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第二百四十四話 局地戦(前編)



---三人称視点---



 帝国とデーモン族軍。

 そしてパルナ公国軍の戦いを機に、

 エレムダール大陸の各地でも局地戦が始まった。


 グレイス王女と騎士団長エルネス率いる連合軍の第二軍は、

 ロスジャイト方面に兵を集めて、

 帝国の西部エリアへ攻め込んだ。


 対するのはハーン将軍のブラックフォース騎士団ナイツとレジス将軍の第三軍。

 双方合せて五万前後の大軍だが、

 数の上では連合軍の第二軍が倍以上、上回っていた。


 両軍はまずはロスジャイト方面で激突した。

 女性勇者じょせいゆうしゃでもあるグレイス王女は、

 得意の電撃魔法で前方の帝国兵を蹴散らした。


 それで勢いに乗った連合軍の第二軍は、

 怒濤の勢いで帝国軍の第三軍を攻め立てた。

 だが第三軍を指揮するハーン元帥は、

 慌てる事無く、重厚な防御陣を敷いて、

 ラッカライム砦を拠点にして、相手の攻撃を食い止めた。


「どうやら想像以上の敵の数が多いようだな。

 だがこちらには、「風の聖龍オルパニーア」という切り札がある。

 全部隊の三割が減少したら、

 「風の聖龍オルパニーア」を前線に押し出すぞ」


「しかし敵の攻撃が必要以上に激しいです。

 どうやら敵の半数は、

 エストラーダ王国の北湾岸部に上陸した

 ヴィオラール王国の兵士のようです」


 と、レジス将軍。


「という事はヴィオラール王国軍は、

 兵を二分したという事か。

 北エレムダール海で我が帝国艦隊と連合艦隊が

 交戦中だが、仮に敵に北部エリアに上陸されても

 その兵力は半数、ならば北部エリアを護る「土の聖龍ベルグレス」。

 それと聖龍を使役するエマーン将軍が

 敵の侵攻を食い止めてくれるだろう」


「しかし予想以上に、

 戦場が広まってますな。

 これだけ戦場が拡大すると、

 各部隊との連動も難しくなるでしょう。


 レジス将軍の言葉に「嗚呼」と頷くハーン元帥。

 そして彼は何処か達観した表情で述べた。


「どのみちこの戦いに敗れたら、

 我々だけで無く、帝国と皇帝陛下も終わりだ。

 だから必要以上に悲観的にならず、

 まずは自分の役割を果たそうではないか」


「……そうですね」


 そして場所は変わって、

 帝国の北部エリアの近くの北エレムダール海。

 そこでは、連合艦隊と帝国艦隊が交戦していた。


 帝国艦隊の指揮官は、アルベルト・リンツ提督。

 一方の連合艦隊の指揮官は、アリソン提督。


 過去の戦いにおいては、

 北エレムダール海戦。

 あるいは三日月島海戦で連合艦隊は、歴史敵大勝利を収めた。


 その三日月島に、

 連合艦隊と帝国艦隊が再び集まり始めた。


 帝国艦隊の戦闘型ガレオン船十五隻、フリゲート艦十隻、ガレアス船二隻。

 ガレー船五隻といった戦力。


 対する連合艦隊側の総戦力は、

 艦隊四十隻。 戦闘型ガレオン船十五隻、

 フリゲート艦十五隻、ガレアス船三隻、ガレー船三隻、キャラック船四隻。


 先の海戦で多くの軍艦を失った帝国軍は、

 残る帝国内に残った艦隊を総動員して、

 今回の海戦に挑む事となったが、

 やはり海の上での戦いは、連合艦隊に分があった。


 大型で小回りがきかない帝国の戦艦に対して、

 連合艦隊は、距離を保ちながら砲撃するという戦術を採った。


 数で戦力が劣る帝国艦隊は、

 敵艦に船体を寄せ、兵士が乗り移って白兵戦を行おうとしたが、

 素早く近寄って砲撃を加え、

 直ぐに離れていく連合軍の艦艇を捕捉することができず、

 砲撃の被害が増えていく一方であった。


 このように連合艦隊は操作性に優れた艦艇と、

 大砲、狙撃銃による銃撃を主体に戦い、

 優勢に戦って、帝国艦隊にダメージを与えていった。


「リンツ提督、我が軍が不利でございます」


