第二百三十七話 切磋琢磨(中編)
---主人公視点---
さて、ここは魔法戦で様子を見るわ。
まずは初級攻撃魔法で攻めるわ。
「――フレイムボルト、フレイムボルト、フレイムボルトォッ!!」
最初は初級火炎属性魔法で攻め立てた。
すると眼前のリザード・キングが漆黒の大剣を盾に構えて――
「グルァアァァァッ!!」
と、吠えるなり、眼前に漆黒の障壁が現れた。
こ、コイツ……対魔結界も張れるの!?
私の左手から放射された炎雷が、
漆黒の障壁に命中する。
「ここは力業で押すわ!
フレイムボルト、フレイムボルト、フレイムボルトォォォッ!!」
私は怯まず初級火炎属性魔法を唱え続けた。
しかし私の初級火炎属性魔法では、
あの漆黒の障壁を破壊するまでには至らなかった。
「リ、リーファさん。 狭い空間での火炎魔法の連射は、
控えてください。 一酸化炭素中毒になります」
エイシルがローブの袖で口を覆いながらそう言う。
「……そうね、以後気をつけるわ」
ならばここは魔力反応の事も考慮して、
初級光属性魔法で攻めるわ。
「ライトボール、ライトボール、ライトボールゥゥゥッ!!」
私は左手を前に突き出して、
ひたすら初級光属性魔法を放つ。
私の左掌から放出された光の球が漆黒の障壁に命中。
「グルァアァァァ……アァァァッ!!!」
リザード・キングが再度吠える。
すると眼前の漆黒の障壁が更に鋭い魔力を放った。
次の瞬間、私が放った光の球が漆黒の障壁に呑み込まれる。
「成る程、流石はSランクのモンスターね。
下手な冒険者より強力な対魔結界を張るわ」
「お嬢様、感心している場合じゃありません。
ここからどうするおつもりですか?」
と、アストロス。
「仕方ないわ、危険を覚悟して接近戦で挑むわ」
「お嬢様、くれぐれもご無理はなさらずに!」
「ええ、アストロス。
危険な時は遠慮無くサポートして頂戴」
「はい」
私はそう言葉を交わして、
戦乙女の剣を構えて腰を落とす。
「グルァァァアァァァッ!!」
すると眼前のリザード・キングも漆黒の大剣を右手に持ちながら、
両足でどたどたと地面を踏みならして、こちらに接近して来る。
――パワーでの応戦は厳しいわん。
――でもコイツに勝てないようでは、
――マリーダには、絶対に勝てないわ。
――だからマリーダ戦を想定して戦う!
リザード・キングは、漆黒の大剣を縦横に振るう。
私は基本ステップワークやダッキング、スウェイバック。
などの回避系の防御技術を駆使して、
リザード・キングが繰り出す剣戟を躱す。
「遅いわっ!」
実際にそんなに剣速が遅い訳ではないわ。
でもあのマリーダと比べたら、
全然遅く感じるわ。
「――ヴォーパル・ドライバーッ!」
「グルァァァ……ギャアァァァッ!!」
私は右手に持った聖剣で渾身の突きを繰り出す。
すると聖剣の切っ先が、
リザード・キングの腹部に綺麗に突き刺さった。
……。
成る程、剣技は問題なく決まるようね。
流石は女神から授かった聖剣。
Sランクのモンスター相手にも十分に通用するようね。
ならば技を交えて、
じっくりと攻め立てていきましょう。
そして私は両肩の力を抜き、
腰を素早く落とした。
「――神速殺っ!!」
「ギャアァァァッ!!」
私の叫び声が周囲に響くと同時に、
眼前のリザード・キングの胸部に剣傷が水平に刻まれる。
うん。
問題なく攻撃は通るわ。
ならばここはコイツ相手に実戦練習しましょう。
「グルァァァアァァァッ!!」
「せいっ!!」
リザード・キングが大口を開けて、
口の中から凍てつくような息吹を吐いた。
だが私は慌てず、右にサイドステップして回避に成功。
Sランクのモンスターだけど、
知能に関しては、やはり人間には敵わないようね。
まあ当然と言えば、当然か。
では今度はこっちの番ね。
「はあああぁっ……『ゾディアック・フォース』!!」
私は魔力を解放して、
職業能力『ゾディアック・フォース』を発動させた。
そして右腕に全魔力の七割程度の魔力を注ぎ込んだ。
「喰らいなさいっ! ――神速殺っ!!」
「ギャアアァァァ……ァァァッ!!」
得意の独創的技が見事に決まり、
漆黒の大剣を持ったリザード・キングの右腕が綺麗に宙に吹っ飛んだ。
それと同時に私はバックステップして間合いを取った。
「行くわよ! ――ライトニング・スティンガー!!」
私は間髪入れず神帝級の剣技を放った。
聖剣の切っ先から、目映いビーム状の光線を放たれ、
前方のリザード・キング目掛けて、渾身の一撃を繰り出した。
「グルギャアアァァァ……アァァァ……ァァァッ!!」
ビーム状の光線は鋭く横回転しながら、神速の速さで大気を裂いた。
そしてビーム状の光線は、暴力的に渦巻きながら、
リザード・キングの腹部を貫いた。
腹部に大きな空洞が生じて、
リザード・キングは十秒程、ゆっくり後ろに歩いたが、
すぐに限界が訪れて、崩れ落ちるように地面に倒れ込んだ。
リザード・キングの顔から生気が抜け、
それから身体を何度か震わせたが、数秒後には動かなくなった。
「やったわ!」
私は想わず右手でガッツポーズする。
「お嬢様、凄いです!」
「ええ、見事な連携でした」
「ウン、凄いだワン」
「流石ですわ」
仲間達から賞賛の言葉を浴びて、
私は高揚感に包まれながらも、
それを表情や態度には出さず、
冷然とした表情でリザード・キングの亡骸を見据えた。
Sランクのモンスターといってもこの程度か。
まあ軽い練習台にはなったけど、
マリーダと戦うには、まだまだ力が必要ね。
だから私はこれで満足しないわ。
もっともっと腕を磨いて、
必ず元義妹に勝ってみせるわ!
次回の更新は2024年6月26日(水)の予定です。
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