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理想郷の魔法使い〜最強の才能をもつ少年は戦う理由を探す〜  作者: SEN
第五章 第一級魔術師昇格試験
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二次試験ROUND1 その5

「試合終了!勝者、ウィザーズ!」


 ジーナの声とともに試合終了の文字がモニターに映し出され、生き残ったアルトたちも作戦室に転送された。


「さて、メイジさんとタイラーさん。今回の試合はどうだったかな?」

「ウィザーズが派手だった、って感じだな。最初のアルトはもちろんだが、ザックとシアンもベテラン相手に一対一でかなり余裕を持って勝ってる。情報が少なかったってのもあるが、まさかここまで一方的な試合を見ることになるとはな」


 メイジは椅子に深く座り、正直な感想を話した。本来二人で担当するはずの解説を一人でやり、試合展開が速く喋ることが多かったため疲れてしまったようだ。


「最初のアルトくんはヤバかったしねー。あんな大声出したの久々だよ」

「お前はいつもギャーギャーうるせぇだろ」

「やっと喋ったと思ったら酷いよタイラーさん!」


 解説を放棄したこともジーナへの無礼を詫びることもせず、タイラーはメイジに視線を移した。


「メイジ、お前あんまり褒めてないな」

「えっ、そうなの?」


 メイジの感想が褒めているように聞こえたジーナはタイラーの指摘に反応し、真意をメイジに尋ねた。メイジは椅子に深く座ったままこう語った。


「派手ではあったが、合理的とは思えなかった。特に最初のアルトの攻撃。四人一気に倒せたからいいが、もし全員生き残っていたら両チームからのヘイトを買って袋叩きにされてた可能性もある」

「あっ、たしかに。初見であれを避けろっていうのは無茶かもだけど、もしそうなったらウィザーズが負けてたかも」

「……もしこれがウィザーズのプロモーションビデオだとしたら満点だがな」

「え?どういうこと?」

「この衝撃はなかなか忘れられないってことだ」


 ジーナはメイジの言葉をあまり理解できなかったが、話はここまでという雰囲気を察して次の話題に移った。


「それでシャドウボウガンとサーベルタイガーだけど、まぁ、なんというか、ご愁傷様」

「俺も今回の負けは仕方ないと思う。むしろアルトが負けたら何しに来たんだテメェって殴りに行く」

(あのタイラーがここまで言うとは)


 タイラーのアルトの事を手厳しくも気にしている様子を見て、メイジは規格外な魔力をもつ少年に少しずつ興味を抱き始めていた。


「負けてもここで腐らず挑み続けてもらいたい。シャドウボウガンもサーベルタイガーも第二級魔術師の中でも確かな実力があるチームだからな。二、三試合目も残っているし、そこでしっかり強さを見せてほしい」

「そうだね。それじゃあROUND1第一試合はここまで!十五分後に第二試合が始まるからお楽しみにー」


 今回はまぁまぁ理不尽な状況でこっぴどくやられたので、メイジが丁寧に負けたチームへのカバーをした後、ジーナの締めの挨拶で第一試合は幕を閉じた。


 ほんの一分ちょっとで圧勝という衝撃的な試合の後、観客たちは興奮冷めやらぬ様子で試合の感想を夢中で話し込んでいる。かくいうジーナも直ぐに同僚の元まで走って行った。


 ○○○


「ROUND1はひとまず計画通りって感じかな」


 試合を終えたアルト達は、軽く軽食を食べながら今日の試合の反省と明日の試合について話し合っていた。


「ステージが草原だったのはラッキーだったね。遮蔽物がなかったからかなり当たったよ」

「そうだね。おかげでかなり派手な初戦を飾れたよ」


 アルト達は審査員からの評価点を稼ぐために注目度を高めようと「派手に勝つ」というのを目標にしていた。つまり、アルト達にとってこの試合はメイジの言っていた「ウィザーズのプロモーションビデオ」だったのだ。


「メイジさんには点数稼ぎだってバレたみたいだがな」


 メイジはアルト達レベルの実力者が力任せな試合運びをしたことが引っかかり、この点についても言及したのだ。


「構わないよ。それくらい余裕があるってアピールにもなるしね。それより次の試合だ」

「相手は今日の試合で勝ったチームだね。キルスコアが同じくらいのチームと優先的にマッチングするんだっけ?」


 キルスコアとは、それぞれのチームが何人敵を倒したかで決まるポイントだ。一人倒せば1ポイントで、今回の試合でのアルト達のキルスコアは6ポイントとなる。


「そうだね。つまり次の試合はこの試験でトップレベルの相手の可能性が高い」

「……カゲロウのいるところとかな」


 ザックは渋い顔をしながらそんな事を言った。ザックは今回の試合でベテランのオッサンを倒した事で、自分が強くなったという確信を深めたと共に、カゲロウの強さを改めて実感したのだ。


「十分にあるね。でも、試合は三つ巴だ。単純な一対一で負けてても勝ち筋はある」

「そうだよ。それに、ザックはいざという時頼りになるから、もしカゲロウとタイマンになったら今度は勝ってくれるって信じてるよ!」

「オイオイ、信頼が重いな」


 ザックはアルトからの信頼にすこし押されているが、満更でもなさそうに後頭部を掻いた。


「僕からの信頼よりは応えたいだろう?」

「お前は俺のことあんまり信頼してねぇだろ」

「心外だね。僕も君を仲間としてちゃんと信頼しているよ」

「うっわ、うさんくせ」

「まぁまぁ。ああ見えてシアンもちゃんとザックのこと信頼してると思うよ。そうじゃなきゃシアンは仲間に入れないって知ってるでしょ?」


 折角勝ったのにも関わらず口喧嘩を始めそうになった二人を、アルトがニコニコと笑いながら止める。アルトは二人の口喧嘩を見慣れすぎたせいでもはや微笑ましいとすら思うようになっていた。


「……ったく、お前もアルトみたいに素直だったらな」

「アハハ、そうしたらそうしたで君は気持ち悪いとか言うだろう?」

「だな。アルトくらい可愛くなってから出直せ」

「わっ、ちょっとザック〜、ほっぺたいじらないでよ〜」


 ザックは近くまで寄ってきていたアルトを抱き寄せ、ギュッと彼の柔らかい両頬を弄んだ。アルトは言葉とは裏腹に全く嫌がっている様子は無く、友達とのじゃれあいを楽しんでいるようだった。


 順調なスタートを切ったアルト達。勝利の熱に浮かされて、作戦室は和気あいあいとした空気に包まれていた。

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