【挿絵付き】爆走する田植え機に轢かれて異世界に転生したのにキャラメイクが決まらな過ぎて全然旅立てない
ぼんやりとした視界が徐々にクリアになっていく
俺は何していたんだっけ?ああ…確か爆走する田植え機に轢かれて意識が無くなったんだ
ここは病院か?起き上がって周りを確認する。
どうやら中世の神殿のような場所に居るようだ。
「おいおい、病院じゃなくてあの世かよ」
苦笑交じりに呟く
田植え機に田植えされて死ぬってマヌケ過ぎるだろ
「あの世ではありませんよ」
俺の声に反応したのか金髪で背中に翼を生やした女性が部屋に入ってきて声をかけてきた
「あの世じゃない?アンタの姿はどう見ても天使だぜ」
「確かに私は超絶美少女ですが天使ではありません」
そんなこと言ってないんだが、めんどくさいので黙っておく
「私は超絶美少女天使ではなくて、超絶美少女賢者です!」
賢者はドヤ顔で腕を組みながら自己紹介した。うぜぇ
「自己紹介ありがとう賢者さん」
「超絶美少女賢者!」
うぜぇ
果てしなくうざいが俺も自己紹介するのが礼儀だ
「俺の名は…」
「あっ貴方の自己紹介は結構ですよ、私が呼んだんですから」
「俺を呼んだ?」
賢者は腕を大きく広げて語りだす
いちいちオーバーな振る舞いをするヤツだな
「この世界は今危機に瀕しています。魔王の復活を阻止するには異世界の勇者の力が必要なのです。」
異世界の勇者って俺のことだよな、すると俺は異世界に転生したってワケかよ
てかコイツが俺を呼んだってことは…
「田植え機爆走させて俺を轢いたのはお前かよ!!」
俺は激高して賢者に掴みかかろうとする
自称超絶美少女だが、実際はクラスのイケてない女子グループの中では上の方レベル程度なので遠慮はいらない
「スーパー翼バサバサアタック!」
「ぐぇっ!」
賢者のスーパー翼アタックを喰らい俺は3メートルほど吹っ飛ばされた
「いくら私が超絶美少女賢者だからっていきなり襲おうとしないで下さい、異世界の猿ごときが」
そういうつもりではなかったんだが…てか異世界の猿って…
もしかしてこの世界って異世界人めっちゃエグい差別されてる?
「『スーパー翼バサバサアタック』消費MP30 対象の相手にダメージを与え低確率で即死させる技です」
「今即死するとこだったのかよ!?」
打ち付けた尻を擦りながら俺はツッコんだが、賢者は意に返さず話を戻す。
「さぁ勇者よ、魔王の復活を阻止する旅に出るのです」
「無茶言うなよ、お前の方が俺より強いじゃねーか、お前が旅に出ろよ」
賢者は眼を細めてチッチッチと舌を鳴らした。うぜぇ
「旅に出る前に貴方のキャラメイクをしてもらいます」
キャラメイク?RPGでよくあるステータス振り分けのことか
「強さを1から10まで設定できます」
大雑把過ぎるだろ、攻撃力とか魔法力とかそういう項目はないのかよ
「じゃあ10で」
「強さ10だと魔王をデコピンで倒せるレベルです」
「チート過ぎだろ」
「ではキャラメイクが終わったことですし貴方を『始まりの草原』に飛ばします。ヒロインと仲良く魔王の復活を阻止して下さいね」
賢者が手を合わせると同時に俺の身体が光り輝いた。『始まりの草原』とやらに飛ばされるようだ
ヒロインってどんな娘なのかな、胸がデカい娘だといいな
少し邪な気持ちを浮かべながら俺は意識を手放した。
草の匂いと風が心地よい
どうやら俺は『始まりの草原』に転送されたようだ
「こんな所にいたんだ」
不意に呼びかけられ、声のした方を見る
なんだこのイカツイおっさんは…
モヒカンだし山賊の類かなにかか?
「一緒に魔王の復活を阻止する旅に出ようよ」
!?
こいつ…ヒロインかよ!?
