第百六十一話 暫定統治
---三人称視点---
聖歴1756年12月10日。
シュバルツ元帥、ハーン元帥、タファレル元帥達の部隊が
帝都レーゲンブルグに入城。
神聖サーラ帝国の皇帝オスカー二世は国外に亡命。
これによって神聖サーラ帝国の命運は皇帝ナバールの手に握られた。
この緊急事態に神聖サーラ帝国の閣僚や将軍。
そして多くの民が不安を抱いていたが、
皇帝ナバールは全軍に「略奪及び暴行行為の禁止」を大々的に宣言した。
しかしそれでもそれらの行為を行う者が現れた。
それに対して皇帝ナバールは、略奪者、暴行者に厳罰を命じた。
大衆が見守る広場で鞭による百叩きの刑。
また度の超えた者は、銃殺刑に処した。
それによって神聖サーラ帝国の国民は、
帝国軍、そして皇帝ナバールに惜しみない拍手を送った。
そして二日後の12月12日。
皇帝ナバールは部下を引き連れて、帝都レーゲンブルグに入城。
帝都の民の反応は様々であったが、
「皇帝ナバール万歳」と叫ぶ者達も居た。
それからナバールは、ゲイザーブルグ城の中に入り、
多くの閣僚、元帥、将軍。
そして神聖サーラ帝国の閣僚及び将軍も集めた。
そこでナバールは神聖サーラ帝国の解体を宣言。
神聖サーラ帝国はナバールによって、
大中小合わせて多くの国に再編された。
その北部エリアをプロマテア王国。
中央エリアをカイン同盟。
そして南部エリアのヴィリニス大公国の三つに分割。
皇帝ナバールは北部エリアのプロマテア王国。
中央エリアのカイン同盟を暫定統治する事なった。
南部エリアのヴィリニス大公国は、
北半分をガースノイド帝国、
南半分をデーモン族が分割統治する事なった。
その後、プロマテア王国の国王に任じられた
ゲオルク一世はレーゲンブルグで神聖サーラ帝国の終焉を宣言。
こうして、聖歴1001年以来、
755年間続いた神聖サーラ帝国は滅する事となった。
この大陸の勢力図を変える大事件に
連合軍とその加盟国、またデーモン族も大いに沸いた。
たった一ヶ月余りで、
ナバールが再びこのような大事を起こした事実に
連合軍の首脳部と軍人達は、
激しい戦慄を覚えずにはいられなかった。
連合軍の首脳部はエルフ族のエストラーダ王国のエストラーダ城に
首脳部と軍隊を集結させて、
対帝国に対して大々的な会議を行う異にした。
一方のデーモン族は、
皇帝ナバールと秘密裏の同盟、盟約をかわして、
ヴィリニス大公国の南半分を支配下に置いた。
そのヴィリニス大公国の南部エリアのグラファード城で、
「四魔将」の炎のネストール。
風のメルクマイヤー、土のクインラースが顔を合わせて議論を交わしていた。
グラファード城の三階の玉座の間。
赤い絨毯が敷かれた先にある玉座に、
炎のネストールが腰掛けて、ニヤニヤと笑っていた。
「まさかこうも上手く行くとはな。
怪物ナバールの名は、伊達じゃないようだな。
でもそのおかげでオレ達は漁夫の利を得る事が出来た。
こりゃ~今後の展開次第では、もっと面白いものが見れるかもな」
「あまり調子に乗らない事だな。
というか玉座に腰掛けるのは、
いくらなんでもやりすぎだぞ」
と、風のメルクマイヤーが軽く諫めた。
だがネストールはまるで気にせず、
玉座の上で足を組み直した。
「いやいやこれくらいは役得だろ?
それともお前も座りたいのか? ん?」
「そういう意味で言ってるわけじゃない!」
「メルクマイヤー、冗談だよ。 ムキになるなよ?」
「それでネストール、今後はどう動くつもりだ」
そう問うたのは、褐色肌の身長170前後の茶色のローブ姿の男性デーモン族。
彼が「四魔将」の一人である土のクインラースだ。
「そうだな、それも帝国軍次第じゃねえかな?
どのみちこうなったら、帝国軍と連合軍の激突は避けられない。
そしてその流れ次第でオレ達はどう動くか決める。
そういう風に動いて、旨みにありつける。
こんな感じで動けば、大火傷を負うことはないだろうさ」
「成る程、意外と考えているのだな」
と、クインラース。
「おうよ、オレ様はいつでも考えているさ!」
「帝国軍の今後の動きとしては、
ペリゾンテ王国に進軍する可能性が高いな。
あの国には皇太子が幽閉されている。
ナバールとしては、何としても我が子を取り戻したいだろう」
と、メルクマイヤー。
「嗚呼、となると次の進路は、
ファーランド王国になる可能性が高いな。
ここでの攻防戦が今後の戦いの流れを決めるだろうな」
「「嗚呼」」
ネストールの言葉にメルクマイヤーとクインラースが相槌を打つ。
「いずれにせよ、オレ達は優雅に高みの見物といこうぜ」
「だが魔女帝陛下に相談しなくていのか?」
と、クインラース。
「あのロリ婆の事は気にしなくてだろう。
こちらが無理しなきゃあの女も五月蠅くは云わんだろうさ」
「まあ俺もそれには賛成だ。
だが無秩序に領土を拡大するのは、少し危険だと思うぞ」
「メルクマイヤー、お前さんの言うとおりさ。
でも大丈夫さ、いざとなれば逃げたら良い。
無理してまで領土の防衛に固執する事もなかろう。
どうせ漁夫の利で得た領土だ。
いざとなれば奴等に突き返してやればいいさ」
「そうだな、それで良かろう」
「嗚呼、私も賛成だ」
メルクマイヤーとクインラースも賛同する。
こうしてエレムダール大陸の戦いに再び火がつき、
また各地で血の雨が降ろうとしていた。
そしてエルフ族のエストラーダ城で、
連合軍の首脳部による対帝国の会議が始まろうとしていた。
次回の更新は2023年12月20日(水)の予定です。
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