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第百二十四話 生か、死か?(前編)



---三人称視点---



 聖龍の咆哮ハウリング攻撃によって、

 中衛に陣取る連合軍の兵士達は身動きが取れない状態であった。

 このままでは次のブレス攻撃で大打撃を受ける。


 左手に持った『幻魔げんまの盾』でこの危機を防いだリーファは、

 この危機的状況を救うべく、

 状態異常解除の職業能力ジョブ・アビリティを発動させた。


「――『メディカル・リムーバー』ッ!!」


 するとリーファの左手から放出された白い波動が周囲の仲間に降り注がれた。

 そして数秒後、周囲の仲間の身体は自由に動くようになった。


「皆、今すぐ後退するか、対魔結界を張って!」


「り、了解です! ――アクア・ウォール」


「――アース・ウォール!!」


「――戦乙女ヴァルキュリアじんっ!!」


 リーファがそう叫ぶなり、

 リーファの足元に黄緑色の魔法陣が浮かび上がった。

 するとリーファは周囲の盟友や仲間に向かって叫んだ。


「この魔法陣の上に乗って頂戴。

 この魔法陣は上に乗った者の傷や魔力を徐々に回復するわ。

 陣の上に乗っている間は、相手の魔法攻撃も吸収が可能よ!」


「お嬢様、お邪魔します」「ボクもお邪魔するワン」


 アストロスとジェインが魔法陣の上に乗る。


「ボクもお邪魔します」「じゃああたしも!」


 エイシルとロミーナも後に続く。


「グレイス王女殿下もお乗りください」


「分かったわ」


 すかさずリーファの許に駆け寄るグレイス王女。

 するとリーファはこの場における最適な指示を出した。


「エイシルとジェインは対魔結界を張って!

 アストロスはいつでも『魔力マナパサー』出来る状態を維持して!

 私はこの『幻魔げんまの盾』でブレス攻撃と魔法攻撃に備えるわ。

 グレイス王女殿下は対魔結界か、強化系スキルなどをお使いください」


「了解です、ハイルローガンに集う水の精霊よ。 

 我に力を与えたまえ! 『アクア・フォートレス』ッ!!」


「了解だワン! ――アイス・ウォールッ!」


「了解しました」


 エイシルとジェインが指示通りに対魔結界を張った。

 アストロスとロミーナは待機状態。

 

「なら私は強化スキルを発動するわ! 

 せいやぁっ!! ――『ブレイブ・サークル』」


 グレイスはそう言ってスキル『ブレイブ・サークル』を発動させた。

 これによってグレイスだけでなく、

 リーファ達や周囲の味方の防御力や魔法防御が一時的に強化された。


 その間にも聖龍ラグナールは、

 一歩一歩大地を踏みしめて前進を続けた。

 気が付けばブレス攻撃の射程圏内に入っていた。

 

「ふんっ、貴様等如きの小細工など力でねじ伏せてくれるわ!

 行くぞ、われの地獄の業火で貴様等を焼き殺してくれるわ。

 ――ガルラアアア……アアアァァァァァァッ!!」


 次の瞬間、聖龍ラグナールの口から、

 灼熱の炎が連合軍の兵士達を目がけて放たれた。

 その速度スピード、威力、熱、全てが想像を絶するレベルであった。


「ぐっ、ぐっ、ぐあああぁっ!!」


「ア……アアアニャアアァァァンッ!」


「ピ、ピ、ピヨピヨォォォォォォンッ!」


 一瞬で広がった火の海と生きながらに焼かれる連合軍の兵士達

 魔導師部隊が張った対魔結界も六割近くが破壊された。

 燃え盛る炎で全身を焼かれ、兵士達は悶え苦しんでいる。

 だがリーファは平静を保ったまま、自らの役割を果たす。


「皆、負傷者に回復魔法ヒール及び治療魔法をかけてください!

 我は汝、汝は我。 女神サーラの加護のもとに! 

 ――ディバイン・ヒール!!」


「我々も治療するわよ! ――ディバイン・ヒール」


「――キュアライト」


「――ホーリーキュアァッ!」


 リーファや周囲の回復役ヒーラー達が咄嗟に回復及び治療魔法を詠唱する。

 だが今の一撃で三十人を超える仲間が即死状態になった。

 それでも四十人以上の負傷者を回復及び治療する事になんとか成功した。


 しかし現時点で約250人の味方部隊のうち、

 七十人名近くが即死状態、負傷者は五十人以上。

 単純計算で残された戦力は約130人程。


『これは非常にマズい状況ね。

 戦死者や負傷者の数が多すぎるわ。

 このままでは後、三十分程で部隊も維持出来なくなるわ』


『そうね、リーファさんの言うとおりね。

 我慢比べじゃこちらに勝ち目はないわ』


『お嬢様、グレイス王女殿下! 敵の追撃が来ます!!」


 リーファとグレイス王女が戸惑う中、アストロスが冷静にそう告げた。


「まだこれからだ、死ねい、小さき者どもよ!

