8/8〜8/9
心地よい夢だった。
はて、これで何度目だろうか…。
…理由はわからないが、私は自殺しようとカプセル錠剤を口に含み飲み下した。一分もしないうちに強烈な眠気に襲われ、ソファに突っ伏した。この上ない快楽と共に意識が沈んでゆく…
———暗転
視界に映るは、実家近くの街並みであった。日の暮れかかった曇天の下、車通りの全く無い車道に、私は立っていた。
私がこの世界で死ぬには、此処で「証」を大量に集めなくてはいけない。「証」は様々な商品などについているマークである。ベルマークの様な物と云えば分かりやすいだろう。
少なくとも、数千個の「証」を集めなくてはならないことは分かっていた。これは中々大変だなぁ、と思ったが、別に私が集める必要も無いのだ。
私は道ゆく人々に「証」を集めるように頼み、同じ内容を知り合いや見かけた人に云うようにお願いした。云ってしまえば、鼠講作戦であった。一人三つ集めるとしても、すぐに終わるな、と確信した。
まぁ私も働く気が無いわけではない。近くのコンビニで「証」を探すことにした。
色々探してみれば、何かと細長い商品に多くついていることに気がついた。ボールペン、チョコミントポッキー、五百ミリリットルのビール缶に付いていた。
それから数分探索していると、もう良いかな、と思うようになった。どうやら規定数集め終わったらしい。実家に取り敢えず帰宅しよう。
キッチンにいた両親に集まった「証」を見せると、少々困惑しつつも、喜んでいた。あゝ、これでクリアだな、と確信した。事実私の右手にはいつの間にか錠剤が握られていた。
他愛も無い会話の後、おやすみ、と両親に告げると、錠剤を口に含み、自室へ戻る。体に薬が溶けてゆくのを感じつつ、目を閉じた。
———意識を伴った暗転
重い頭を持ち上げると、私は何処か和風の旅館にいた。未だ眠気が凄く、死に損なったか、と私は思った。
実際、命の灯火が消える瞬間のあの快楽は訪れていなかった。その代わり、ほろ酔いのような僅かな心地よさが私を包んでいる…気がする。
それはそうと、此処では何をするべきなのだろうか。考えていると、脳裏に死ぬ瞬間の自分自身の映像が流れた。それと同時に、なんとも云えない刺激を感じた。ホッと一息。
視界を上げれば、数人の人達が机を囲っていた。中には私の両親も見える。夕食のようだ、急いで向かわねば…。
夕食は、自宅ではまず味わえない海鮮物が主の懐石料理であった。舌鼓打ちつつ酒を呷る。他の人の話題に当たり障りなく入りつつ、冗談を交えて、わたしゃ死に損ないの青年よ、と云った。
それに対して、母が、あんま笑えない冗談やな、と返してきた。周りも苦笑していた。眠気が深まった。
ふと、自分の料理を見てみれば、そこにはカクテルグラスが置いてあった。カクテルなどと云うオサレなものを頼んだ覚えは無かったのだが…。と思っていれば、母がそのグラスに味噌汁を注いできた。お麩と蟹の身と和布が山になってグラスに盛り付けられた。凄いシュールだった。
そんな傍ら、父は、私の執筆用のメモ帳を一人読んでいた。メモを覗き込むと「八宝金鶏菊」と云う文字列に下線が引かれていた。
と云う所で
———目が醒めた。
.......お読み頂き有難う御座います。
別に自殺癖とか全く無いんですけどねぇ
どうして、こんな夢見たんでしょうか…。
それでは、また、ごゆるりと