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第百九十七話 姉妹喧嘩、再び(中編)


---三人称視点---



「一気に決めるっ!!」


 リーファはそう叫びながら、間合いを詰めた。

 それによってリーファとマリーダの距離は詰まる。

 そこからリーファは一気に攻勢に転じた。


「『戦乙女ヴァルキュリアの舞(・ダンス)ッ!!」


 リーファはそう技名コールしながら、

 左構え型(サウスポー・スタイル)から渾身の左ストレートを放つ。

 半瞬後、リーファの左拳がマリーダの顎の先端(チン)に命中。


 それによってマリーダが腰を落としかける。

 そこから更に左ボディフックでマリーダの肝臓を狙う。

 これが決まれば、リーファの勝利はほぼ確定されていた。

 だが次の瞬間、リーファの左拳に激痛が走った。


「う、うううっ!?」


 左拳に激痛が走る中、

 リーファは苦悶の表情を浮かべて、前を見据えた。

 するとマリーダは右構え(オーソドックス)スタイル

 右肘できっちりと自身の右脇腹を防御ガードしていた。


「え、エルボーブロックゥッ!?」」


「その通りですわ。 でもおかげで右肘がジンジンしますわ。

 尤もお義姉ねえ様は、左手が使い物にならないようですね。

 独創的技オリジナル・スキルは、アナタだけのものじゃないのよ!」


「くっ!?」


 マリーダの言葉にリーファの背筋が凍りついた。

 まさかここでマリーダが独創的技オリジナル・スキルを!?

 そしてリーファのその読みは当たっていた。


「今度はこっちの番ですわ。

 喰らいなさいっ! ――フィスト・オブ・ファイブッ!!」


 マリーダはそう叫ぶなり、

 間合いをつめて左のトリプルパンチを放った。

 最初にリーファの右脇腹、次に顎の側面(ジョー)

 そして止めに左拳をリーファの右側頭部に叩き込んだ。


「が、がはぁっ!?」


 声にならない声を上げるリーファ。

 流石の彼女のこの三連撃は効いたようだ。

 だがまだ終わりじゃない。


 そしてマリーダはそこから左ストレートを真っ直ぐ突き出した。

 ふらつく中、リーファは左腕で顔面部分を護ろうとするが、

 マリーダの左拳は、リーファの心臓部分を強打した。


「か、かはぁぁぁっ……あああっ!?」


 綺麗に決まった心臓ハート・ブレイク打ち(・ショット)

 それによってリーファは激しく喘いだ。

 だが次の瞬間には、左腕で防御ガードを試みるが、

 彼女の身体は思うように動かなかった。


 ――な、何コレッ!?

 ――意識はあるのに身体が言う事を聞かないわ!


 不測の事態に狼狽するリーファ。

 彼女が驚くのも無理はない。

 そしてこれはマリーダの心臓ハート・ブレイク打ち(・ショット)によってもたらされた現象。


 心臓部を強打する事によって、

 数秒間だけだが、リーファの心臓の鼓動が止められたのだ。

 色々と博識なリーファだが、

 コレに関する知識や対処法は持ってなかった。


 一方のマリーダはいざという時に備えて、

 この独創的技オリジナル・スキルを温存していた。

 そして暇を見つけては、このフィスト・オブ・ファイブの練習を重ねた。


 それよってリーファの裏をかくことに成功した。

 時間が一瞬止まったリーファ。

 それに対して、マリーダが内側に身体を捻り、

 自身の左拳に闇の闘気オーラを宿らせる。

 そしておもむろにその左拳を前へ突き出した。


 それと同時にリーファの顎の先端(チン)が強打された。

 次の瞬間、リーファの顎に激痛が走った。


「が、が、がはあああぁぁぁっ!?」


 堪らず叫び声を上げるリーファ。

 そして瞬時に自分の顎が砕かれた事を悟った。


 ――マズいわ、これでは口述詠唱が出来ないわ。

 ――だけど今の私は無詠唱で回復魔法を使える。

 ――だからここは中級回復魔法で顎の傷を癒やすわ。


 リーファは耐えがたい激痛の中、

 左手を自分の顎に当てて、無詠唱で「ハイ・ヒール」を発動させた。

 それと同時にリーファの顎の傷が癒やされていくが、

 完全に顎の負傷を回復するまでには至らない。


「この状況で回復魔法を無詠唱で使うとは!?

 流石はお義姉ねえ様、でもアナタの好きにはさせないわ。

 喰らいなさいっ! ――シールド・ストライクッ」


 マリーダは即座に背中に背負った「常闇とこやみの盾」を

 左手に持ちながら、リーファの顔面目掛けて前へ突き出す。


「ぐ、ぐ、ぐあぁっ!?」


 「常闇の盾」が綺麗にリーファの顎を捉えた。

 それによってリーファの顎に再び激痛が走る。

 だがその状況でもリーファは意識を保ちながら、

 左手に魔力を溜めながら、

 上級回復魔法「ディバイン・ヒール」を無詠唱で発動させた。


 さっきの盾の強打でリーファの前歯に罅が入っていたが、

 上級回復魔法によって、

 その前歯の罅だけでなく、割れた顎も素早く治癒される。


 ――とりあえず最低限の回復は出来たわ。

 ――でももう少し綺麗に顎を治したい……って!?


「止めですわ! ――フィスト・オブ・ファイブッ!!」


 ――ここで攻めに来るとは!?

 ――だけど同じ技は通用しないわ。


 マリーダは左手に持った盾を再び背中に背負い、

 そこから左ボディフックを繰り出す。

 だがリーファは右足を上げて、膝部分で防御ガードする。

 リーファの見事な防御ガードが決まり、

 マリーダの左ボディフックを封じる。


「ま、まだよっ!?」


 マリーダは諦める事なく、

 今度は左フックでリーファの右の顎の側面を狙う。

 それと同時にリーファは、身体を半回転させさせた。

 すると今度は軽鎧ライト・アーマーの肩の部分で、

 綺麗なショルダー・ブロックを決めた。


「ま、まさかっ!?」


「同じ技は通じないわよ!」


 リーファはそう言って、後ろに大きく跳躍した。

 そして両肩の力を抜き、腰をどっしりと落とした。

 それと同時にマリーダの左フックが空を切った。


「マリーダちゃん、気をつけて!?」


 ガーラが思うわずそう叫ぶが、既に時遅しであった。

 そして次の瞬間に、リーファは最大速度の斬撃を繰り出した。


「―――秘剣・『神速殺しんそくさつ』っ!!」



次回の更新は2024年3月10日(日)の予定です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 やはりマリーダもオリジナル・スキルを持っていましたか。 かなり強力な技ですね。確かに喋れなくしてしまえば大半の相手の多くの攻撃手段を潰せる。 リーファが無詠唱できるタイ…
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