表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

174/385

第百七十三話 リーファ対漆黒の戦女(後編)



---主人公視点---



 ……。

 マズいわ、出血によって意識が朦朧としてきたわ。

 とりあえずここは回復魔法を唱えましょう。


「我は汝、汝は我。 

 女神サーラの加護のもとに! ――ハイ・ヒール!!」 


 私は左手を自分の左脇腹に当てて、

 中級の回復魔法を唱えた。

 それによって私の左脇腹の傷が急速に癒やされていく。


 ……。

 もう一押しね。

 よし、次は上級回復魔法を使うわ。


「我は汝、汝は我。 女神サーラの加護のもとに! 

 ――ディバイン・ヒール!!』


 私は左手を自分の左脇腹に当てて、上級回復魔法を唱えた。

 すると目映い光と共に、

 傷ついた左脇腹の傷がみるみると治癒されていった。


「……」


 まだ若干痛むわね。

 でもこれくらいなら自動再生リジェネで完治するでしょう。


「お義姉ねえ様、傷は完治したかしら?」


 煽るようにそう言うマリーダ。


「わざわざ傷が治るまで待っててくれたのかしら?」


「そうと言えばそうよ。 でもそれだけじゃないわ。

 戦乙女ヴァルキュリアの回復魔法の効力と

 自己再生能力なども見たかったのよ。

 どれくらいまでなら戦えるかもこれで分かったわ」


「……そう」


 やはりマリーダは莫迦ばかではないわね。

 この短い戦闘時間の間にも様々な事を学習しているわ。

 これはあまりこちらの手口を見せない方がいいわね。

 ならばここは一気に勝負を決めるべき!


「――能力覚醒っ!」


 私は切り札の職業能力ジョブ・アビリティの能力覚醒を発動させた。

 これで私の能力値ステータスは倍増したわ。


「ならばこちらも! ――能力覚醒っ!」


「!?」


 マリーダも能力覚醒を使えるの!?

 これは計算外だわ。

 どうやら漆黒ブラックの戦女(・ヴァルキリー)は、戦乙女ヴァルキュリアとスキルや能力アビリティが似ているようね。


「ニャハハハ! マリーダちゃん、いいぞぉっ!

 相手の魔法攻撃はボクちゃんが吸収するから、

 マリーダちゃんは好きなように攻めちゃいなよ!」


「ガーラ、そうさせてもらうわ!」


 マズいわね。

 マリーダも能力値ステータスが倍増された状態で、

 相手の守護聖獣は、こちらの魔法攻撃を吸収する。


 これは後手に回ったら負けよね。

 ならばこちらから攻めてやるわ!


「魔法攻撃が無理となれば、

 お義姉ねえ様としては接近戦を挑むしかないわね。

 でもそうはさせませんわ! ――シャドウ・ボルト超連射フル・バースト!」


「そう来るのはこちらも想定内よ!」


 私は前進しながら、

 迫り来る闇色の衝撃波を左右にサイドステップして回避する。

 私とマリーダとの距離が詰まる。


「ちっ、やりますわね!」


「貴方の動きが鈍いのよ!

 ――ヴォーパル・ドライバーッ!」


 まずは最初に渾身の突きを放つ。


「――トリプル・ドライバーッ!」


 マリーダも負けじと渾身の突きを三連打する。

 ガキィィィン!!

 火花を散らして交錯する二つの刃。


 残りの二連打も斬撃で何とか切り払う。

 ……大したものね。

 この短い時間でマリーダは急成長を遂げている。


 これはマリーダの戦闘センスや剣術のセンスというよりかは、

 この私に勝ちたい、という執念が成せる技であろう。

 この流れはマズいわね。


 今は何とか戦えるけど、

 マリーダのレベルがかなりあがったりでもしたら、

 私でもマリーダに勝てなくなる可能性は高い。


 これは色々な面も考慮した上で、

 早い段階でこの漆黒ブラックの戦女(・ヴァルキリー)を倒すべきね。

 そうでないと私だけでなく、

 連合軍にとっても大いなる脅威になるでしょう。


「まだよ! まだこんなもんじゃないわ!

 ――ダブル・ストライクゥゥゥッ!!」


 漆黒の長剣による高速の連続攻撃。

 その勢いに呑まれて、私は防戦一方に追いやられた。

 速い、とても速いわ。


 迂闊に反撃が出来ない剣速。

 何よりも攻撃に迷いや容赦が一切無い。

 少しでも気を抜けば、その瞬間に急所を斬り裂かれる。


 気が付けば、急所はなんとか防いでいるけど、

 身体の至るところに剣傷が徐々に刻まれていた。

 でも今のマリーダは攻撃に全振りしている。

 そこに付け入る隙があるのよ。


「――戦乙女ヴァルキュリア波動はどう


 『戦乙女ヴァルキュリア波動はどう』は対象者の強化技、

 強化魔法などを強制的に解除させるスキル


 次の瞬間、私の左手から白い波動が迸り、

 前方のマリーダに命中。 

 「きゃあっ……」という悲鳴と共に、

 マリーダの強化能力きょうかアビリティと「ソウル・リンク」が解除されたわ。


「な、何よ……これっ!?」


「答える必要はない! ――ダブル・デルタスラッシュッ!!」


 私はそう叫びんで、聖王級せいおうきゅう剣技ソード・スキルを繰り出した。

 まずは袈裟斬りを放った。


「き、きゃあああっ!?」


 袈裟斬りが綺麗に決まり、

 マリーダが右肩口から血を飛ばしながら悲鳴を上げる。

 そこから逆袈裟斬りを放ち、マリーダの身体にX(エックス)の字を刻み込む。


「マリーダちゃん、危ないニャン!

