表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

113/341

第百十二話 激闘のリターン・マッチ(後編)



---主人公視点---



 さてどうしたものかしら?

 お互いに強化系能力きょうかけいアビリティが消えた状態。

 でも私には『魔力覚醒』が残っている。


 『魔力覚醒』と『速射』を重ねがけすれば、

 中間距離でも近接距離でもこちらが有利になるわ。


「リーファ殿」


 不意に守護聖獣のランディが話掛けてきた。

 ランディから話掛けてくるなんて少し珍しいわね。

 でもこの場は彼の言葉に耳を傾けみよう。


「『魔力覚醒』と『速射』を発動させたら、

 『予測眼よそくがん』を使ってみるといいぞ」


「……成る程、『予測眼』かあ~。

 あれを使えば相手の動きを予測出来るよね?」


「ああ、但し予測出来る時間は三十秒のみ。

 そして蓄積時間チャージ・タイムは三十分。

 だからここぞという時に使うべきだ」


「そうね……」


 三十秒だけか。

 でも確かにある種の反則技チートスキルだからね。

 だからある程度の制限は仕方ないわね。


「――魔力覚醒っ!!」


 そこで私は職業能力ジョブ・アビリティ「魔力覚醒」を発動。

 これによって私の魔法能力が倍になった。


「――『速射』っ!!」


 私は更に『速射』を発動させた。

 このスキルの効果時間は約五分。

 既に五分以上戦っているから、

 残り五分間の戦いが勝負の分かれ目になりそうね。


 まずは中間距離で魔法攻撃。

 そして相手が接近して来たら、『予測眼』を発動。

 そこで職業能力ジョブ・アビリティ『ゾディアック・フォース』を使う。


 そこから『掌底打ち』か、『正拳突き』で、

 ラングの胸部か、顎を強打すれば相手の動きは止まるでしょう。

 その止めに聖王級せいおうきゅう剣技ソード・スキル「ダブル・デルタスラッシュ』で相手の急所を切り裂く。


 これが私が導き出した勝利の方程式。

 うん、悪くない狙いと思うわ。

 でもラングもまだ奥の手を一つか、二つかは残しているでしょう。


 とりあえずこちらは光属性で攻撃しましょう。

 この狭い空間で炎属性を使うのは少々危険だわ。


「我は汝、汝は我! 聖なる大地ハイルローガンよ。 

 我に力を与えたまえ! 『スターライト』ッ!!」


 私が呪文を唱えるなり、左手に眩く輝いた光の波動が生じた。

 そこで私は左手を前方に突き出して、光の波動を放射する。

 上級の光属性攻撃魔法。


 「ソウル・リンク」や能力の重ね掛けで強化された一撃。

 これが決まれば勝負は一気に決まる。

 だがそうは簡単にはいかなかった。


「フンッ……甘いわっ! ――リフレクター発動っ!!」


 ラングはそう叫びながら、素早く左手で印を結んだ。

 すると私が放った光の波動が見えない何かに弾かれた。

 そして近くの岩壁に衝突して、

 「どおおん」という爆音と共に周りが激しく揺れた。


「魔法を弾いたの? いや弾くというより反射ね」


「舐めるなよ、小娘っ! 

 この俺を本気にさせた事を後悔させてやる!」


 ……反射系の防御結界か。

 これは厄介だわ、中距離の魔法攻撃じゃ全部反射されるわ。

 これだと迂闊に魔法攻撃を仕掛けない方がいいわね。

 私のその姿をみて、眼前の男は口の端を持ち上げた。


「大方、中距離で魔法戦を挑むつもりだろう。

 だがそれは前回の戦いでも使用した戦術。

 この俺に同じ手が何度も通用すると思うなよ!

 見せてやろう、このラングの底力を! 

 ハアアアァァッ!! 『ラスト・バーサク』ッ!!」


「なっ!?」


 ラングの闘気オーラが一気に跳ね上がったわ。

 恐らく何らしかのスキルか、能力アビリティね。


「リーファ殿、気をつけろ!

 奴の力と敏捷性が一気に跳ね上がった。

 だがその代わりに耐久力と魔法防御力は低下したようだ」


 と、ランディが叫んだ。


「成る程、一撃必殺の奥義というわけね」


「リーファ殿、来るぞっ!」


「死ねい、戦乙女ヴァルキュリアッ!!」


 ラングは全速力で地を蹴り、突撃してきた。

 は、早い。 何という踏み込みの早さ。

 どうする? 距離を取る? それとも迎え撃つ?