 リンツ提督の副官ハルバッキがそう進言する。

 するとリンツ提督は、渋面で唸った。


「そんな事は百も承知だ。

 だが想像以上に連合艦隊の動きが良い。

 このままでは負けるのは時間の問題だが、

 援軍も期待出来ない状況だ」


「ではどうなさりますか?」


 と、副官ハルバッキ。


「それが分からんから悩んでいるのだ。

 援軍も期待出来ない上に、

 前方には無数の連合艦隊。

 ここはあまり無理しない方がいいな。

 良し、副官。 ある程度戦ったら、

 帝国艦隊をバルティスの港付近まで

 後退させるぞ。 それからは限界が来るまで、

 砲撃戦をして、連合艦隊を食い止めるぞ」


「それだと敗北はまのがれませんが、良いのですか?」


「構わん、どのみち我々の戦力では、

 連合艦隊には勝てやしない。 

 ならばある程度、自分の役割を果たしたら、

 後は自分や部下の命を優先すべきさ」


「……提督がそう仰るのならば、

 私もそれに従います」


「うむ、副官。 まあ気楽に行こう、気楽に!」


 その後、連合艦隊の素早いヒット&アウェイ攻撃で、

 帝国艦隊は更なるダメージを受けた。

 するとリンツ提督は、

 宣言通り帝国艦隊をバルティスの港付近まで、

 後退させて、砲撃体勢に入った。


「アリソン提督、敵艦隊が港町付近まで、

 後退した模様です」


 副官のディアスがそう進言する。

 総旗艦のガレアス船グリシード号の甲板で、

 総司令官アリソン提督は、

 胸の前で両腕を組みながら――


「どうやら敵は、

 想像以上に士気が低いようだな。

 まあ先の海戦でも我が軍は大勝。

 今回の戦いでも予想通りに圧倒的優勢。

 この状態じゃ敵がさじを投げるのも無理はない」


「どうします? 包囲網を敷きつつ、

 敵艦隊に砲撃、あるいは銃撃しますか?」


 と、副官ディアス。


「そうだな、それに加えて、

 空騎士スカイ・ナイト部隊を派遣せよ!

 なあに、慌てる必要はないさ。

 じっくりと攻めて行こう、じっくりと!」


「了解致しました」


 その後、帝国艦隊は港町付近で、

 横一直線に艦隊を並べて、

 長距離砲で応戦するが、

 連合艦隊は無理せず、

 前へ出ては撃つ、そして後退。


 といった一連の動作を繰り返して、

 帝国艦隊にジワジワとダメージを与えて行く。

 そして開戦から十七時間後。


 帝国艦隊の総旗艦ラルカーシュが砲撃を受けて、

 戦闘不能になったところで、

 総司令官リンツ提督は、白旗を揚げて降伏した。


 帝国艦隊は轟沈十隻、捕獲二十二隻。

 戦死者数9,786名、

 捕虜9943名といった結果に終わり、

 またしても歴史的大敗を喫した。


 それに対して連合海軍の艦は喪失艦一、戦死853人。

 戦傷1,732人という大勝利を収めた。


 リンツ提督及び各艦隊の提督は、

 捕虜となり、拘束された。


 そして連合艦隊は、

 北エルムダール海における制海権を再び奪い、

 陣形を維持したまま、

 帝国の港バルティスを目指した。


 そのまま敵の港を制圧して、

 帝国領の北部エリアに約五万人の兵士を上陸させる。

 そしてその上陸部隊の五万の兵士を率いて、

 ヴァリントン将軍は、

 帝国の北部エリアを目指して、南下を開始。


 これによってこの戦いにおける流れが

 また変わりつつあったが、

 帝国軍も負けじと各地で局地戦に持ち込み、

 連合軍の進軍を食い止めるのであった。



次回の更新は2024年7月20日(土)の予定です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 北エレムダール海にて大勝利! 北部からこのまま攻める感じでしょうか。 そうなると土の聖龍ベルグレスとの戦闘は間違いなしでしょうが、どうなるのでしょうか。 リーファを使…
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