第百六十四話 パーティ再結成
---主人公視点---
「リーファ殿、少し時間を頂けるかな?」
「はい、問題ありません」
会議室に残ったラミネス王太子がそう言って、私を呼び止めた。
どうやら何かの話があるみたいね。
でもここで私に拒否権はないわ。
などと思っていると、
王太子殿下が優しい口調で語りかけてきた。
「何もそう緊張する事はないさ。
実はこのエストラーダ城には、
君のかつての盟友が来ているのだ。
だから良い機会だから、
君はその盟友ともう一度パーティを組むが良い」
「それはエイシルやロミーナの事ですか?]
「嗚呼、そのとおりだ」
「……」
成る程、そういう事か。
まあ王太子殿下の立場からすれば、
少しでも戦力を上げたいでしょうからね。
でも私個人としては、この人事を歓迎したわ。
「あの美青年の魔法剣士とあの犬族は、
今回の遠征に同行しているのかね?」
「ええ、彼等も同行してますわ」
「ならば話は早い。
そこの警備兵、伝令役に「戦乙女の盟友」を
お連れしろ」と伝えよ!」
「は。はいっ!」
王太子殿下に言われて、警備兵は足早に部屋から去った。
それから待つ事、十分。
会議室の扉が開きアストロスとジェインが入って来た。
「ラミネス王太子、ご無沙汰しております」
「ラミネス王太子、お久しぶりだワン」
「うむ、君らもその辺の椅子に腰掛けるがよい」
「はい」「はいだワン」
「戦乙女殿の盟友をお連れしました」
「うむ、入るが良い!」
「はっ!」
そう言葉を交わし、先程の警備兵が再び室内に入ってきた。
そしてその後ろには、懐かしい顔ぶれが揃っていた。
「ラミネス王太子、そしてリーファさん。
ご無沙汰しております」
「エイシル、お久しぶり!」
「アタシの事も忘れないで頂戴。
ラミネス王太子、リーファさん、お久しぶりだわさ!」
「ロミーナ、元気そうで何よりだわ」
……。
二人ともとても元気そうだわ。
エイシルは相変わらず大きな緑の瞳が可愛らしいわね。
でも表情が前より引き締まった感じがするわ
そして淡い水色のローブに両手に両手杖という格好。
似合っているけど、
見た感じ前に会った時とほぼ変わらないわね。
女子だから少しは身なりに気をつけて欲しい。
と思うのはおこがましいかしら?
ロミーナは上下共にピンク色のチュニックとズボンという格好。
その背中に獣人サイズの黄金の弓と矢筒を背負っていた。
彼女も前に会った時とほぼ同じ格好ね。
「二人とも元気そうで何よりだわ」
「リーファさんもお変わりなく」
「いやいやエイシル、リーファさんは、
前より綺麗になってるわさ。
勿論、アタシとエイシルも同じだけどね」
「うふふふ、ロミーナは相変わらず口が上手いわね」
「そうでもないだわさ」
「……」
こうして五人で顔を合わせるのも随分久しぶりな気がする。
アストロスとジェインはずっと一緒に居たけど。
エイシルとロミーナと会うのは久しぶりだからね。
まあそれ自体は歓迎したいのだけど、
こうして集まった理由がまた一緒に戦う。
というものでなければ、もっと素直に喜べたでしょうね。
「うむ、やはり気心の知れた相手だと会話も弾むな。
だが再会したばかりで悪いが、
君達には早速新たな任務についてもらいたいと思う」
「はい。分かっています」
「ほいほい、何の理由もなく呼びだされたわけないしね。
アタシも戦乙女の盟友。
故にどんな任務でも引き受けるだわさ」
「理解が早くて助かるよ。
君達五人にはもう一度パーティを君で貰い、
敵に居ると思われる『漆黒の戦女』の相手をしてもらいたい」
「……『漆黒の戦女』ですか?」
「なんですの? その『漆黒の戦女』って?」
当然の疑問をぶつけるエイシルとロミーナ。
というかアストロスとジェインにもまだ話してないわね。
ならばここは彼等にも伝えておくべきね。
「実は――」
私は端的に『漆黒の戦女』について説明した。
するとアストロスやエイシル達の表情がみるみるうちに強張った。
「『漆黒の戦女』ですか。
これは厳しい戦いになりそうですね」
「ウン、現時点じゃ相手の力量は分からないけど、
多分、お姉ちゃんと同等、
あるいはそれ以上の力がありそうだワン」
「ボクもアストロスさんやジェインちゃんと同じ意見です。
でもボクらは戦乙女とその盟友。
だからやるしかないのですね」
「ええ、そうよ。 私達がやるのよ」
私がそう言うと、アストロス達も真剣な表情になった。
正直、相手のことが分からないのは不安だけど、
それは周りの人間も同じ。
だから私達が戦うべきだわ。
「うむ、流石は戦乙女殿とその盟友だ。
その勇気を私は称えよう」
「いえこれが私達の役割なので……」
「だが肝心の『漆黒の戦女』が何処に現れかは分からん。
なので君達には耳錠の魔道具以外にも、
携帯石版と転移石を数個渡しておく」
「そうですね、そうしてもらえると助かります」
「うむ、兎に角、相手の力は未知数だ。
それ故に勝てそうであれば、容赦なく止めを刺してくれ」
「勿論ですわ」
「うむ、期待しているよ。
では私はそろそろ退室させてもらうよ」
「はい、お疲れ様でした」
ラミネス王太子は、
護衛兵を二人引き連れてこの場から去った。
そしてこの会議室には私達だけが残された。
「……パーティ再結成してなんだけど、
いきなり厳しい戦いになりそうね」
「覚悟の上です」
と、アストロス。
「ウン、むしろ望むところだワン」
「何にせよ、『漆黒の戦女』の正体を
突き止めたいですね」
「そうね、でもこのパーティならきっと大丈夫だわさ」
と、ロミーナ。
「……そうね、じゃあまた私に皆の力を貸して頂戴」
「「はい」」「はいだワン」「はいだわさ」
こうして戦乙女とその盟友によるパーティが再結成された。
このメンバーならきっとどんな困難も超えられるわ。
この時は本気でそう思っていたが、
私が考えている以上に、この先、厳しい戦いが待っていた。
次回の更新は2023年12月27日(水)の予定です。
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