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第百八十六話 独創的技(オリジナル・スキル)・(後編)


---主人公視点---



抜刀術ばっとうじゅつ? それなんだワン?」


「うん、あたしも知らないわ」


 ジェインとロミーナが緊張感のない声でそう言う。

 まあ抜刀術ばっとうじゅつ自体マイナーだから、

 二人の反応はある意味正常と言えるけど、

 一応は場の空気を読んで欲しいわね。


抜刀術ばっとうじゅつは、素早く刀を抜きながら、

 斬撃を仕掛け、相手の攻撃を受け流す武術です。

 この抜刀術の発祥地は、

 このエレムダール大陸から遙か東方にあるジャパングという島国であります」


 騎士ウェーバーが分かりやすくそう説明した。


「ふうん」「なんかよく分からないだわさ」


 まるで興味を示さない獣人二匹。

 しかし騎士ウェーバーは根気よく説明を続ける。


「抜刀術で使用されるサーベルは、

 ジャパング由来の日本刀にほんとうと呼ばれる刀を使用するのが、

 基本ですが、我々の大陸に普及しているサーベルでも出来なくはないです」


「ふうん、そうなんだ~」


「お嬢様、ここは一旦外に出て実際に練習してみましょう」


 と、アストロス。


「そうね、じゃあ騎士ウェーバーさん、アストロスは

 私と一緒に外の訓練場へ、ジェインとロミーナは

 気が乗らないなら、無理に来なくていいわ」


「「はい」」


「一応見るだワン」「あたしも一応見るだわさ」


 ……。

 結局五人で外の訓練場へ出た。


「ちなみに戦乙女ヴァルキュリア殿は、何処で抜刀術ばっとうじゅつの事を知ったのですか?」


戦乙女ヴァルキュリアになる前に、

 冒険者活動している時に、

 ジャパングから来たさむらいという稀少職と何度か組んだ事があるのよ。

 その時に抜刀術やジャパングの文化を色々教えて貰ったのよ」


「成る程、そうでしたか」


「まあ私は抜刀術の細かい作法は、あまり気にしないわ。

 私が使いたいのは、ズバリ「居合斬いあいぎり」よ!」


 私はそう言って、両肩の力を抜いて、

 右足を前に出して、腰をどっしりと落とした。

 それから素早く鞘から「戦乙女ヴァルキュリアの剣(・ソード)」を抜剣して、

 右手一本で真一文字に払うように一閃を繰り出した。


「ワオォン! 今の何!?」


「なんかカッコいい動きだったわね」


 どうやら獣人二匹も興味を持ったようだ。

 

「神速の速さで放つ一閃。

 他の能力アビリティと組み合わせると、更に威力が増しそうですね」


 感心気味にそう言うアストロス。


「自分が言うのもアレですが、

 居合斬りの形になっていると思います」


 と、騎士ウェーバー。

 まあこれでも昔、侍とパーティ組んだ時に

 根掘り葉掘り聞いて、結構練習したのよね。

 

 一瞬で相手を切り捨てる。

 それは剣士にとって、剣術の理想の形の一つである。

 まあ上級者相手には何度も通用しないと思うけど……。


 でもこの「居合斬り」に闘気オーラを宿らせて、

 職業能力ジョブ・アビリティ「ゾディアック・フォース」を使えば、

 マリーダ相手にも一撃で倒せる可能性はあるわ。


 まあマリーダも成長しているから、

 一撃で倒すのは無理でしょうけど、

 不意にこの一撃を出されたら、彼女も面食らうでしょうね。


「確かに「居合斬り」ならば、

 独創的技オリジナル・スキルとして登録する価値はありますね」


「更には他の手も考えているわ。

 ウェーバーさん、少しだけ剣を構えて頂けますか?」


「……実戦練習でしょうか?」


「まあそんなところよ。

 大丈夫、軽くやるだけだから!」


「……分かりました。

 使うのは木剣ぼっけんですか? それとも真剣ですか?」


「一応、真剣でお願いします」


「了解致しました」


 騎士ウェーバーはそう答えると、

 右手にサーベルを持って、腰を綺麗に落とした。

 どうやら彼も真剣のようね。

 でもその方が好都合よ。


「では行きますわよ!」


「はいっ!」


 そこで私は先程と同じ構えで、

 腰を落としながら、右手で聖剣の鞘に手をかけて――


「せいやぁぁぁっ!」


 と、叫んで渾身の一撃を繰り出した。

 それと同時に騎士ウェーバーもサーベルで、

 私が繰り出した一撃を受け止めるが、

 その瞬間、彼は両眼をしばたたかせた。


 そう、今の一撃には聖剣でなく、

 聖剣の鞘で「鞘打ち」を繰り出したのだ。

 それによって虚を突かれた騎士ウェーバー。


 そして私は鞘打ちから剣撃に繋げるべく、

 もう一度、そして今度は聖剣で「居合斬り」を放った。


「くっ!?」


 騎士ウェーバーの虚をつく事に見事に成功、

 二度目の「居合斬り」はギリギリの所で寸止めした。


「お、お見事!!」


「こんな感じで鞘打ちから居合斬りに繋げる二連撃よ。

 まあ同じ相手に何度も通用しないでしょうが、

 初見の敵相手には、有効と思うわ」


「そうですね、確かに一度は引っかかるでしょうね」


 と、騎士ウェーバー。


「一度の隙があれば充分ですよね。

 二度目の居合斬りで確実に仕留める。

 私もこの技なら、独創的技オリジナル・スキルとして登録する価値があると思います」


 アストロスの言うとおりだわ。

 熟練者ベテラン相手の戦いは、長期戦は避けた方が良い。

 ならば初見で一気に切り捨てるのがベスト。

 天才や怪物は初見で倒すべきよ。


「ねえ、ねえ、お姉ちゃん。

 それでこの技は何という名前にするの?」


「そうね……」


 いざ言われてみるとパッと思いつかないわ。

 でもここは短くて連呼しやすい名前にしておこう。


「とりあえず『神速殺しんそくさつ』にしておくわ。

 これなら技名コールも短いし、連呼しやすいでしょ」


「悪くない名前と思いますよ」


「私も同意見です」


 騎士ウェーバーとアストロスが満足げに頷いた。

 とりあえず皆の反応も悪くなかったので、

 この二番目の独創的技オリジナル・スキルの名前は『神速殺しんそくさつ』とするわ。


「それじゃ早速、冒険者ギルドへ向かいましょう。

 ウェーバーさん、色々とお世話になりました」


「いえいえ、お安いご用です。

 また何かあればいつでも来てください」


「ええ、では皆、行くわよ!」


「はい」「「ウン」」


 そして私は、冒険者ギルドに立ち寄って、

 『神速殺しんそくさつ』を正式に、

 自分の独創的技オリジナル・スキルとして登録した。


 まあ今すぐ使い物になるとは思わないけど、

 熟練度も上げておく必要があるからね。

 とりあえず暇な時間をみつけては、

 『神速殺しんそくさつ』の練習をしておくわ。


次回の更新は2024年2月14日(水)の予定です。


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黄昏のウェルガリア
― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 神速殺、いいですね。 そして、ジャパング編を匂わせている。 帝国編、終わってほしくないけどジャパング編も気になってしまいます。 それにしても、神速殺 漫画だと見開きで…
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