俺は絶望し空に向けて叫んだ
「チェンジチェンジ!やり直しだ!!」
意識が再び遠のき、例の神殿に転送された
戻ってきた俺に賢者はダルそうに尋ねる
「私だって暇じゃないんですけどね、一体なにが不満だって言うんです?」
「不満大アリだろ!どこの世界におっさんと旅するRPGがあるんだ!!」
「渋いおっさんはRPGのパーティに付き物ですよ」
「ヒロインにはいねーだろ!」
賢者は大袈裟にため息を付く
「じゃあキャラメイクをやり直します?貴方のステータスは落ちますがヒロインは女性になりますよ」
「強く始めるとヒロインがおっさんになるの初めに言えよ!」
「私としたら魔王の復活を阻止出来れば何でも良かったのでそこの説明は省きました」
何言ってんだコイツ…
そこは一番重要な要素だろ
色々説明不足の賢者にイライラしたが、大人しくキャラメイクをやり直すことにする
チュートリアルが不親切って糞ゲーあるあるだな
「じゃあ強さは9にするよ」
「強さ9だとドラゴンをワンパンで倒せるくらいですが?」
「十分だ」
「それではキャラメイクが決まった所ですし、再び『始まりの草原』に転送しますね」
「まてまてまてまてまて」
賢者が手を合わせて転送呪文の詠唱に入った所を慌てて止める
「なんですか!暇じゃないんですよ私は」
「一応確認するけどヒロインは女なんだろうな?」
「おっさんですけど?」
「駄目じゃねーか!」
ステータス落とせばヒロインが女になるって言ってたよなコイツ
そもそもヒロインが女になるって言葉自体がおかしいけど
「ちなみにレベル5以上は男になります」
「半数以上男なのかよ!」
「もうレベル9で良いじゃないですか、レベル9のおっさんは髭が生えてませんよ」
「髭のあるなしじゃねんだよ!」
いくらドラゴンをワンパンで倒せるくらいになってもヒロインが少し小奇麗になったおっさんじゃやる気がでねぇ
俺は再度キャラメイクを要求した
「強さは4にすることにするよ」
「強さ4ですとスライムと戦ってギリギリ勝てるくらいのレベルになりますが?」
「一気に弱くなったな、まぁ後から強くなればいいしそれでいいよ」
「スライムは人間の眼が大好物で、生きたまま眼を吸い取ることをしてきますからね、スライムに勝てる程度の力は必要です」
「この世界のスライム怖っ!」
「では転送を…」
賢者は俺を転送させようとするが、再び止めに入る
「まて、ヒロインを事前に確認させてくれ」
心底めんどくさそうに賢者は答える
「しょうがないですねー暇じゃないんですからねー」
賢者は鏡を取り出して俺に見せた
微妙過ぎる…クラスで『お母さん』ってあだ名で呼ばれてそうだ
世界を救う道中で全然良い雰囲気にならなくて終わるやつだ
「やっぱレベル3にしようかな」
「はぁ!?高望みし過ぎです!鏡見たことあるんですかこの異世界猿が!!」
激怒する賢者をなんとか宥めてレベル3のヒロインを見せてもらう
レベル3だと野良犬と戦ってギリギリ負けるレベルらしいけど背に腹は代えられない
野良犬に出会ったら死を覚悟しよう
「どうです?異世界猿には勿体ないくらいの美女でしょ?」
「うーんなんというか派手すぎというか好みじゃないような…」
あとこの画像、インスタの画像で加工してあるよな
実際に会ったらもっと微妙そう
「童貞が…」
賢者がなにか呟いたが無視してレベル2のヒロインを所望する
「いいんですか?レベル2だとハムスターにボコられるレベルですよ」
転生前より弱くなるのがわけわからんが仕方ない
ハムスターに出会ったら死を覚悟しよう
うぉぉぉぉぉっ!!
可愛い!カワウィー!!
「この娘にするよ!黒髪でちょっと気が弱そうなのがドストライクだ」
「童貞が…」
賢者が心底蔑むような眼で見てくるが関係ない
俺はこの娘と一緒に運命の旅に出るんだ
ハムスターにボコられてもこの娘の腕に抱かれて死ぬなら本望だ
「じゃあ転送しますね」
賢者は手を合わせてお馴染みの転生呪文を唱える体制に入った
「ああ頼む」
「一応確認しますが、ハムスターにボコられる強さで良いんですね?」
「ああ構わない」
「ヒロインにそれぞれ親が違う子供が3人居ますが良いんですね?」
「良くない!」
慌てて俺は転送を取りやめさせた
「え?子供ってこの娘何歳よ?」
「17歳ですけど」
業が深すぎるだろ、3人種が違う子供が居るヒロインを受け入れるほど俺はデカい男じゃない
「レベル1にするよ!もうレベル1でいい」
「レベル1だと段差に躓いたら即死するレベルですが?」
階段上るだけで死を覚悟するレベルなのかよ
でもヒロインで絶対妥協したくない
「レベル1は子供いないヒロインなんだろうな?」
「子供いませんよ」
「前科とかもないよな?」
「あるワケないじゃないですか、レベル1はレベル2がショボイコソ泥に見えるレベルですよ」
そう言いながら賢者は鏡にレベル1のヒロインを映す。
「これお前じゃねーか!!」
無駄に背景がSSRみたいにキラキラしてて超絶うざい
「そうですけど?超絶美少女賢者に何かご不満が?」
賢者は何が不満なのか心底わからないというキョトン顔で答えた
「言っとくけどお前はクラスのイケてないグループの中で上位くらいのレベルなんだよ!」
「なんでそんなこと言うんですか!翼バサバサアタック!!」
「ぐぇっ!」
翼バサバサアタックを喰らった俺は神殿の壁をブチ破り300メートルくらい吹き飛ばされた
「あ…レベル1でしたね」
3時間後
俺は何度も死にそうな目に逢いながらも神殿に帰ってきた
寝転がってゲームをしていた賢者が俺に気づいて声をかける
コイツ暇じゃないと言いながらゲームしてんじゃねーか
「生きてたんですか」
「100回くらい死にそうになったわ!段差に気を付けながら歩くから3時間かかったぜこの野郎」
息も絶え絶えに賢者に悪態をつく
「レベル1じゃ最初の村にたどり着く前にお陀仏だ、流石にレベルを上げることにするよ」
「それならレベル5ぐらいにしますか?ゴブリンと戦って勝てるくらいの実力ですよ」
「レベル5以上だとヒロインが男になるんだろーが」
賢者は俺の反論を無視して鏡を見せてくる
野郎の顔なんて見る必要ないんだよ
話が変わってきた
「え?女じゃん」
「女です」
「レベル5以上は男って言ってなかったか?」
「モノがついてますが女です」
モノが付いてる時点で女って言えねーんだよ
っと思ったが、改めてヒロインになる娘?の顔をまじまじと見る
こんなに綺麗な顔しているのについてるのか…
俺は自然に溢れた生唾をごくりと飲み込んだ
「ま、まぁ…世界の危機だしこの娘?で我慢してやろうかな」
(うわぁこいつ変態ですね…)
こうして仕方なく男の娘をヒロインにした俺は異世界を救う旅に出ていった。
新連載『ヒロインの膝枕で寝たいのに後頭部になにか硬いモノが当たっていて全然寝付けないんですけど!?』のプロローグです(嘘
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