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ブルーピーシーズ ~不思議な力が発現し子種や命を狙われ迷いの中で生きた僕の半生と関わる人々の生き方~  作者: 弧川ふき(元・ひのかみゆみ)
第四章 ケズレルモノ

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38-2

 これでいいはず。こうしなければ、きっと後悔する。私はそう思わずにはいられなかった。

 数分前――。

 私は社会科の教師であり教頭。現代的なことをテーマに教えていくこともあるため、職員室にあるテレビをよく見るようにしていた。

 私が見ていると、テレビは、今までにないニュースを報道し始めた。

 少し経つと、何やら騒ぐ声が上の階から聞こえてきた。

「何だあれ、何なんだよあれ!」

「やべえじゃん、マジかよ! めっちゃあぶねえじゃん、あんなの――!」

 生徒達が、廊下に出て何かを見て騒いでいるらしい。

「まさか本当にこんなことあるわけ――」

 独り言をつぶやきながらも、ニュースのことがチラついて、上の階の生徒が何について騒いでいるのか確認したくなった。

 中庭の窓から覗いてみる。

 すると、目の前には信じられない展開が広がった。

 なんてことだ。そんな。まさか。

 確か藤宮ふじみや大樹だいきくんと言えば学力も学年で高い方。何かの上位の検定を一年時に合格した子でもあったはず。

 うちの学校の子だ。それがあんな風に戦って……?

 電波ジャックの内容が正しいかは別にしても、少なくとも、藤宮ふじみや大樹だいきくんの正体は悪、とは思えなかった。人を守るべく戦っている――という光景に見えたからだった。

 非現実的だ、ありえない、最初はそう思った。

 だがどうだこれは。目の当たりにして、否定も何もない。――じゃあ電波ジャックの犯人は何を目的に? 藤宮ふじみやくんを、逮捕したいのではなく、拉致したいのか? なぜかは分からないが……。

 このままでは危険なんじゃないか。生徒を避難させなければ。私達だって危険だ。あんな力が私達に向けられたら……!

 のんびり授業などしていられない。

 そう思った私は、『確か校長は姉妹校を訪問していて不在だったはず』と考え、自ら教育委員会に電話を掛けた。彼らから何か指示でも来るのではと思ったし、相談したかった。

 見たまま証言したり出回っている映像を見るよう促したりし、危険性を伝え、避難させる意味で休校措置が必要だと訴えた。

 教育委員会からの返事の最初の一言はこう。「とても信じられませんが」

 そこから肯定的な会話になる流れもありえたが、私はその最初の発言を聞いただけで言いたくなった。「信じてください! ――頭がおかしいと思うかもしれませんが、嘘でこんなことは言えません、そうでしょう」

 こんな職員室の前の廊下で、誰にも相談できない気がしながらこの話をするのは、何とも心細かった。

 周りに人がいない分、声は大きくなってしまった。

 教育委員会の男性は言った。

「……分かりました。避難させるのであれば、情報を共有して全員を説得するようにしてください、もし間に合わず、更に急を要する事態になれば、逃げながら他者に逃げるように叫ぶなり……何でも結構です。無事でいることを願ってますので、きちんとやってください、その点は。ただ……休校にするのであれば、何か工夫して授業を受けさせるくらいはしてください、生徒の勉学の時間をなくす訳にはいきません」

「承知致しました。許可ありがとうございます。ではまた何かの折」

「ええ」

 私は電話を切り、確かにと思い、どうやって情報を共有して皆を説得するのか、その方法を考えた。内心、割とすんなり信じてくれてありがたい、目の当たりにしたからか? ――そういう思いを抱きながら。

 だが信じない者が避難しなかったらその者だけは何かの被害に遭ってしまう可能性がある、それをけるには、私達がしっかり伝達しなければ。

 時間は掛かるが、仕方ない。私はそう思うと、放送室へ向かった。

 入ると、スイッチを押し、マイクに向かって話した。

「えー、校内にいる全校生徒と教員の皆さん、即刻、体育館に集まってください! 緊急事態です。授業をやめ、即刻、体育館に集まってください! 繰り返します――」

 ……そして、あの戦いの光景を撮ったという者を探した。

 だが一人も名乗り出なかった。

 ならばと、職員室に戻り、近くにいた国語の小堂こどう先生にまず話をした。

 彼はあの凄まじい現場を見ていないようだった。なんとか理解してもらうと、手伝ってもらいながらネットで探した。

 とある一言アプリに添えられた動画として拡散されているものを小堂こどう先生が発見した。藤宮ふじみやくんはさらされる意味で不幸ではあるが、まあ幸いだ。この際これで……というかこれしかない。

 体育館で数学の細田さいだ先生に手伝ってもらってパソコンを立ち上げ、それをスクリーンに映して集まった全員に見せた。ここにいる皆の目に焼き付けさせれば、あとは会議。ただし、できるだけ早く決める――。

 どうする。これから。この場にいていいものかどうか。漏れることなく全員が避難すべきだと思うが、考え過ぎか?

 ……いや。やはり人命、それが第一。

 だが、自分の考えが通るかどうか。どこに避難しても同じと主張する者がいたら授業を強行する流れになってしまう可能性が。教育委員会から指示はあったものの、それが必要ないのではと押し通されたらと思うと……。

 私は、断固守るべきだと訴えた。心に訴えたのだ。弱き者を守らず何が教師だ。

 ……これでいいはず。こうしなければ、きっと後悔する。

 中には、『信じない奴が勝手に死ぬようなことがあっても、それはそれだ、先生達に責任なんてないだろ』という意見を言う者もいるかもしれない。だが、私達がそういう保険を掛ける訳にはいかない。

 藤宮ふじみやくんが戦った相手が藤宮ふじみやくん欲しさにここをすぐにでも襲うかもと思えたが、その襲撃がない分――今は時間を掛けてでもしっかりと認識させてやりたかった。きちんと危険視させてやることで守りたかったのだ。まあ、すぐに見終わらせることができそうだとも思ったから決行した、それも理由の一つ。

 こうしなければきっと後悔する。そう思ったのには、こんなにも多くの理由があったのだった。

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