第二百三十六話 切磋琢磨(前編)
---三人称視点---
帝国とデーモン族による一大会議の後。
皇帝ナバールは、帝国とその占領地域から、
兵士と兵糧と軍事物資を集め始めた。
また連合国による物資の流通に巡る問題に関しては、
地上では荒くれ者の冒険者や傭兵。
海上では海賊、あるいは海賊紛いな船乗りに命じて、
物資の略奪行為を強引に行わせていた。
その略奪行為は、日に日に過激になっていき、
連合軍の加盟国の中でも問題になりつつあった。
そこでアスカンテレス王国の王太子ラミネスは、
地上、海上共に警備を強めて、
荒くれ者や海賊による略奪行為を未然に防いだ。
それと同時にラミネスは、帝国の意図を読んだ。
恐らく帝国と皇帝ナバールは、
近いうちに大軍を率いて、
休戦協定を破棄して、宣戦布告するであろう。
そうなれば戦争は避けられない。
となれば我が国、我が軍もそれ相応の対策を打つ。
以上の理由からラミネス王太子も水面下で動き、
兵士と兵糧、軍事物資を急遽集め出した。
そんな緊張状態が続いて、
早くも一ヶ月半が過ぎたが、
帝国とアスカンテレス王国は、
自ら先手を打つ事はなく、様子見に徹していた。
そんな中、リーファとその盟友達は、
毎日のように迷宮に繰り出して、
討伐依頼を受けて、
地道に金と経験値を稼いでいた。
そして迎えた聖歴1757年9月20日。
この日もリーファ達は、
レスラール迷宮に潜り、討伐依頼に励んでいた。
帝国との休戦協定が結ばれて、
気がつけば、五ヶ月近く経っていた。
だがリーファ達にも帝国の不穏な動きは伝わっていた。
恐らく近いうちに、
また連合軍と帝国軍は戦争になるであろう。
ならばそれまで地道な鍛錬に励み、
来たるべき決戦に向けて備える。
そんな感じで迷宮探索や各地で討伐依頼をこなし、
リーファ達もレベルも結構上がっていた。
リーファはレベル52、アストロスはレベル41。
ジェインはレベル43、エイシルもレベル40。
そしてロミーナもレベル42まで成長していた。
五人はそれぞれ前衛にリーファとアストロス。
中衛にジェイン、後衛にロミーナとエイシル。
といった陣形を組んで、
迷宮内の魔物、魔獣を次々と撃破していた。
そしてドンドンと階層を潜り、
迎えた地下十層。
そこで予想外の敵が現れた。
「ギャオオオオオオンッ!!」
眼前の二足矛歩行の蜥蜴人間。
いや只の蜥蜴人間ではなかった。
蜥蜴人間の最上位種のリザード・キングであった。
「あ、アレはリザード・キングです。
しかしこんなに大きいとは……」
後衛に陣取るエイシルがそう言った。
確かに眼前のリザード・キングは、大きかった。
体長は三メーレル半(約三メートル半)に及ぶ巨体。
群青色の肌と鱗を持ち、
背中には立派な両翼が生えていた。
そしてその右手には、
ニメーレル(約ニメートル)程の長さの黒水晶で出来た大剣が握られていた。
「これは一筋縄ではいきそうにない相手ね。
ランディ、とりあえず分析をお願い!」
「了解した。 ――分析開始!」
そう言葉を交わすなり、
リーファの守護聖獣ランディの両眼が眩く光り、
その身体も白く輝きだした。
「リザード・キングは炎属性が弱点です。
アストロスくん、付与魔法をお願い!」
「了解した、エイシル。
エンチャント・オブ・ファイアッ!」
分析時間の合間に、アストロスが火の付与魔法を発動させる。
半瞬後、アストロスの長剣。
そしてリーファの戦乙女の剣に炎属性が宿った。
「良し、行くわよ! ――能力覚醒っ!!」
更にはリーファが職業能力・「能力覚醒を発動。
これによって彼女の能力値が倍加された。
「――速射っ!」
リーファは更に『速射』を発動させた。
「リーファ殿。 分析が完了した。
標的の能力値は、かなり高いぞ。
けして油断はしないように!
ありとあらゆる手を講じて戦うんだぁっ!」
分析を終えたランディは、そう告げた。
そしてリーファとランディの意識が共有化されて、
リザード・キングの能力値の数値が露わになった。
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名前:リザード・キング
種族:魔物♂
ランク&レベル:Sランク、59
能力値
力 :1934/10000
耐久力 :1927/10000
器用さ :695/10000
敏捷 :1821/10000
知力 :873/10000
魔力 :1586/10000
攻撃魔力:478/10000
回復魔力:224/10000
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「強いわね」
「お嬢様、全員で戦いましょう」
「いえ、ここはあえて私一人で戦うわ。
皆は私のサポートをして頂戴」
「「はい」」「ウン」「はいだわさ」
「ランディ、行くわよ! 『ソウル・リンク』ッ!!」
「了解だ、リンク・スタートォッ!!」
そしてリーファとランディの魔力が混ざり合い、
リーファの能力値と魔力が急激に跳ね上がった。
「グルガアアアアアアァァァッ!!」
リザード・キングが雄叫びを上げて、間合いを詰めてきた。
そして右手に持った黒水晶の大剣を縦横に振るった。
リーファはそれに対して、切払を放つ。
「ガキンッ!!」
鈍い衝撃音と共に聖剣を持つリーファの右手に強い衝撃が伝わる。
これは真正面から戦うのはキツそうだ。
少なくとも相手の斬撃に対しては、
受け止めるより、身体を動かして躱した方が良い。
短い間にリーファは、その事を悟った。
「グルァアァァァン」
「せいやぁっ!!」
リーファは上下左右に素早くステップを刻み、
リザード・キングの攻撃を次々と躱す。
だがリザード・キングが一撃振るうごとに、
迷宮の壁や床が壊されていく。
――これは接近戦は厳しいわね。
――ならば魔法戦を仕掛けるわ!
「――『零の鼓動』」
リーファは、職業能力・『零の鼓動』を咄嗟に使った。
これによって一定時間、
無詠唱で魔法を使えるようになった。
「皆も壁や床の破砕片には気をつけて!」
「「はい」」「ウン」「了解だわさ!」
そしてリーファは、
後方に何度かバックステップして間合いを取った。
相手はSランクの魔物。
だがリーファは周囲の心配とは他所に、
落ち着いた仕草で迎撃態勢に入った。
次回の更新は2024年6月22日(土)の予定です。
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