第百七十一話 リーファ対漆黒の戦女(前編)
---三人称視点---
リーファとマリーダ。
まずはお互いに「ソウル・リンク」を発動。
初手としてはこの判断で正しかった。
となれば次に行うべきは相手の分析。
戦いにおいて敵を知ることは何よりも重要だ。
そして二人は相手の能力値の分析を己の守護聖獣に命じた。
「ランディ、分析よっ!」
「了解した。 ――分析開始!」
「ガーラ、分析して頂戴!」
「了解だニャン、分析開始っ!」
しばしの間、二人の間が静寂に包まれる。
そして互いの守護聖獣が分析を終えた。
「リーファ殿、分析を終えました」
次の瞬間、リーファと守護聖獣ランディの意識が共有化された。
---------
名前:マリーダ
種族:ヒューマン♀
職業:漆黒の戦女レベル37
能力値
力 :1385/10000
耐久力 :1970/10000
器用さ :1034/10000
敏捷 :1644/10000
知力 :2250/10000
魔力 :3848/10000
攻撃魔力:2255/10000
回復魔力:2235/10000
※「ソウル・リンク」で能力値強化中
---------
「意外と能力値が高いわね。
でもマリーダは多分、他職のパッシブ・スキルはないでしょうから、
そう考えたら、かなり高い数値かもしれないわね」
「うむ、リーファ殿の言うとおりだ。
だがこれくらいのレベルの相手は今までも戦ってきた。
あのネイラールやラングと比べたら、
これくらいの相手なら何とかなるであろう」
「油断は禁物よ。 相手は漆黒の戦女。
どんな技や能力があるか分からない状態。
だから様子を見つつ、相手の力を見極めるわ!」
「そうだな、そうべきであろう」
一方のマリーダの守護聖獣ガーラも分析結果を主に伝えた。
「マリーダちゃん、あの女なかなか強いニャン。
偉そうなのは態度と言動だけと思ってたけど、
デカい口を叩くだけの事はあるニャン!」
「……今、確認するわ」
---------
名前:リーファ・フォルナイゼン
種族:ヒューマン♀
職業:戦乙女レベル48
能力値
力 :1565/10000
耐久力 :2350/10000
器用さ :1115/10000
敏捷 :1812/10000
知力 :2440/10000
魔力 :3896/10000
攻撃魔力:2515/10000
回復魔力:2412/10000
※「ソウル・リンク」で能力値強化中
---------
「強いわね、この辺は流石と言うべきかしら?
でも決して諦めなければ、何とかなる力の差よ。
だからガーラ、アナタの力も貸して頂戴」
「えっへん、ボクちゃんを頼りなさい。
必ずやキミを勝たして見せるニャン」
「ええ、期待しているわ」
そう言葉を交わしてマリーダは、
漆黒の魔剣を右手で構えて、ゆっくりと腰を落とす。
対するリーファも戦乙女の剣を右手に持って身構えた。
お互いの能力値は分かったが、
剣技や能力は分からない状態。
だから二人ともいきなり技や能力値を発動はせず、
単純な剣術による力を比べを挑もうとしていた。
――漆黒の戦女の技や能力は分からない。
――でも能力値以外の素の戦闘力なら私に分がある筈よ。
――昔のマリーダは剣術や体術の稽古なんてしなかったわ。
――だからまずはマリーダの素の戦闘力を確かめるわ。
「マリーダ、覚悟しなさいっ!」
「受けて立つわ、お義姉様っ!」
とりあえずリーファはそれなりの力で剣戟を繰り出した。
対するマリーダも渾身の力を篭めて、魔剣を縦横に振るう。
辺りに鋭い金属音が響き、互いの刃と刃が交錯する。
リーファはマリーダの急所を狙うが、
その結果、互いの刃の軌跡が重なりあった。
それと同時に互いの刃を弾きあう金属音が連続して鳴り響く。
ここまで斬り合っただけでも、
マリーダの剣術の技量がある程度分かった。
単純な力やスピードだけではなく、
剣を振り下ろす速度、斬り返すタイミング。
そのどれもが一流の剣士と言えた。
「驚いたわね、まさかアナタがここまでやるとは想定外よ」
「ふっ、私も驚いていますわ。
私の剣術はほぼ我流、なのにお義姉様を相手にも、
互角以上に戦えている。 これは私が凄いのか?
それともお義姉が大した事ないのか。
うふふふっ、一体どちらでしょうね?」
「あるいはその両方かもしれないわね」
「うふふふ、相変わらず余裕ですわね。
私はアナタのそういう所が大嫌いです」
――これは思ったより手こずりそうね。
――ならばここは剣技を使うわ。
――マリーダの能力をある程度測る為にね。
リーファはそう思いながら、一気に間合いを詰めた。
そして右手に持った聖剣で渾身の突きを放った。
「――ヴォーパル・ドライバーッ!!」
「甘いですわ! ――ダブル・ストライク」
マリーダも負け時と渾身の二連撃を繰り出す。
そして二つの剣閃が交錯して、一方が打ち払われた。
打ち負けたのはマリーダであった。
「イーグル・ストライクッ!!」
リーファが再び剣技を放つ。
マリーダも懸命に切り払いを繰り出す。
だがリーファの斬撃を何度も受けていく度に、
マリーダの返す刃の素早さが徐々に鈍り、
リーファが押し込んで行く展開が増えた。
マリーダも昔に比べたら、かなり成長していたが、
ちゃんとした剣術の訓練を受けて、
様々な実戦を経験したリーファ相手では、やはり分が悪かった。
「くっ!?」
力を強めて放ったリーファの一撃を受けて、
マリーダが僅かにバランスを崩す。
リーファはその隙を見逃さずに、
マリーダに足払いをかけて転ばせた。
「こ、小癪な真似を……がはぁっ!?」
次の瞬間、マリーダの腹部に強烈な衝撃が走った。
吹き飛ぶまではいかなかったが、
その衝撃で後ろに仰け反るマリーダ。
マリーダが隙を見せた瞬間に、
リーファが彼女の腹部に膝蹴りを放ったのである。
リーファは剣術だけでなく、体術にも優れていた。
一方のマリーダは体術に関してはほぼ素人。
結局、二人の歩んできた人生の差がこの戦いにおいても現れた。
だがマリーダは自分の置かれた状況を即座に理解した。
そして結果的に彼女は冷静になる事が出来た。
とりあえず接近戦では分が悪い。
それを悟ったマリーダはステップワークを駆使して、
後ろに下がって、一定の距離を保った。
――悪くない判断ね。
――マリーダも色々成長しているようね。
――だから早い段階で叩き潰すべきね。
――まずは中間距離の魔法戦で相手の気力と魔力を削るわ。
リーファも右手に聖剣を持ちながらも、
左腕を自由にしたまま、摺り足で中間距離を保った、
そしてリーファとマリーダによる魔法戦が始まるのであった。
次回の更新は2024年1月13日(土)の予定です。
ブックマーク、感想や評価はとても励みになるので、
お気に召したらポチっとお願いします。




