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第百九十九話 盟友、並び立つ



---三人称視点---



 壮絶なバトルに周囲の者達は、

 唖然としていたが、しばらくすると我に返った。

 そしてリーファの盟友達がいち早く動き出した。


「お、お嬢様!!

 い、いかん。 白目を剥いている。

 エイシル、ジェイン! 今すぐ回復魔法ヒールをかけるんだぁっ!」


 素早くリーファに駆け寄るアストロス。

 だがリーファは白目を剥いたまま、意識を失っていた。


「わ、分かったワン! 我は汝、汝は我。 

 女神サーラの加護のもとに! ――ハイ・ヒール!!」 


「我は汝、汝は我。 神祖エレーニアの加護のもとに 

 ――ディバイン・ヒール!!』


 アストロスに言われて、

 ジェインとエイシルが素早く回復魔法ヒールを唱えた。

 すると目映い光がリーファを包み、その傷を癒やしていく。


「ゲホッ……ゴホッ……!」


 リーファは虚ろな目のまま、血を吐いて激しくむせた。

 どうやら意識が戻ったようだ。

 呼吸も心臓の鼓動も正常のようだ。

 

「お、お嬢様……意識はありますか?」


「……だ、誰? あ、アストロス……?」


 どうやらまだ意識が正常でないみたいだ。

 あれだけの攻撃を受けたのだ。、

 当然と言えば、当然であった。


「マズいな、これは野戦病院へ連れて行くべきだな。

 エイシル、エイシル! 聞こえているか!!」


「はい、アストロスさん。 聞こえてますよ?」


「悪いが君がお嬢様を抱えて、

 後方の野戦病院まで連れて行って欲しい」


「ええ、構いませんがアストロスさんやジェインちゃんはどうするおつもりで?」


「……私とジェインは敵を食い止める。

 恐らくもう少しすれば、敵も落ち着きを取り戻して、

 お嬢様の首を狙いに来るであろう。

 それを私とジェインで食い止めようと思う」


「そうだね、というか敵が落ち着き始めたようだワン」


「ではボクはリーファさんを連れて連れて行きますね」


「嗚呼、頼んだよ」


 そしてエイシルは、リーファをおぶさってこの場から去った。


「ちょっとアストロスくん!」


 そう言ってロミーナが会話に割って入ってきた。


「ロミーナ、何だい? 今はあまり余裕がないんだが……」


 と、アストロス。


「あたしもここに残って敵を食い止めるだわさ。

 アンタ達二人じゃ厳しいでしょうよ?」


「そうだな、加勢してもらえると助かるよ」


 そう言葉を交わして、

 アストロスとジェイン、ロミーナが戦闘態勢を取った。


 一方の帝国軍は、予想外の事態に驚いていたが、

 徐々に落ち着きを取り戻し始めた。

 ちなみにマリーダは、先程の戦いで血液を失った状態で、

 傷口は癒えていたが、頭が正常に働いてなかった。


「マリーダちゃん、大丈夫ニャン?」


 心配そうにマリーダの顔を覗き込むガーラ。

 だがマリーダは苦悶の表情を浮かべて、首を振った。


「正直、大丈夫じゃないわ。

 傷口は癒えたけど、抜けた血液は補充されてないから、

 重い貧血状態にあるわ。 これ以上、動くのは厳しそう……」


「そっか、まあ戦乙女ヴァルキュリアは、倒したし、

 ここは他の皆さんにお任せすると良いニャン」


「そ、そうね……」


 その言葉を聞いていた周囲の帝国兵が

 傍観者の立場を止めて、この場の主導権を握るべく、

 マリーダに対して、強い口調で語りかけた。


「……「漆黒ブラックの戦女(・ヴァルキリー)」殿、見事な戦いでした。

 ですがアナタもそれ相応のダメージを負ったようですな。

 後の事は我々、帝国兵にお任せ下さい」


「……そうね、そうさせてもらうわ」


 マリーダは体格の良い中年の帝国兵に対して、

 やや疲れた感じの声でそう答えた。

 重い貧血に加えて、緊張感が切れた事により、 

 今までの戦いのダメージが一気にマリーダに押し寄せた。

 それを確認すると体格の良い中年の帝国兵が周囲に叫んだ。


「よし、ここは我等、帝国兵の腕の見せ所!

