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第百五十話 漆黒の戦女(ブラック・ヴァルキリー)誕生!


---マリーダ視点---



「マリーダ、大丈夫か?」


 この声は皇帝陛下?

 どうやら意識が戻ったようね。

 私は我に返り周囲を見渡した。


 気が付けば私はうっすらと輝いた魔法陣の上に立っていた。

 そんな私を観察するように、

 皇帝陛下やその側近がこちらに視線を向けていた。


「……」


 どうやら現世に戻れたようね。

 そしてさっきの出来事は夢じゃないわ。

 その証拠に私は漆黒の鎧姿で右手には漆黒の魔剣が、

 左手には漆黒の盾が握られていた。


「どうやら無事に儀式を終えたようだな」


「ええ、お陰様で何とかなりました」


「儀式の前に比べて、闘気オーラや魔力が段違いだ。

 マリーダ、貴公も一応自分の冒険者の証を持ってるな?」


「ええ、帝都について念の為に冒険者登録をしてました」


「ならば自分の冒険者の証を見てみろ!」


「はい……」


 私の皇帝陛下に言われるまま、

 腰帯のポーチに自分の右手を突っ込んだ。

 そしてポーチの中をまさぐり、自分の冒険者の証を取り出した。


「あっ……これは凄い……です!」


 私は想わず驚きお声を上げた。

 職業欄しょくぎょうらんがきっちりと『漆黒ブラックの戦女(・ヴァルキリー)』になっており、

 レベルが一気に35まで上がっているわ。


 他の職業ジョブ剣技ソード・スキル、魔法などは

 習得してないから、スキル欄や魔法欄は空白のままだけど、

 基本的な能力値ステータスがかなり高かった。



---------


 名前:マリーダ

 種族:ヒューマン♀

 職業:漆黒ブラックの戦女(・ヴァルキリー)レベル35



 能力値パラメーター



 力   :1125/10000

 耐久力 :1730/10000

 器用さ :774/10000

 敏捷  :1394/10000

 知力  :1964/10000

 魔力  :3548/10000

 攻撃魔力:1985/10000

 回復魔力:1998/10000


 能力  :能力覚醒、魔力覚醒 魔力探査


---------


「す、凄い……これが漆黒ブラックの戦女(・ヴァルキリー)の力なの!」


 細かい事は分からないけど、

 この能力値パラメーターが異様に高いという事は分かる。


「どれどれ……我々も確認してみるか」


「そうだ、余も見てみよう」


 皇帝陛下や周囲の魔導師がこちらを見ながら、

 右手をかざして魔力を篭める。

 すると周囲の多くの獣が現れた。

 あ、あれは恐らく守護聖獣ね!


「なっ……こ、これは凄い!

 ほぼパッシブ・スキルなしでこの数値とはっ!?」


 こちらを見て両眼を見開く皇帝陛下。

 そ、そんなに凄い事……のようね。


「な、なっ……これでパッシブ・スキルなしなのか!?

 これは育てようによっては、

 戦乙女ヴァルキュリアにも十分勝てる!!」


「ああ……漆黒ブラックの戦女(・ヴァルキリー)の名は伊達じゃないな」


 ……周囲の魔導師達も驚いているわね。

 どうやら私が得た力は想像以上に大きいみたいだ。

 すると皇帝陛下がこちら数歩歩み寄ってきて――


「マリーダよ! いや漆黒ブラックの戦女(・ヴァルキリー)よ!」


「はい!」


「よく無事に常闇とこやみの試練を乗り越えてくれた。

 その力を余に――ガースノイド帝国に貸してもらえぬか?」


 皇帝陛下はそう言って、深々と頭を垂れた。

 ……。

 皇帝にこんな姿までさせるとは……。


 でもこれくらいは当然と言えば当然かもしれないわね。

 何せ私は寿命六十年分と五百年分の魂を捧げたんだ。

 この状態で何年生きられるかも分からない。


 だからこれくらいの見返りは当然と思いたい。

 とはいえ私一人の力じゃどうにもならない。

 何より皇帝の後ろ盾があれば、色々と心強いわ。


「私で良ければ喜んで力をお貸ししますわ」


「そうか、何か望む物はあるか?