 グオォォォォォォォォォッッ!!」


 聖龍ラグナールは耳をつんざくような雄叫びを上げながら、

 その大きな尻尾を横一直線に振るった。


『グレイス王女殿下、アストロス、エイシルはジャンプして回避で!

 獣人のジェインとロミーナは地に伏せて回避するのよ!』


『分かったわ』『『はい』』


『分かったワン』『了解だわさ!』


 リーファ達は華麗にジャンプして、

 あるいは地に伏せて、尻尾攻撃テイル・アタックを見事に回避する。

 だがその余波で巻き上げられた土塊どかいが連合軍の兵士達を襲った。


『くっ、皆、私の後ろに回って頂戴』


 リーファは左手に構えた『幻魔げんまの盾』で、

 飛び交う土塊を次々と弾いていった。

 そのおかげで彼女の盟友やグレイス王女達もほぼ無傷であったが、

 それ以外の兵士や魔導師は、

 まともに土塊を受けて、その場に倒れるこむ者が一定数居た。


『……駄目だわ、このままじゃ嬲り殺しにされるわ』


『リーファさん、こちらも反撃しましょう!』


 「耳錠の魔道具(イヤリング・デバイス)」越しに通話する二人。

 するとその時、彼女等の会話に割って入る声が聞こえてきた。


戦乙女ヴァルキュリア殿、オレだ、ジョンソンだ』


 声の主はあの猫族ニャーマン狙撃手スナイパーであった。


『ジョンソン、ちゃんと聞こえているわよ。

 ……それで何の用かしら?』


『このままではあの巨竜に全滅させられかねん。

 だからアンタと王女殿下で協力して、

 あの巨竜を一分、いや三分ほど足止めしてもらえないか?』


『……そうね、その後はどうするつもりなの?』


『初期の計画通りにオレの狙撃で奴の足を狙い撃つよ。

 あの巨体だ、一度崩れたらその後は脆い筈だ』


『了解したわ。 ……王女殿下も聞こえましたか?』


『ええ、ちゃんと聞こえたわ。

 ここは彼の言うとおりに私とアナタで協力するべきね』


『はい』


 グレイス王女の言葉に頷くリーファ。

 

『リーファさん、ここは魔法攻撃で相手の侵攻を食い止めるわよ。

 まずは魔法力向上の職業能力ジョブ・アビリティを発動。

 そしたら私が電撃魔法を放つから、アナタは光属性魔法をお願い!』


『了解しました』


 二人はそう言葉を交わし、決意を固める。

 その時、近くに居たエイシルも会話に参加してきた。


『リーファさん、グレイス王女殿下。

 ボクも魔法攻撃に参加して宜しいでしょうか?』


『エイシル、そうね。 アナタが加わるのは心強いわ』


『私もリーファさんと同意見よ』


『……ありがとうございます。

 ではスキル及び職業能力ジョブ・アビリティを発動します。

 ――魔力覚醒っ!!』


『同じく魔力覚醒っ!!』


『それじゃ私も……魔力覚醒っ!!』


 三人揃って職業能力ジョブ・アビリティ・『魔力覚醒』を発動。

 それによってリーファ達の私の魔力と攻撃魔力が一気に倍増して、

 彼女等の周囲が目映い光で覆われた。


 その間にも聖龍ラグナールが一歩ずつ、

 大地を踏みしめてこちらに向かって来る。


 ――大丈夫、私なら……私達ならやれる!

 ――だからここは自分を、仲間を信じるわ。


 そう思いながらリーファは、

 口を真一文字に引き結んだまま、双眸を細めて前方を見据えた。


 勝てば英雄えいゆう

 負ければ死あるのみ。

 そしてこのレイドバトルは更に苛烈さを増して行こうとしていた。



次回の更新は2023年9月24日(日)の予定です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 ジョンソン、活躍なるか? ここで活躍したら、盟友にスカウトされる可能性もありますね。 人・エルフ・犬・兎は、揃っていますし。 いないのは、猫だけ。 魔族は───まだ…
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