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第二百五十一話 リーファ対バズレール(前編)


---三人称視点---



 呆然とするバズレール元帥と副官ビュイソン。

 そんな二人の気持ちなど無関係に、

 リーファとその盟友、護衛部隊が馬を走らせた。

 そこでようやく我に返る副官ビュイソン。


「元帥閣下、このままでは我々も奴等に襲われます。

 ここは恥を忍んで、撤退すべきでしょう!」


 だがバズレール元帥は、

 副官の言葉を首を左右に振って拒否する。


「今更、逃げたところで遅い。

 どうせ捕まるか、死ぬかの二択。

 ならば帝国元帥としては、最後まで戦うのみ!」


「しかし死んでは全てが台無しになりますよ?」


「ビュイソン、私は一度帝国を裏切った。

 ここでまた帝国に背を向ければ、

 私の死後の評価は最悪になるであろう。

 私も帝国の武人だ、だから私はあえて闘う。

 だが貴公は無理に付き合う必要はない。

 逃げるのも、戦うのも貴公の好きにしろ!」


「成る程、閣下はお覚悟を決められたのですね。

 分かりました、ならば私もお供しましょう」


「ビュイソン、無理はしなくていいぞ?」


「無理などしておりません。

 私も帝国軍人の端くれです。

 あまり見損なわないでください」


「そうか、貴公も案外、莫迦ばかのようだな」


「そのお言葉そのままお返ししますよ」


「ふっ、だがこういうのも悪くないな」


 覚悟を決めたバズレール元帥と副官ビュイソン。

 だがバズレール元帥は、

 この玉砕行為に部下を付き添わせる事はなく、

 残った部下の大半を撤退させた。


 そして右手に翠玉色の戦斧を握り、

 鹿毛の軍馬を走らせて、

 迫り来る連合軍兵士を次々と斬り捨てた。


 シュバルツ元帥やタファレル元帥に比べたら、

 バズレール元帥は、指揮官としても、

 一兵士としても地味に見られがちだが、

 彼の帝国軍として長らく戦った身。

 それ故に一個人としての戦闘力はなかなかのものであった。


「……元帥閣下、強力な闘気オーラを宿した者が近づいてます。

 恐らく噂に名高い戦乙女ヴァルキュリアとその仲間でしょう」


「うむ、どうやらそのようだな」


 そしてバズレール元帥は、

 双眸を細めて前方を見据えた。

 すると白馬に乗った女性らしき騎士の姿が見えた。


 遠目からでも見目麗しい女性と分かった。

 金髪碧眼、白皙、秀麗な眉目。

 セミロングの金髪を黒のシュシュでまとめたポニーテール。


 黒いインナースーツの上に白銀の軽鎧ライト・アーマー

 背中には白い外套マントを羽織っている。

 噂で聞く戦乙女ヴァルキュリアの容貌と一致する。


 成る程、噂どおりに美しい少女だ。

 それでいて全身から凛とした雰囲気を漂わせていた。


 あの漆黒ブラック戦女・ヴァルキリーとは、

 かつて義姉妹だったらしいが、

 マリーダとは違う美貌の持ち主のようだ。

 バズレール元帥は、

 そう思いつつも自分の役割は忘れなかった。


「私は帝国軍元帥のファブリス・バズレールである。

 その方は連合軍の戦乙女ヴァルキュリアとみた」


 高らかに名乗り上げるバズレール元帥。

 すると前方の白馬に跨がったリーファも名乗り上げた。


「確かに私は戦乙女ヴァルキュリア・リーファ・フォルナイゼンである。

 帝国のバズレール元帥よ。

 わざわざ名乗り上げた理由をお聞かせ願いたい」


「その理由は単純明快である。

 戦乙女ヴァルキュリアリーファよ、この場は私と貴公で

 一騎打ちをしないか? その方が犠牲が少なくて済む。

 尚、私が敗れた場合は、周囲の兵士は自己判断で逃走。

 あるいは降伏するが良いっ!」


 元帥の言葉を聞いて、

 周囲の帝国兵が俄にざわめく。

 しかし兵士の立場からすれば、

 悪くない選択肢ともいえた。


 少なくとも無謀な玉砕を命じられるよりかは、

 幾分マシな処遇と言えた。

 故に帝国の兵士達は、息をひそめて状況を見守った。


「その一騎打ち受けても宜しいですわ。

 ならば善は急げです。

 邪魔が入らないように、封印結界を張りますか?」


 リーファがそう提案するが――


「いや生憎のこの悪天候だ。

 戦闘エリアを限定するにはやや不向き。

 なのでここは封印結界を張らないでおこう」


 バズレール元帥は、以上の理由でリーファの提案を拒否した。

 これにはリーファも納得した模様。

 するとリーファは白馬をゆっくりと走らせた。

 同様にバズレール元帥も鹿毛の軍馬を前へ進めた。


「……基本的にルールは自由で行こう。

 馬上で戦うのも、地上で戦うのも個人の自由。

 最終的に勝てば良い、これでどうだ?」


「分かりやすいわね、個人的には気に入ったわ」


 リーファが静かに微笑みを浮かべた。

 どうやら一騎打ちのルールは決定したようだ。

 するとバズレール元帥が先手を打った。


「―――我が守護聖獣シーホンよ。 

 我の元に顕現けんげんせよっ!!」


 バズレール元帥は、そう叫んで左手を頭上にかざした。

 するとバズレール元帥の頭上に、

 隊長25セレチ(約25センチ)程のタツノオトシゴが現れた。

 このタツノオトシゴがバズレール元帥の守護聖獣シーホンだ。


「なかなか可愛い守護聖獣ね」


「そりゃどうも……」


「ではこちらも行くわ。 ――我が守護聖獣ランディよ。 

 我の元に顕現けんげんせよっ!!」


 リーファもそう叫んで、自分の守護聖獣を召喚した。

 言わずと知れたジャガランディのランディが現れて、

 リーファの左肩の上に乗った。


「シーホン、行くぞ! 『ソウル・リンク』ッ!!」


「了解っ!、リンク・スタートォッ!!」


 そしてバズレール元帥が『ソウル・リンク』を発動させた。

 バズレール元帥と守護聖獣シーホンの魔力が混ざり合い、

 バズレール元帥の能力値ステータスと魔力が急激に跳ね上がったわ。


「ランディ、こちらも『ソウル・リンク』するわよっ!!」


「了解、リンク・スタートォッ!!」


 同様にリーファとランディの魔力も混ざり合い、

 リーファの能力値ステータスと魔力も急激に跳ね上がる。

 これで条件的には、五分五分となる。


 そしてバズレール元帥は、右手でミスリル・アックスを。

 リーファは右手で戦乙女ヴァルキュリアの剣(・ソード)を構えた。

 二人は馬上からお互いを見つめた。


 恐らく俺はこの戦いで死ぬであろう。

 だが無様に逃げるよりかは幾分マシだ。

 どうせ最後なら、帝国軍人らしく華々しく散ってやろう。

 

 但しやるからには勝つつもりだ。

 例え勝機が低くとも全力を尽す。

 バズレール元帥は、そう自分に言い聞かせて、

 右手にミスリル・アックスを持ったまま、

 左手で手綱を緩め、鹿毛の軍馬をゆっくりと前へ歩かせた。


次回の更新は2024年8月14日(水)の予定です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 結界を貼らないと言うことは逃げられるor誰かが乱入できる の2択ですね。 これまでの戦闘は結界を貼って行われたものばかりですし、今回貼らなかったのは何か意味がありそう…
[良い点] バズレールとの戦いは果たしてどうなるのか。楽しみにしています!
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