち破った。


「よし、このまま全軍を前進させるだワンッ!

 リーファ殿には引き続き前線で戦ってもらえ!」


「はっ!」


 シャーバット公子の言葉にチワワの副官エーデルバインが大きく頷いた。

 その後、リーファ達は前線で戦い続けて、行進を続けた。

 周囲の者達も彼女に率いられるように、

 勇猛果敢に戦い、タファレル率いる帝国軍の第四軍をラグルーラ街道まで後退させた。


 だが帝国軍もこのままでは終われない。

 ラグルーラ街道のレッジ丘陵地帯の本陣で陣取る女将軍ネイラールは、

 胸の前で両腕を組みながら、柳眉を逆立てた。


「タファレルも存外頼りにならないわね。

 だが戦いはこれからが本番よ。

 だからまだまだ慌てる必要はないわ」


「はっ!」


 こうして連合軍のジェルバ侵攻部隊は、

 レオフォーテの森の戦いでは勝利を収めたが、

 次なる戦場――ラグルーラ街道の戦いに向けて

 気を緩める事なく、ざっ、ざっ、ざっと地面を踏みならして、

 隊列を組みながら、行進を続けるのであった。


次回の更新は2023年2月20日(月)の予定です。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  ここまでの感想として。  いきなり読み始めたので、本格的な戦記物になるとは 予想しておらず、とても驚きました。 [気になる点]  猫族や帝国はちょっと哀れに見えてしまうことも。  今後…
[良い点] 闘いが始まってしまいましたね。 そんななか、ニャーマンたちのかわいらしいこと! シリアスになりすぎず、緊張感を緩めてくれてとてもよいと思います^ - ^
[一言] いよいよ始まりましたね! 今度の戦争ではどんなドラマが繰り出されるのか、 これからも楽しみに読み進めてまいります!
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