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6/28〜6/29

...あの怪しい街の輝きが今でも脳裏に焼き付いている。

あぁ、もう忘れることはないだろう。


 部屋の茶の間にて、机に向かってぼーっとしていたら親がやって来て、何かしろと云ってきた。逆らうことはできないので、しょうがなくiPadで横スクロールのアクションゲームをする事にした。

 最初表示されたステージは1-3であったが(残機稼ぎをやっていた。)、親に見せるには些か分不相応なので6面に移動した。

 ステージを選択し、ゲームを開始した瞬間、敵キャラがかなりの速度で突っ込んできて、ゲームオーバー...これは酷い。

 数分間コンティニューを繰り返した後、なんとか『?』ブロックを開き木葉のアイテムを入手できた。操作キャラクタに狸の尻尾が生えると、そのまま、土管で隠しエリアへ移動した。レンガで囲まれた狭い空間である。狸の尾で目の前の一個だけ飛び出ていたレンガを攻撃。そのレンガは巨大化した。そのおかげで透過できるようになり、隠されていた土管入り星の金貨を入手。謎のファンファーレが流れた...気がする。

 土管から出ると、其処は湖に隣接した湿地帯であった。時刻は夕暮れ、であったのだが湖の対岸は既に暗く、高くそびえ建つホテルや民宿には人工の燈が煌めいている。

 取り敢えず、散歩しようと思った。茜色に染まり沈みゆく夕陽が綺麗であったので写真に収める事にした。その場に屈み湖を仰ぎ見るようにしてカメラを構え、シャッターを切る。中々いいものが撮れた。さて、道なりに進む事にするか。畦のような道をのんびりと歩いて行く。

 道の真ん中に、一株の大きな草本が生えているのが目に留まる。1.5mは有るであろう茎に、ヴァイオレットの花を多数咲かせている。花弁は6~8枚位で半数以上が萎びていた。花の他に白い粒状の実がなっている、青臭い香りがした。見たことの無い種類の植物であったので、写真で記録を残す事にした。レンズキャップを外し、枯れかけている花を右下に位置するようにしてアングルを決める。......中々納得がいかない。

 あゝでも無い、こうでも無い、と悪戦苦闘している内に辺りが暗くなってきた。ふと通行人の気配を感じ、前方によけると、私の体は半ばその植物に埋もれてしまった。通りがかりの通行人に鼻で笑われ、あほくさ、と云われた。たまに話す知人の声だった…気がする。

 なんとか納得がいくアングルが決まり、一枚の写真を撮ったので、先に進むことにした。そこから5mくらい先まで歩いたところで、右足が沈む感覚を覚えた。足下を見ればぬかるみにはまっている。よくよく目をこらしてみてみるとほんの前方まで湿地が広がっており、来る者を拒んでいた。そっと足を引き抜いた。水がしみこみ不快だった。そこから行く当てもないので、ぼーっと時が過ぎるのを待っていた…のだと思う。多分。

 完全に日が堕ち、夜の帳が下りてくると、辺り一帯に仄かで小さな燈が点々と現れた。蛍光じみた緑黄色の煌は、水面の波に合わせて爛々と揺蕩っている。わずかに霧の立ちこめる朧月夜の下、煌玉の揺れる湿地はなんとも幻想的であった。

 丁度岸辺を漂っていた燈に近づき見てみると、其処には二種類の植物が輝き揺れていた。一つは水面上に浮かんでおり睡蓮のものに酷似した葉を持っている。もう一つは、岸辺の陸上で鈴蘭のような見た目で風に吹かれていた。両者とも発光している部位は同じように見える。球根のような形状の、硝子質の球体である。

 曇りつつ透明な燈をじぃっと覗き込む。中で何が輝いているのだろうか?蛍のようにユラユラと揺蕩うソレを正視していると、その実態を視認できた。

 嗚呼、これは、対岸の、煌爛たる、街の輝き。

 頭がぼぅとして、意識が途切れた。

 それから数分後、私は日光がさんさんと照らすアスファルトにてぼんやりと立ち尽くしていた。

 目線の先には、大きな人工物がある。目を擦り、再度見てみると、ソレがショッピングモールの類いであることが見て取れた。…空港のようにも思えた。

 下から仰ぎ見ると、最上階から二〜三階は特殊であることが分かった。構造が凹のようになっており、その窪みの所に数本の細長いパイプのようなものが通っている。どうやらこれで階層の行き来をするようだ。そして彼処が賭場であることを直感した。賭け事である。

 次の瞬間私は、その賭場にて賭け事をしていた。ゲームはルーレットのようなモノであった。円形の、自分と相手の陣地に分けた台にお互いの玉を転がす。そして自分の玉が相手の陣地に止まったら勝ちである。たくさん回る分だけ倍率が上がるらしい。

 ぐるぐる廻る玉と台を俯瞰する。私の目もぐるぐる廻る。世界が廻る。

 これはピザである。私は現在ピザの観察をしているのだ。具材はなく上にはチーズのみがのっている。きって手に取ってみるが、チーズは冷めているようで一切伸びずに途切れた。

 そんな様子をテレビで眺めていた。今現在はその研究をしていたという三人の青年がインタビューを承けている。曰く、自分たちの年の差は七歳らしい。いったい何を云っているのだろうと思ったがその時、何やら甲高い機械音が脳裏に響いた。

 其れは、私の目覚まし時計の音だった。体を起こした。

.....お読み頂き有難う御座います。

あの幻想的な湿地の風景は目を閉じればすぐ其処に...

ええ、では又、どうぞよしなに。

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