第百十話 激闘のリターン・マッチ(前編)
---三人称視点---
お互いに「ソウル・リンク」を発動。
次に行うのは相手の分析。
この辺は戦いの基本戦術だ。
そして二人は守護聖獣に相手の能力値の分析を命じた。
「ライオネル、分析せよっ!」
「御意。 ――分析開始!」
「ランディ、分析よ!」
「了解した、分析開始っ!」
しばしの間、周囲が静寂に包まれた。
そして互いの守護聖獣が分析を終えた。
「リーファ殿、分析を終えました」
次の瞬間、リーファと守護聖獣ランディの意識が共有化された。
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名前:ヴィクトール・ラング
種族:ヒューマン♂
職業:狂戦士レベル56
能力値
力 :2775/10000
耐久力 :2375/10000
器用さ :1020/10000
敏捷 :1980/10000
知力 :842/10000
魔力 :1038/10000
攻撃魔力:904/10000
回復魔力:587/10000
※「強化薬」と「ソウル・リンク」で能力値強化中
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「……気のせいかしら?
前回より数値が上がっている気がするわ」
「リーファ殿、気のせいではないぞ。
前よりレベルが二ほど上がっている。
身体能力に関しては流石というべきだ」
「成る程、レベル二の分だけ仲間を倒したという訳ね」
「……そうだな、リーファ殿。 とりあえず落ち着くのだ」
「うん、分かっているわ。 私は冷静よ」
一方のラングの守護聖獣ライオネルも分析結果を主に報告する。
「ラング殿、相手も少しばかり成長したようだ。
兎に角、油断は禁物だ。 細心の注意を払ってくだされ」
「ほう、どれどれ……」
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名前:リーファ・フォルナイゼン
種族:ヒューマン♀
職業:戦乙女レベル41
能力値
力 :1465/10000
耐久力 :2250/10000
器用さ :1015/10000
敏捷 :1712/10000
知力 :2340/10000
魔力 :3796/10000
攻撃魔力:2415/10000
回復魔力:2312/10000
※「ソウル・リンク」で能力値強化中
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「ほう、相変わらず凄い能力値だ。
これは今のうちに叩き潰さんと、
後で手に負えないようになるな」
そう言ってラングは漆黒の斧を両手で構えて、腰をどっしりと落とす。
お互いに武器を構えながら、摺り足で距離を取る。
そこでリーファが職業能力・『能力覚醒』を発動。
「『能力覚醒』っ!!」
するとリーファの周囲が目映い光で覆われた。
これで五分間、リーファの能力値の数値が倍となった。
「そう来るのは分かっていた。
ならばこちらも強化系の能力を使うまでだ!」
いきり立つラング。
だが守護聖獣ライオネルがラングに忠告する。
「ラング殿、現時点で貴方は「火蜥蜴の心臓」で
血圧と体温が上昇しているので、
この状態で『バイオレンス・マインド』を使うのは危険です」
「……そうだったな、ならば『龍の鼓動』ばどうだ?」
「それならば何とか耐えれるでしょう。
ですが能力を発動させたら、
血圧や体温の上昇には充分に気をつけてください。
度重なる連戦でラング殿の身体が限界に近づいてます」
「うむ、無論それは理解している」
「……くれぐれもご無理をなさらずに」
「ライオネル、気遣い感謝する。
だが俺は将軍であると同時に一人の帝国人。
故に祖国の危機を救う為ならば、この命など惜しまぬ!
――では行くぞっ! 『龍の鼓動』っ!!」
ラングは大きな声でそう叫んだ。
すると次の瞬間には、ラングの身体が鋭く研磨された闘気に覆われた。
職業能力『龍の鼓動』によって、
ラングの力と耐久力と敏捷性、
そして魔法防御力が一時的に大幅に強化された。
「ふふふ、これで……うっ!?」
思わず立ちくらみするラング。
どうやらライオネルの忠告通り肉体の限界が近いようだ。
だがラングは残された余力を振り絞って、正気を保つ。
「……俺は引かぬ、絶対に引かぬ。
そしてこの手で戦乙女を倒してみせる!」
ラングは自分に言い聞かせるようにそう叫んだ。
そして両手に持った漆黒の戦斧の柄を強く握りしめる。
対するリーファも聖剣を構えながら、摺り足で間合いを取る。
――これで相手も強化されたわ。
――でもラング将軍も限界は近いはず。
――だからここは焦らずじっくり様子を見るわ。
---主人公視点---
さてここからはどうしよう。
前回の戦いでは中距離及び遠距離からの魔法攻撃で攻めたけど、
今の私ならば接近戦でも勝機はある筈。
とはいえラングの底力は侮れないわ。
褒めたくないけど、ラングの闘志や闘争心は、
今まで戦った相手の中でも一番だと思うわ。
ならば更に強化能力、強化技を使うべきね。
長期戦を見据えたら「魔力覚醒」は温存すべきだわ。
となればここは『戦乙女の祝福』を使いましょう。
「女神サーラよ、我に祝福を与えたまえ!
――『戦乙女の祝福』っ!!」
私が強化技を発動すると、
目映い光が私の身体に降り注がれた。
これで私の力と耐久力、敏捷性の能力値は強化されたわ。
更には『自動再生』の効果も発動。
後、使うとするならば『速射』ね。
でも最初は魔法戦でなく、接近戦で挑もう。
だから『速射』も今は温存するわ。
そして新たに覚えた帝王級の職業能力の『ゾディアック・フォース』。
これを発動させて剣技及び魔法攻撃を仕掛けたら、、
ラング相手でも一撃で倒す事が可能でしょう。
でもやるなら一撃で決めないとね。
ラング程の相手には二度同じ手は通じない。
だから『ゾディアック・フォース』を使うのは最後の手。
また相手が前回のように状態異常攻撃を仕掛けてくる可能があるから、
『メディカル・リムーバー』も温存しておきたいところね。
そして隙あれば、『戦乙女の波動』を使って、
相手の強化技や『ソウル・リンク』を解除する。
まあとはいえラングもその辺は警戒して来るでしょう。
それに相手も新しい能力や技を覚えている可能性もあるわ。
またラングもある程度は念動系魔法が使えるわ。
その辺を最大限に警戒すべきね。
その事を頭に良く入れて戦うべきだわ。
……恐らく厳しい戦いになるでしょう。
でもこの場でラングと互角以上に戦えるのは私だけ。
だからここは私心を捨てて、この野蛮人と戦うわ。
私はそう思いながら、口を真一文字に結ぶ。
「どうした、来ないのか?」
「……」
「ふん、まあ良かろう。
ならばこちらから仕掛けるまでだ。
戦乙女よ、この右眼の恨みをこの場で晴らせてもらう!」
ラングはそう言って両手で漆黒の戦斧の柄を握りながら、
全力で地を蹴って、こちらに向かって来た。
……さあ、ここからは我慢比べよ。
でも私は負けない、負けるわけにはいかないのよ。
だから私はこの男に勝たねばならない。
私はそう思いながら、
戦乙女の剣を構えながら、地を蹴りラングを迎え撃った。
次回の更新は2023年8月23日(水)の予定です。
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