第二百五十二話 リーファ対バズレール(中編)
---三人称視点---
両者揃って、「ソウル・リンク」を発動。
となれば次に行うのは相手の分析。
この辺は一騎打ちの戦いの基本戦術だ。
そして二人は守護聖獣に、
相手の能力値の分析を命じた。
「ランディ、分析をお願い!!」
「了解した、分析開始っ!」
「シーホン、分析だっ!」
「嗚呼。 ――分析開始!」
それから数十秒程、周囲が静寂に包まれた。
そして互いの守護聖獣が分析を終えた。
「リーファ殿、分析を終えました」
「バズレール元帥、分析完了です」
それからリーファとバズレール元帥の意識が守護聖獣と共有化されて、
お互いの能力値の数値が露わになった。
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名前:ファブリス・バズレール
種族:ヒューマン♂
職業:斧騎士レベル45
能力値
力 :1575/10000
耐久力 :1875/10000
器用さ :1220/10000
敏捷 :1380/10000
知力 :976/10000
魔力 :1738/10000
攻撃魔力:944/10000
回復魔力:1787/10000
※「ソウル・リンク」で能力値強化中
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名前:リーファ・フォルナイゼン
種族:ヒューマン♀
職業:戦乙女レベル55
能力値
力 :1825/10000
耐久力 :2520/10000
器用さ :1286/10000
敏捷 :2052/10000
知力 :2520/10000
魔力 :4227/10000
攻撃魔力:2515/10000
回復魔力:2676/10000
※「ソウル・リンク」で能力値強化中
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数値の上ではリーファがバズレール元帥を大きく上回っていた。
だがバズレール元帥の数値も決して低くない。
むしろ一般的には、かなり高い方に分類されるであろう。
要するにリーファの能力値が高すぎるのだ。
ここは一気に攻める。
リーファはそう心に刻み先手を打った。
「女神サーラよ、我に祝福を与えたまえ!
――「戦乙女の祝福」っ!!」
リーファがそう呪文を紡ぐなり、
目映い光がリーファの身体に降り注がれた。
これによってリーファの力と耐久力、敏捷性の能力値が強化された。
更には『自動再生』の効果も発動した。
ここで更にリーファが職業能力・『能力覚醒』を発動。
「『能力覚醒』っ!!」
するとリーファの周囲が目映い光で覆われた。
これで五分間、リーファの能力値の数値が倍となった。
「――『速射』っ!!」
リーファは更に技・『速射』を発動させた。
この技の効果時間は約五分。
蓄積時間は約十分。
この五分間で勝負をかける。
リーファはそう思いながら、
右手に聖剣を持って、左手で手綱を持つ。
だがバズレール元帥もただ黙っている訳ではなかった。
「ならばこちらも動くまでさ!
行くぞっ! 「騎士の咆哮」っ!」
バズレール元帥は大きな声でそう叫んだ。
次の瞬間には、
バズレール元帥の身体が黒い輝きに覆われた。
職業能力「騎士の咆哮」によって、
バズレール元帥の力と耐久力と敏捷性。
更に魔法防御力が一時的に大幅に強化された。
「我は汝、汝は我。 我が名はバズレール。
聖なる大地ハイルローガンよ!
我に聖なる大地の加護を与えたまえ! 属性強化!!」
バズレール元帥がそう呪文を唱えると、彼の身体が白光に包まれた。
それによってバズレール元帥の属性が限界まで強化された。
「チェンジ・オブ・フォースッ!
フォース・オブ・ダークッ!」
ここでバズレール元帥は、纏う属性をチェンジした。
宿す属性は闇属性。
戦乙女が苦手とする属性だ。
そして右手に持ったミスリル・アックスが闇色の闘気に包まれる。
「――行くぞ、戦乙女っ!!」
「――来なさいっ!」
そしてお互いに馬を走らせて。
馬上から剣技と斧スキルを放った。
「――イーグル・ストライクッ!」
「――レイジング・スパイクッ!!
お互いに馬上から斬撃を繰り出す。
聖剣とミスリル・アックスが衝突するが、
その衝撃でバズレールを乗せた鹿毛の軍馬が後ろに下がる。
「――パワーではこちらが上のようね。
ならばスピードも加えた連撃を繰り出すわ。
喰らいなさい! ――トリプル・ドライバーッ!」
リーファは追い打ちを掛けるべく、
神速の速さで三連撃を突きを放つ。
だがバズレールもミスリル・アックスを縦横に振って、
リーファの三連撃を何とか防いだ。
能力値ではリーファに分があるが、
バズレール元帥も想像していた以上に強い。
地味に見えても帝国の元帥。
やはりそれ相応の力を有していた。
ならば攻め手を変える!
瞬時にそう判断したリーファは、
左手を前にかざして、初級光属性魔法を連射した。
「――ライトボール、ライトボール、ライトボールッ!」
「ぬ、ぬうっっ……」
速射による初級光属性魔法の三連発。
放たれた光の球が一、二発とバズレール元帥の上半身に命中。
そして最後の一発は、
バズレール元帥を乗せた鹿毛の軍馬の左前足に命中。
「ひ、ヒヒヒィンッ!?」
鹿毛の軍馬は、甲高い嘶ききをあげ、
その場に横倒しになり、バズレール元帥が落馬した。
「ぐ、ぐっ!?」
「――ライトボール、ライトボール、ライトボールッ!」
すかさず追撃するリーファだが、
バズレール元帥も泥の中を転げながら――
「――マジック・フィールドォォォッ!!」
すかさず職業能力の「マジック・フィールド」を発動。
バズレール元帥がそう叫ぶなり、
連射された光の球が次々と弾かれた。
「くっ……この能力、ラングも使ったわね!」
「――アイシクル・スクエアッ!!」
バズレール元帥は左手を地面に置いて、
前方の地面を一瞬で氷結させた。
あっという間に前方の地面が氷結化されて、
リーファを乗せた白馬は嘶きをあげて、
バズレール元帥の鹿毛の軍馬のように横倒しになった。
だがリーファは落馬する前に打開策を講じた。
「くっ、やるわね! ――フライッ!」
危機を悟ったリーファは咄嗟に飛行魔法『フライ』を発動。
そして空中を飛翔して、
まだ氷結していない地面に着地した。
「氷結魔法が得意のようね」
「さあ? どうだろう?」
リーファの言葉に首を傾げるバズレール元帥。
これでお互いに地上に降りた状態で、
条件は五分五分といえた。
そしてリーファは聖剣を、
バズレール元帥はミスリル・アックスを構えて、
お互いに摺り足で間合いを取った。
次回の更新は2024年8月17日(土)の予定です。
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