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第十六話 進撃(後編)



---三人称視点---



 夜が明けて太陽の光が射し、

 再びパルナス平原に異なる軍勢の旗が翻る。

 勢いに乗る連合軍の兵士達は怒涛の進撃を続けて、

 次々と目の前の帝国兵を斬り捨て、平原に馬の蹄の音が無数に響き渡った。


 黄金の馬具をつけた白馬に乗った若き戦乙女ヴァルキュリアは、縦横無尽に平原を駆け巡る。 若き戦乙女ヴァルキュリア――リーファが手にした聖剣から光、火、風といった様々な属性の魔力の波動が放たれた。


 光の波動は眩い光を放ち、直撃した敵兵の身体に衝撃を与え失神させて、

 紅蓮の炎は鋭い炎の刃となり、敵兵とその周囲の物資を焼き払う。

 風の波動は空気を裂く鎌鼬のような真空波となり、

 敵兵を体の至る所をその風の刃で切り刻んだ。


 強烈な攻撃を目の当たりにした

 総督府帝国軍の戦意と士気は一気に急降下する。


「皆で勝利を掴みましょう!」


 若き戦乙女ヴァルキュリアが高らかに華麗にそう叫んだ。


戦乙女ヴァルキュリアと共に戦え!」


「パールハイムを帝国の魔の手から奪い返せ!」


 乱戦の中、連合軍の兵士達がリーファに続くように怒号と歓声をあげた。

 乱戦状態の中でリーファとその盟友が次々と敵を蹴散らす。


 リーファが手にした聖剣で馬上から敵を切り捨てる。

 アストロスが刺突剣を縦横に振るい、敵の死体を順調に積み上げた。

 パピヨンのジェインが手斧とハンド・ボーガンで敵を狙い撃つ。

 賢者セージエイシルが初級及び中級攻撃魔法を駆使して、

 着々と確実に敵を戦闘不能に追いやる。


 敵の勢いに呑まれた上、戦意と士気が低下した帝国兵は無残なまでに瓦解した。

 パルナス平原を越え視界にパールハイム城が見え始めた。

 城門を護るべく、漆黒の甲冑を着た帝国兵が集結するありさまを、

 リーファは馬上から平然とながめやった。


 突撃命令が下されると、連合軍の兵士達は馬の蹄で地面を踏み鳴らして前進する。先陣をきっていた魔法剣士アストロスは、斜めに自らの白銀の片手剣を滑走させ、敵兵の兜と甲冑のつぎめを一撃で切断した。血を飛散させて帝国兵はその場に崩れ落ちた。


 帝国兵から怒りと憎悪の念が噴きあがる。

 アストロスに続くように連合軍の兵士達は、

 怒号と悲鳴、耳障りな金属音、血と火花が交錯するなかに身をおいた。


「城門を護れ、我々は誇り高き帝国軍だ!」


「ガースノイド帝国に栄光あれ!」


 斬り捨てられた帝国兵が断末魔の叫びをあげる。

 城門の付近では敵味方問わず死屍累々であった。

 一部の防衛部隊の中隊長とその部下達が白旗をあげ投降してきた。

 それがきっかけとなって帝国軍の統率は完全に乱れ始めた。


 斬り捨てられながら絶命の間際に帝国兵が叫び声をあげる。

 リーファは感覚を研ぎ澄まし、戦乙女ヴァルキュリアの剣(ソード)を自由自在に操り、網膜に映る帝国兵を苛烈だが短い斬撃の応酬の後に、着実に戦闘不能の状態へと突き落としていく。


 そして城門を破るべく、攻城部隊が敵の攻撃を防ぎながら、

 城門まで迫ると、破城槌で巨大な扉に何度も何度も突貫していく。

 十度に及ぶ突撃と一時間にわたる攻防の末にパールハイム城の城門を完全に陥落させた。


「じょ、城門が突破されました!」


 伝令兵が焦りを隠さず玉座に座るベルナドット将軍にそう告げた。


「将軍、敵がこの玉座の間に来るのも時間の問題です。

 ですので今のうちにお逃げください」


 壮年の男性ヒューマンの副官がそう告げるが、

 ベルナドット将軍は首を左右に振り、その申し出を拒んだ。


「俺は武人だ、ましてや将軍だ。

 部下を見捨てて一人で逃げるつもりなどない、だから最後まで戦う!」


「しかし死んでしまえば、全てが終わります」


「そんな事は百も承知だ。

 だが俺は誇り高きガースノイド帝国の将軍だ。

 それに逃げたところでどうする?

 皇帝陛下はそんな臆病者は絶対赦さんぞ?