「リーファ殿、背中の『幻魔げんまの盾』を使うのだ!!」


 そうね、ここはランディの言うとおり『幻魔げんまの盾』を使いましょう。

 私は左手を背中に伸ばして、『幻魔げんまの盾』を掴んだ。


「これで終わりだっ! ――ファイナル・スパイクッ!!」


 ラングはそう技名を叫んで、

 上半身をひねって、漆黒の戦斧を斜め上から振り下ろしてきた。

 それと同時に私は左手に持った『幻魔げんまの盾』を前へ突き出した。


「ガキンッ!!」


 硬質な音が響き、強烈な衝撃が私の左手を襲う。

 だがそれと同時に「幻魔の盾」が相手の魔力を吸った。

 そのおかげでラングのスキルの威力もある程度半減出来たけど――


「ううっ……うわぁっ!!」


 だがラングの渾身の一撃は、

 「幻魔の盾」を持ってしても完全に防げなかった。

 気が付けば私は後方に十メーレル(約十メートル)程、吹っ飛んでいた。


 そのまま吹き飛ばされ、

 何度も地面を転がり身体中を打ち付ける。

 だがそれでも両手に持った聖剣と「幻魔の盾」は手放さなかった。


 地面を転がった衝撃で私はしばらく身動き出来なかった。

 それと同時にラングがこちらに歩み寄って来た。

 まずいわ、このままじゃ殺されてしまう。


「そのまま死ねい! ――レイジング・スパイクッ!!」


「くっ!?」


 私は地面を転がりながら、

 紙一重の差でラングの戦斧から逃げ失せた。

 次の瞬間、ラングの戦斧が大きな音を立てるなり、

 地面が陥没し、大きな穴がぽっかり開いた。


 ……あれを喰らっていたら死んでいたわね。

 やはりこの男の力はとんでもないわ。


 私はそう思いながら、

 脚甲ソルレットの底をしっかりと地につけて起き上がった。

 だ、駄目だわ。 まだ軽い目眩がするわ。


「しゃらくさいっ! 今度こそ殺して――」


「――ライトボール」


 私は身体がふらつくなか、

 「幻魔の盾」を地面に投げ捨てて、

 左手を前に出して、初級光属性魔法を放つ。


 威力は最小限、その代わり速度は最高速度に設定。

 そしてラングの顔に命中させる前に、

 放出した光の球を空中で飛散させた。


「な、なっ……め、眼が、眼が眩む!!」


 近距離で光を浴びたラングが左手で顔を覆う。

 どうやら上手く行ったわね。

 この好機を逃す手はないわ。


「――貰ったァ!!」


「ぬおおおおっ……クソッタレッ!!」


「う、うぐっ!?」


 私が斬りかかろうとした矢先に、

 ラングが左手を前方に突き出した。

 それが運悪く私の顎の先端(チン)に命中。


 結果的にカウンターパンチとなったその一撃を受けて、

 私は後ろに数歩よろめいた。

 なんて奴なの。 女性を素手で殴ったわ。


 ……なんて文句は言えないわ。

 これは戦いですからね。

 でもそのおかげで口の中を切ったわ。


 まあ歯が折れなかったのは不幸中の幸いね。

 なかなか良いパンチだったわ。

 良くも悪くも男女平等のパンチね。


「リーファ殿、大丈夫か!?」


「ランディ、大丈夫よ」


「そうか、ならばこのまま戦えますな?」


 私はランディの言葉に無言で頷いた。

 そして左手の甲で口元を拭う。

 ……やはり此奴こいつは油断出来ない相手ね。


 だからここからは慎重に戦うわ。

 でも乙女を殴った代償は必ず払わせてやるわ。

 そして私は両手で聖剣の柄を強く握りしめた。


 

次回の更新は2023年8月27日(日)の予定です。


ブックマーク、感想や評価はとても励みになるので、

お気に召したらポチっとお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

宜しければこちらの作品も読んでください!

黄昏のウェルガリア
― 新着の感想 ―
[一言] まだまだラング将軍の戦いが終わりませんね。  リーファも力を尽きかけていますが、向こうも同じです。しかし精神力はラング将軍のほうが上だから油断できません。  ではまた。
[一言] 更新お疲れ様です。 カウンターパンチがリーファに命中。 ですが、普通のパンチでよかったかもしれませんね。 これが何かのスキルだったら... 一進一退の攻防であるラング戦。どう決着が付く…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