 オイラがあの女の魔力を吸うから、

 その後に自分で回復ヒールして!

 ニャアアァァァ……ニャンっ! 『超吸魔ちょうきゅうま


「なっ!?」


 敵の守護聖獣ガーラが大口を開けて、

 周囲の魔力を強引に吸い込み始めた。

 すると周囲の魔力が見る見るとガーラの口の中に吸い込まれた。


「くっ! なんという吸収力なの!?」


「リーファ殿、気をつけろ!

 このままだとリーファ殿の「ソウル・リンク」も強制解除されかねん!」


 と、守護聖獣のランディ。


「な、何ですって!?」


「――ハイ・ヒール!」


「あっ!? マリーダが回復ヒールしましたぞ!」


「はい、吸収終わりだニャン。

 マリーダちゃん、『魔力解放マジック・リリース』だよ!」


「ええっ、ガーラ。 ありがとう……」


 そしてガーラからマリーダに大量の魔力が受け渡された。

 これはヤバいわ。

 この場は一度逃げる――


「死になさい、お義姉ねえ様!

 これで終わりよ! ――グランド・クロス!」


「!?」


 グランド・クロスか!

 マリーダが強烈な薙ぎ払いを放つと同時に、

 私は後ろに飛びずさった。


「くっ!?」


 何とか回避を試みたけど、

 今の薙ぎ払いで私の腹部が軽く切り裂かれた。

 でもこれで終わりじゃない。

 次に来るのは、縦斬り。

 

「これで終わりですわ!」


 マリーダは跳躍して、その勢いのままに剣を振り下ろした。

 私はそれと同時に、地面を転がって回避行動を取った。

 そして何とかマリーダの縦斬りを回避。

 かろうじて九死に一生を得たわ。


「くっ、ちょこまかと! でもこれで……うっっ!」


 マリーダはもう一度、剣を振ろうとしたが、

 先程、私が刻んだ身体のX(エックス)の文字から、血が溢れ始めた。


 どうやら完全に治癒できたわけじゃないようね。

 これは好機チャンス


 と思い私は右手に聖剣を持ったが、

 先程つけられた腹部の傷から血がボタボタと流れ落ちた。

 どうやら私の方も限界が近いようね。


「ハア、ハア、ハア。 あっ!?」


 私が張った封印結界も解除されたわ。

 それと同時に連合軍及び帝国軍の兵士達がこちらに寄って来た。


「お嬢様、大丈夫ですか?」


「リーファさん、今回復します! ――ハイ・ヒール」


 アストロス、そしてエイシルがこちらに駆け寄りながら、

 中級回復魔法を唱えてくれた。

 それによって私が腹部に負った傷が綺麗に止血された。


「まだよ! まだ終わりじゃないわ!」


 マリーダが興奮しながら叫んでいるわ。


「マリーダちゃん、ここは一旦出直そうよ?

 最初の戦いにしては上出来だわ」


「ガーラ……」


「大丈夫、後もう少しレベルを上げたら、

 キミは戦乙女ヴァルキュリアに確実に勝てるニャン」


「その言葉信じていいのかしら?」


「ウン、ボクを信じてよ!」


「……分かったわ。 ここは一旦退くわ。

 お義姉ねえ様! 今日の勝負は引き分けという事にしておきましょう。

 でも次は必ず勝つわ!」


「……お互い生きていれば、再戦しましょう」


「ええ、私は絶対に生き残るわ。

 そして貴方に必ず勝ってみせるわ!」


 マリーダはそう言って、この場から去った。

 ……やれやれ、引き分けか。

 これは先が思いやられるわね。


 でも生きていれば挽回のチャンスはあるわ。

 だからこの場は他の人に任せて、一旦退きましょう。


「悪いけど私は一旦後退するわ。

 アストロスとジェイン。 サポートお願い!」


「はい」「はいだワン!」


 私が後退すると同時に、

 連合軍の前衛部隊が前進して、

 帝国軍の前衛部隊と激しい白兵戦を始めた。


 でも今の私にそんな事を気に余裕するはなく、

 アストロスやジェインに護られながら、後方に下がった。


 こうして戦乙女ヴァルキュリア漆黒ブラックの戦女(・ヴァルキリー)の最初の戦いは、引き分けという結果に終わった。


次回の更新は2024年1月17日(水)の予定です。


ブックマーク、感想や評価はとても励みになるので、

お気に召したらポチっとお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

宜しければこちらの作品も読んでください!

黄昏のウェルガリア
― 新着の感想 ―
[一言]  ついにマリーダと対決しました。さすがに楽勝にはなりませんでしたね。  マリーダは力におぼれず、冷静にリーファと戦うから厄介です。  自分の過ちも認め、純粋にリーファに勝ちたいと思っているか…
[一言] 更新お疲れ様でした。 やはり、今後を考えるとすればかなりキレイな終わり方だったでしょう。 ここで、重役であり戦力であるマリーダを殺してしまったら帝国側の弱体化は否めませんからね。 それに…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