 ならば俺は将軍として、最後まで自分の役割に徹する」


「……分かりました、ならば私も最後まで付き合います」


「嗚呼、このベルナドットの武人としての矜持を見せてくれるわ!」



---------


「古都パールハイムを奪回せよ!」


 たちまち湧きおこる怒号と歓声。

 瓦解した帝国兵に容赦なく襲い掛かり、

 怒号をあげてたくさんの連合軍の兵士達は、怒濤の進撃を続ける。


「進め、進め!」


「勝利は目前だぁっ!」


 口から口と伝えられて、連合軍の兵士達が奮い立たされる。

 いたるところに火の手があがり、帝国の隊長たちは声を荒げて叫んでいた。


「戦え、帝国軍の意地を見せろ!」


「臆するな、戦え、ガースノイド帝国に栄光あれ!」


 半ば狂気に満ちた小中隊長の激励も、空しく瓦解した兵には意味をなさかった。

 絶叫と悲鳴の中を、地面を踏み鳴らし、進撃する者、壊走する者、追従する者。

 

 リーファとその盟友が先陣をきり、教会騎士団の総長チェンバレン、エルフ族の騎士団長エルネス、猫族ニャーマン犬族ワンマン兎人ワーラビットの兵士達も後に続く。

 王座の間に続く左側の階段の前に帝国兵が10人程立ちふさがっていた。


「私はサーラ教会傘下の教会騎士団の総長イルゾーク・チェンバレンだ!

 最早、勝負はついた。 だから貴公達も命が惜しいなら速やかに投降せよ!

 それでもなお闘うのであれば、こちらも容赦はしない、かかってくるがいい」


 総長チェンバレンは手にした長槍を前方に突きだし誇らかに名乗りあげた。

 だが帝国軍にも意地と誇りがあった。

 教会騎士団の総長の恫喝にも威嚇することなく剣を手にして、

 こちらに向かって突撃してきた。


 チェンバレンの長槍と、鉄の剣が激しい衝突をする。

 激しい斬撃が繰り返されたが、勢いに乗る連合軍兵士の波状攻撃を受けて、

 帝国兵はずるずると後退と前進を繰り返す。


戦乙女ヴァルキュリア殿、ここは我々にお任せください」


「分かりましたわ! アストロス、ジェイン、エイシルさん!」


「「はい」」「はいだワン」


「私達は目の前にある渡り廊下を突き進んで、

 敵将が居ると思う玉座の間へ向かいます。

 敵の奇襲や伏兵にはくれぐれも気をつけてください」


「「はい」」「はいだワン」


「それでは行きますわよっ!

 皆、既に勝利は確定しました。

 ですが最後まで油断せず、全力を尽しましょう」


 そう言って聖剣を掲げながら勝鬨を上げるリーファ。

 すると周囲の兵士達もそれに呼応するように勝鬨を上げた。

 そして完全勝利を掴むべく、残敵掃討を始めるのであった。



---------


 名前:ジェイン・ステアーズ

 種族:犬族ワンマン

 職業:ハイ・レンジャー レベル33


 能力値パラメーター


 力   :145/10000

 耐久力 :230/10000

 器用さ :831/10000

 敏捷  :1594/10000

知力  :421/10000

 魔力  :1467/10000

 攻撃魔力:836/10000

 回復魔力:1274/10000


 ※他職のパッシブ・スキル込み


 魔法  :ヒール、ハイヒール

      キュア、キュアライト、アクセル、フライ

      ストーン、ストーンシャワー、アースハンド、

      ウォーター、アクア・スプラッシュ、アイスバルカン

      サイコキネシス、テレパシー、サイキック・ウェーブ


 スキル :結界、対魔結界、トラップ解除、

      トラップ発動、ピッキング、軌道変化、

      投擲命中アップ、射撃命中アップ、スリング・ショット


武器スキル:トマホーク、ハイパートマホーク、

      ブーメラン・トマホーク、スマッシュ、

      ダブル・スマッシュ、クロス・スマッシュ

      クイック・ショット、ダブル・ショット、

      スナイパー・ショット、クイック・スロー、

      アイス・スロー、パワフル・カッター


 能力  :精霊召喚、魔力探査、調教テイム



次回の更新は2023年2月11日(土)の予定です。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 視点が変わることによって それぞれの出演者のドラマがあって とても良い感じに仕上がり 次が気になるし、あたかも物語の中に自身が居る 錯覚に陥ります! [一言] 先日は評価をいただきあり…
[良い点] リーファが魔力を放つ描写が迫力あって格好いいです。 思わず何度も読んでしまいました。
[良い点] 圧巻でした。その一言に尽きます。 ですが、「はいだワン」 「はいだワン」ってええええええ。 反則です。 私は白旗をあげました。
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