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ブルーピーシーズ ~不思議な力が発現し子種や命を狙われ迷いの中で生きた僕の半生と関わる人々の生き方~  作者: 弧川ふき(元・ひのかみゆみ)
第四章 ケズレルモノ

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38-3

 一時休校にでもするのか? でもどのくらい? かなりの期間……。そんな話し合いの場になるのかもしれないし、映像を見せたり決まったことを伝えたりしたらすぐに帰らせるかもしれない。ここ・・にいたら危ないかもしれないから。

 学校の場所は奴らにバレた。でも、生徒や先生の住所はそれぞれまだバレてはいないかも。もしそうなら休校は多分いい手だ。接触される前に身を引いておくんだ、それなら被害は最小限。うん。極端だけどいい手というか、前例のないことだし、当然こうなる、かな。これしかない気はする。生徒の住所が書かれたどんな書類も、書類でない物も、先生達が持って帰ったりすれば完璧だ。

 それにしても。

 奴らは僕がどこにいるかってことに集中し過ぎてるのか? ここを襲ってはいない? まさか本当に組織そのものも狙って? そっち・・・に目が行ってるのか? ……分かんないな、学校近くにまだ潜んでいれば誰かを人質にしそうだけど。

 まあその場合、人質がどこの誰でも一緒か。僕らは対応するしかなくなる。それがないってことは……? くそっ、やっぱり組織の場所を知りたいのかな、どうなんだろう。

 ――自分の机に近付いている時にも、机の横のフックに掛けられた鞄を漁っている時にも、僕はそんなことを考えていた。

 机の横にまだ鞄が掛けられているということは、多分実千夏みちか達は戻ってくる、この教室に。あとで連絡を入れておこう、『自分で取りに来た』って。

 その鞄の側面にまだスマホがあった。まだ誰も預かってはいなかったらしい。

 鞄の中には財布も入ってる。財布の中にはクライミングジムのメンバーズカードが。そこから被害が広がったり住所がバレたりするのもけたい。初回は住所を何かの用紙に書いたはず。そこからバレそうだ。ありえないかもしれないけど注意しとかないと。

 鞄の中にはUSBメモリを入れたポケットもあった。デザインのためのノートも。……それらも確保しておきたいと思った僕は、結局鞄ごと手に持った。

 サブバックは……ほったらかしでいいだろう。中に手掛かりになるものはない、そう記憶している。教室の後ろの棚にあるものも手掛かりにはならなそうだ。

 おっと、机の中に置いたままの教科書類も回収しておこう。何か書き込んでしまってるかも。これに関しては記憶に自信がない。

 机の中の物を鞄に移してからすぐ、急いで廊下に出た。

 シリクスラさんと右柳うりゅうさんは静かな校舎で警戒したままだった。その目の前で、ゲートを設置。

 ――戻ってきた。鞄を手に持ったまま、言われる。

「よし、次はゲートで移動だ、華賀峰かがみね繊一せんいちの所有していた旧大浜岸おおはまぎし中古ショップセンターへ。大樹だいきくん、君が前に倒れていた場所だ。そこで全員、数分だけ待機してまとめてスマホをオフにする、それからここへ戻る」

「了解」と風浦かざうらさんに返事をしたあと、僕がゲートを再度設置――。



 そんなこんなで藤宮ふじみや家全員のスマホのオフが終わる。と、組織に戻る流れに。この時、兄がハンカチでゲートを作った。

 兄のゲートルームから出て通路を歩き、練習場へ。

 練習場には鳥居とりいさんがいた。待っていたようだ。彼が言う。「スマホをお預かりします。GPS機能を排除したらまたお返しします。そうしたら電源をオンにできますので」

 スマホを預けて会議室に僕ら藤宮ふじみや家の面々が戻ると、今度は新たな映像を見ながら風浦かざうらさんが。「戦ってる映像まで出回ってる」

 すると、父が嘆息してからつぶやいた。「……そりゃそうか、こんなのを目の当りにしたから……」最後にまた嘆息。

「今はこんな映像も」

 大きなモニターに映し出されたのは、あるテレビのニュースのVTRの部分。誰か――多分男が――取材されている映像だ。

藤宮ふじみやがどんな奴か? ああ――言いましたよ。だってあんなの危な過ぎるでしょ。巻き込まれたらどうなるか分かったもんじゃない。みんな自分が大事なんですよ、そうでしょう? だから友達もみんな、それぞれが大事だって思うんでしょ? だったら、みんなのためを思えばこそじゃないですか。こんな風に考えるのは俺だけじゃないはずですよ。……モザイク、絶対掛けてくださいよ。俺だって言いたくて言ったんじゃないんスからね、こんなの」

「ええ、分かってますよ」という言葉が挟まれた。取材陣の誰かの声だろう。

 男は続けた。「ほら、しょうがないじゃないっすか。よく言うでしょ、犠牲は付き物って」

 気持ちは分かる。そういう行動に出る人ももしかしたらいるだろう。東京の住宅数分の一くらいの確率で当たるルーレットを回されたとしても、自分や知り合いに当たる率はと言うとそれは少ないだろう。が、そもそもランダムな襲撃を回避したかったのだろうから。とても分かる。そして僕が犠牲になればその他大勢が守られるかもしれない――という言い分もまた分かる、悲しいくらいに。

「以上。伏木並ふぎなみ区の仙洞せんどう高校からお伝えしました」

 そのリポーターの声の直後、動画の再生は終わった。

「あのジャック画面の番号で、GPSから特定は?」僕が聞いてみた。

 すると歌川うたがわさんが。「それは最初に試したよ。でも位置情報の測定時にエラーが起こった。多分うまく故障させられてるんだ。奴らは通報者から情報を聞きたいだろうから、スマホ……ガラケーだとしても……使える状態だ。なのにってことは、GPS機能の部分だけ壊されてるってことになる。機械に強い奴が仲間にいるんだろうな」

「なるほど……」

 こちらからのGPSでは駄目か、と思ってから、もっと深く考えてみた。

 もし、GPSを使った接近のほかに、奴らに手段があるなら?

 まさか僕らの中にスパイでも? 僕をこういう場所に避難させて、スパイに攻撃させる?

 いや……、話によると姉はそんな感じではないし、シリクスラさんは板ガラスっぽい物をちゃんと操ってた。操作物が本人の物なら、本人のはず。右柳うりゅうさんは鳥居とりいさんのことを話してた、本人にしか言えないことを言えてたと判断してもいいくらいの状況ではありそう。

 父や母にも辿り着けてはいないはず。何かされていたら隈射目くまいめの護衛が気付いているはずだし。……やっぱりスパイはありえない。それに、いればもう行動してる気もする。

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