8/7〜8/8
最近、夢の中ではっきりと文字の認識が出来るようになってきた。良い事だ。
排気ガスと工業用油の咽せ返るような臭気が充満する駅のホームに。私は居た。若者たちの喧騒の中、清涼飲料水のロゴの入った金属パイプ製のベンチに腰掛け、膝上のの本を読み進めていた。天井にある蛍光灯は点滅を繰り返し、今にも途切れそうだ。その燈は心許無く、専ら、差し込む淡い橙色の西日のみが構内の暗がりを照らしていた。
私はふと、今から来るであろう列車の到着時刻と発信方向が気になった。自分のいるホームがこちら側で良かったのか心配になったのだ。
手元にあった路線図と時刻表を合わせたような図表を見る。此処に色々描いてある確信があった。
様々な文字が並ぶ中、「百目粒」と「二蛤坪」と云う文字列が目に留まった。座っているこのベンチのちょうど上にある電光掲示板に「二蛤坪」と書かれていたのを思い出した。実際見てみればそう書いてあった。
そして、「百目粒」は私から(路線を)見て右手の奥の掲示板に書き記されていた。
つまり、手元の図には「二蛤坪」「百目粒」の順にあることから鑑みて、列車もその順に通るのだろう。
したがって、列車は左から右へと来るという事で有る、と一人納得し、安心していた。
数刻後、列車が辿り着いた。発車方向は両方のホームも同じく左から右であった。…私は何を悩んでいたのだろうと思った。
場面転換
高校時代の回想に近かった。
放課後であった。普段なら早く帰る(当時は帰宅部代表と云われていた。)所であるが、尿意を感じたので、トイレへ向かった。個室に入る前、荷物を地に置きコートを脱ぐ。脱いだコートを畳もうとするが上手くいかなかった。結構時間がかかった気がした。
何やかんや、用を足し終わり、時計を確認してみれば、五時十五分の表示、放課時間は五時であったから十五分もロスしてしまったようだ。今更急いで帰るのも阿呆らしいな、と思い、重い荷物(当時から全ての道具を手提げ鞄に入れていた。)を引き摺りながら、帰路に着く。
道中、視界に映る教室(何故か此処だけ見た目が小学校の教室でった。)には大勢の、多分私以外全員のクラスメイトが机をくっ付けて、各々が自習をしていた。
一応進学校を謳っていた私立高校であったから、これが模範的な行動であったが、ここまで皆が残っていることは稀であった。
中学から仲の良かった同級生が、あれ今日は遅いのな、と聞いてきた。
私は、まぁ何処まで力入れて早く帰っているわけではないからね、もう何か一生懸命努力することが莫迦莫迦しく思えてね…、と答えた。それは私の紛れのない本心であった。
階段を降り、昇降口へ向かう。一階の廊下にて、多くの荷物を背負った先程の同級生が立っていた。あゝ、貴方ももう帰るのね、と私は云った。彼は、いやこれから部活だよ、と返答していた。それから他愛もない会話をした後別れを告げた。
下駄箱にて、靴を変え外に出る。玄関前に数人の男子生徒が屯していた。よく見れば、小学生時代のクラスメイトのようであった。
私は、特に意に介すことなく二本の傘をカッコつけて逆持ちし、駐車場へと全力疾走した。所々ジャンプしたり、腰を屈めたりと、それなりにスタイリッシュであったと思う。ただ走っている途中で傘の一本が他人のもので有ることに気がついた。まぁいいやと思った。
.......お読み頂き有難う御座います。
地方出身の身としては、電車に乗ること自体が珍しいことだったんです。
初めて、人混みの中駅のホームに立っていたあの時の不安感と焦燥感をまた味わう事になるとは…。
それでは、また、ごゆるりと




