何時か見た白昼夢
昨晩の夢は霧散してしまった。
これは、まだ私が少年だった時、微睡みの中で見たであろう白昼夢
ふと、目が醒めた。
室内には、経を読むような男性の声が響いている。未だ朦朧とした意識では、思考が纏まらない。
顔を上げれば、大窓から差し込んでいる朱色の西日が眩しい。
目を細めつつ周囲を見渡すと、そこには、大量の机とそれに向い黒色髪の少年少女たちが座っている......前方には薄くなった頭が目立つ中年の男性と、数字英字混ざりの文字の羅列が視認できた。
どうやら、数学の授業中に眠ってしまっていたらしい...以前にも似たような事があった気がする....が、定かでは無い。ひどく胡乱だ。
取り敢えず、シャープペンシルを...
ぐわあぁぁん
視界が歪み、世界が廻る。寝起きの愚鈍な脳に、鈍く重い痛みが走った。
顔を上げるとすらままならず、私は再度机に突っ伏した。教室中に未だ響く教諭の声が受痛を助長する...ように思える。
うるさい、痛い、いたい、煩い、五月蠅い....
あゝ、何とも耐えがたい、頭痛である、しかしこれが初めてと云うわけではなかった。どうも、三ヶ月に一回くらいの割合でこのような痛みに襲われる。
痛みに耐えつつ、制服の右ポケット、普段から文庫本やらボールペン何かを入れている方、から縦長のプラスチックの板を抜き出した。
板には潰れた凸凹が7つと、未だ原型をとどめ、中に白色の楕円形の粒のある凸が1つ。
世に云う、PTP包装シートと云う奴だ。...しかし、最後の一粒だったか...
錠剤は喉の奥に溶けてゆく。妙に甘ったるい風味が口の中に広がる。それと同時に眠気も襲ってきた。あぁ....
重い頭を上げ瞬きをする。何分経ったのだろうか?頭痛は消えていた。
どうやら、未だ授業は続いている様だ。黒板の前には教諭が....いや、待て...教諭?何だ?アレは?
教諭がいるであろう場所には、何やら鉄屑の塊が悪戯書きのように人型を成したモノが立っている。
周りを見渡すとクラスメイトも同じような鉄屑になっていた。生理的嫌悪感を覚える。
「********」
戸惑う、私をさて置き、鉄屑が何やら音を発した。黒板に五寸釘を擦り付けたような不愉快な音だった。頭の奥に鈍く響く。あぁ...
ぐわぁぁぁん
視界が歪み、世界が廻る。酷い目眩を伴い、鈍痛が頭に響く。
あゝ、だめだ...座っていることすらままならない...
はて、あれは天井か...内部と外部から頭が痛む。どうやら倒れてしまったようだ。
顔を上げると、あの鉄屑共が一斉に此方を向いた。
「*********」
「***」
「***************」
何やら口を開きながら、どんどん近づいてくる。やめろ、近寄るな。
ぐわぁぁぁん
やめろ口を開くな。
五月蝿い
ぐわぁぁぁん
やめろ近付くな。
そんな姿を見せるな
ぐわぁぁぁん
ぐわぁぁぁん
———暗転
ふと、目が醒めた。
室内には、経を読むような男性の声が響いている。未だ朦朧とした意識では、思考が纏まらない。
顔を上げれば、大窓から差し込んでいる朱色の西日が眩しい。
目を細めつつ周囲を見渡すと、そこには、大量の机とそれに向い黒色髪の少年少女たちが座っている......前方には薄くなった頭が目立つ中年の男性と、数字英字混ざりの文字の羅列が視認できた。
どうやら、数学の授業中に眠ってしまっていたらしい...以前にも似たような事があった気がする....が、定かでは無い。ひどく胡乱だ。
取り敢えず、シャープペンシルを...
ぐわあぁぁん
視界が歪み、世界が廻る。寝起きの愚鈍な脳に、鈍く重い痛みが走った。
顔を上げるとすらままならず、私は再度机に突っ伏した。教室中に未だ響く教諭の声が受痛を助長する...ように思える。
うるさい、痛い、いたい、煩い、五月蠅い....
あゝ、何とも耐えがたい、頭痛である、しかしこれが初めてと云うわけではなかった。どうも、三ヶ月に一回くらいの割合でこのような痛みに襲われる。
痛みに耐えつつ、制服の右ポケット、...はて、以前にも、全く同じようなことがあってように思える。確か、この後錠剤を取り出して....いや、きっと気のせいか...
こんな、ありもしない妄想もきっとこの頭痛のせいだ。
ぐわぁぁぁん
...お読み頂き有難う御座います。
本日は、昨晩の夢が用意出来ないと云うことでしたので、代替策として懐かしい記憶の断片の縫い合わせを此処に書きました。
其れでは又、ごゆるりと。