 地位でも領地でもよい、何でも申すが良い」


 ……。

 地位と領地かあ。

 前の私なら喜んで地位と領地を望んだだろう。

 

 だが今の私は六十年分の寿命を捧げた状態。

 私の年齢が十六歳だから、

 六十年分の歳を足して七十六歳くらいと考えれば、

 私の寿命は長くても五年前後という事になるだろう。


 そう考えると地位や領地を貰っても意味はないわね。

 そして今の私が求める物はただ一つ。

 そう、リーファの――戦乙女ヴァルキュリアの命だ。


「私は儀式の際にあたって、暗黒神アーディンに

 六十年分の寿命と五百年分の魂を捧げました。

 それ故に私の今の寿命は長くても五年前後でしょう」


「……それは誠か?」


 皇帝の表情が少し強張る。

 だが私は動じず、自然体で接した。


「ええ、事実ですわ」


「一つ聞いて良いか?」


「はい、なんなりとお聞きください」


「……何が貴公をそこまで駆り立てたのだ?」


 まあ皇帝陛下がそう思うのも無理はないわ。

 自分自身でも馬鹿げているという部分はあるわ。

 でもね、私にも女の意地というものがあるのよ。


 だからこのままじゃ終われない。

 このままじゃ死ぬに死にきれない。

 私は心に深く刻み、皇帝陛下の問いに答えた。


「私はなんとしても戦乙女ヴァルキュリアに勝ちたい。

 私が望むのはそれだけですわ。

 そしてその為には、皇帝陛下と帝国軍の後ろ盾が必要です。

 戦乙女ヴァルキュリアと戦う機会があれば、

 是非とも私にお任せください。

 必ずあの女を倒してみせましょう!」


「貴公の覚悟はよく分かった。

 良かろう、必ずや貴公のその機会を与えよう。

 そしてその際には、貴公も思うままに戦うが良い!」


「ははっ! 必ず、陛下のご期待に添えてみせます」


「うむ、期待しているぞ」


 そう言葉を交わすなり、

 皇帝陛下は覇気漲る表情で声高らかに叫んだ。


「ここに漆黒ブラックの戦女(・ヴァルキリー)が誕生した。

 我等と彼女が力を合わせれば、必ずや連合軍にも勝てるであろう。

 そしてペリゾンテ王国から何としても皇太子を取り戻す。

 その為にも余に卿等の力を貸して欲しい」


「おおっ!」


「陛下の為、帝国の為にこの身をを捧げます!」


 皇帝陛下の言葉に周囲の臣下達が歓声を上げて応える。

 これでもう後戻りは出来ない。

 でも私は後悔などしていない。


 暗黒神アーディンも言っていたわ。

 『行動した者にしか見えない光景がある』と。

 だから私も自ら行動を起こして、

 あの女に――戦乙女ヴァルキュリアに勝ってみせるわ。


 こうして私は漆黒ブラックの戦女(・ヴァルキリー)となった。

 進むも地獄、引くのも地獄。

 ならばとことん進み続けてみせるわ。


 もう私には失うものがないから……。

 だから私は自分自身と皇帝陛下の為に戦い続けるわ!


次回の更新は2023年11月25日(土)の予定です。


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― 新着の感想 ―
[一言]  マリーダがかっこよくなった。昔の欲まみれのおバカさんから覚醒して、一気に手ごわい敵になってます。  リーファに対する感情も純粋に勝ちたいという気持ちが占めてますし、敵側でもこういう方が盛り…
[一言] 更新お疲れ様です。 ついに、漆黒の戦女が誕生しましたね。 これからどう動くのでしょうか... もうすぐリーファ側との戦争が始まりそうですし... いや、ここで戦わないと言う手はないのでし…
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