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第百五十七話 慧可断臂(えかだんぴ)


---三人称視点---



 タファレル元帥は統領ルドラーとネストール達の説得に成功。

 これで帝国とデーモン族の同盟関係は成立した。

 その事を伝える為に、タファレルは転移魔法陣を駆使して、

 帝都ガルネスに舞い戻った。


 そして迎えた12月1日。

 皇帝ナバールは帝城ガルネスの二階の会議室に、

 臣下と元帥、将軍を集めて御前会議を行った。


 会議室内の大理石の長テーブルに上座に皇帝ナバールが座り、

 左側にシュバルツ、タファレル、ハーンの三元帥。

 そして警務大臣フーベルクが椅子に腰かけ、

 右側に総参謀長ザイド、漆黒ブラックの戦女(・ヴァルキリー)マリーダ、

 バズレール元帥、更にレジス将軍とエマーン将軍という席順だ。


 皇帝ナバールは視線を動かして、周囲の臣下達を見据えた。

 多くの者が緊張した 緊張したような面持ちで、

 それでいて何かを期待するような眼差しを、ナバールに向けてくる。

 皇帝ナバールはその期待に応えるべく、

 凜とした声で周囲に宣言する。


「諸君、タファレル元帥の働きによって、

 我が帝国とデーモン族の同盟関係は無事に成立した。

 これによって我が軍は東部の敵を気にする事なく、

 自軍の戦いに専念出来るようになった。

 よって余はここに帝国軍が連合軍と再び戦う事を宣言する」


 この言葉によって室内の緊張感が高まる。

 そして神妙な顔をして、シュバルツ元帥が皇帝に問うた。


「それで攻撃対象は何処にするのでしょうか?」


「うむ、余はまずは神聖サーラ帝国を攻めようと思う。

 とはいえ本国の護りも固める必要がある。

 よって本国の北部にバズレール元帥の部隊、

 西部にレジス隊長の部隊、南部にエマーン将軍の部隊。

 東部に余と総参謀長ザイドの本軍を配置して本国の護りを固める」


 これに関しては妥当な判断だったので、

 臣下達も皇帝の言葉に無言で頷いた。


「そして肝心の侵攻部隊に関してだが、

 ハーン元帥、タファレル元帥、シュバルツ元帥の三元帥の部隊に

 漆黒ブラックの戦女(・ヴァルキリー)を加えて、

 北東に進軍して神聖サーラ帝国へ攻め込んでもらう!」


「三元帥の部隊を持って、攻め込むのですか?」


 と、ハーン元帥。


「嗚呼、この戦いは新生ガースノイド帝国の大事な初戦。

 それ故に必ず勝たねばならん!

 よって現状の帝国軍の最強部隊をぶつける!」


「「「御意」」」


 声を揃える三元帥。

 

「そして漆黒ブラックの戦女(・ヴァルキリー)には、

 臨機応変に動いてもらい、常に最前線で戦ってもらいたい!」


「了解致しました」


 凜とした声で応えるマリーダ。


「それでデーモン族の方はどうするおつもりでしょうか?

 事前に伝書鳩で相手に書状を送りますか?」


 皇帝はタファレル元帥の言葉に首を左右に振った。


「いや仮にそうしても奴等は動かんだろう。

 奴等が動くとしたら、こちらが圧倒的に有利になった時である。

 なのでデーモン族の戦力は宛てにせず、

 帝国軍の力のみで神聖サーラ帝国を叩き潰すのだ!」


「はっ!」と、大きな声で返事するタファレル。


「皇帝陛下のご期待に応えてみせましょう」


「同じく!」


 シュバルツ元帥とハーン将軍も相槌を打つ。

 周囲の団結力が固まる中、

 警務大臣フーベルグが一石を投じる。


「それで仮に神聖サーラ帝国を占領出来たとしたら、

 次はどのように動くおつもりですか?

 今の状態で占領地域を増やすのは、得策と言えませんよ」


「無論、余もそんな事は百も承知だ。

 だから神聖サーラ帝国の統治権は、

 デーモン族に譲ってやっても良いと思っている。

 適当な口実をつけて、神聖サーラ帝国を解体して、

 幾つかの国に分けて、帝国とデーモン族で分割統治すれば、

 良い感じに連合軍の動きを封じれるであろう」


「……そう上手く事が運びますかな?」


 と、フーベルグ。


「無論だ、必ずや次の戦いに勝ってみせよう!」


「それで無事に神聖サーラ帝国を攻略したら、

 次はどのように進軍するおつもりでしょうか?」


 と、エマーン将軍。


「余の目的はあくまでペリゾンテ王国から

 皇太子ナバール二世を取り戻す事だ。

 故に神聖サーラ帝国を解体後に、

 三元帥による攻撃部隊を南下、

 帝国本土から余率いる本隊を東進させて、

 まずは連合軍の統治下にあるファーランド王国を攻める。

 そしてファーランド王国の占領が完了したら、

 大軍を持って、ペリゾンテ王国へ大攻勢をかける!」


「成る程、理にかなった戦略ですね」


「ええ、私もそう思います」


 皇帝の言葉を肯定するバスレール元帥とレジス将軍。

 彼等だけでなく、他の臣下達も納得した表情をしていた。

 フーベルクだけはポーカーフェイスであったが、

 皇帝の言葉に反論するような真似はしなかった。

 それで気を良くしたナバールは、声高らかに叫ぶ。


「まずは全力を持って、神聖サーラ帝国を叩き潰す。

 その次はファーランド、そしてペリゾンテ王国を攻める!

 これは新生ガースノイド帝国の命運をかけた聖戦である。

 故に卿等けいらも余と力を合わせて、

 この聖戦を戦い抜くために尽力を尽してくれ!」


 こうして新生ガースノイド帝国は、

 三元帥と漆黒ブラックの戦女(・ヴァルキリー)マリーダの力を持って、

 神聖サーラ帝国へ大攻勢をかけようとしていた。



次回の更新は2023年12月10日(日)の予定です。


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― 新着の感想 ―
[一言]  帝国はデーモン族と同盟を結び、どう転ぶかわかりませんね。  この作品は敵が頭いいので、わくわくします。  マリーダもバカ女から覚醒して手ごわくなっているし、楽しみです。ではまた。
[一言] 更新お疲れ様です。 遂に戦争が始まりそうですね。 神聖サーラ帝国のために、リーファ達が動く決断がされるのか。 南下していく三元帥からペリゾンテ王国を守るような形でリーファ達は動くような気…
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