 敵の主力である戦乙女ヴァルキュリアの首を

 我等の手で取ろうではないかっ!!」


「そうだな、そうすれば恩賞は思いのままだ!」


「おお、我等の手で戦乙女ヴァルキュリアを倒すぞ」


 すると途端に帝国兵達の士気が高まった。

 この状態には連合軍や王国軍も戸惑いの色を見せた。

 その空気を察したアストロス達、三人が前へ歩み出る。


「ジェイン、ロミーナ。 覚悟を決めろ!

 一人として通すな。 ここが踏ん張りどころだぞ!」


「分かっているだワン」


「了解だわさ」


 そしてアストロスは、ミスリル製の長剣。

 ジェインはミスリル製の手斧、

 ロミーナは聖木のブーメランをそれぞれ構えた。


「エンチャント・オブ・ライト」


 まずはアストロスが光の付与魔法エンチャントを発動させた。

 彼が叫ぶなり、右手に持ったミスリルソードが光で覆われた。

 そしてアストロス達は、それぞれ自身の守護聖獣を召喚した。


「我が守護聖獣ブルーフよ。 

 我の元に顕現けんげんせよっ!!」


「オイラも召喚するワンッ!

 我が守護聖獣カーシンよ。 我の元に顕現せよっ!!」


「じゃあ、あたしもやるわ! 我が守護聖獣ラビータよ。 

 我の元に顕現せよっ!!」


 三人がそれぞれそう叫ぶなり、

 彼等、彼女等の足下に魔法陣が突如現れた。

 そして魔法陣が目まぐるしく明滅して、激しく光った。

 すると各々(おのおの)の守護聖獣が現れた。

 三人はそこから間髪入れず「ソウル・リンク」を発動する。


「よし、ブルーフ! 『ソウル・リンク』だぁっ!」


「カーシン! 『ソウル・リンク』だワン」


「行くわよ、ラビータ! 『ソウル・リンク』ッ!!」


 そしてアストロス達と守護聖獣の魔力が混ざり合い、

 アストロス達の能力値ステータスと魔力が急激に跳ね上がった。

 これによって戦闘準備は整った。


 だが帝国兵達も焦る事なく、

 武器を構えながら、ゆっくりと前へ出て来た。


「相手はたかだが三人。

 守護聖獣を召喚出来る者は遠慮無く召喚せよっ!」


「了解だぁっ!!」


 そして帝国兵達も次々と守護聖獣を呼び出した。

 これによって一つの戦場に様々な守護聖獣が召喚された。


「ロミーナ、他の連合軍兵士に参戦するように呼びかけてくれ」


「了解よ、アストロスくん。

 連合軍の皆さん、あたし等、戦乙女ヴァルキュリアの盟友だけに、

 見せ場を与えちゃアンタ等の名折れよ。

 さあ、さあ、ここは平等に一緒に戦うだわさ」


 すると連合軍の兵士達も武器を片手に、

 地を踏みしめて、前へ一歩進んだ。


「まだ勝負は決まってはいない!

 戦乙女ヴァルキュリアとその盟友だけが、

 連合軍じゃない事を帝国軍に教えてやれっ!!」


「おおっ!!」


 そしてそれが開戦の合図と鳴って、

 帝国軍の兵士達が一気に押し寄せてきた。

 ここを守り切るか、どうかでこの戦いの流れが変わる。

 

「さあ、ジェイン、ロミーナ!

 一人でも多くの敵兵を倒すぞぉっ!」


「おお」「はいだわさ!」


 そして両軍による激しい白兵戦が開始された。



次回の更新は2024年3月16日(土)の予定です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 アストロスが珍しくキラキラしている。 もうすぐタファレルさんとアストロスの戦いが行われるのですね。 とても楽しみですが、どうなってしまうのか... タファレルさんもア…
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