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ブルーピーシーズ ~不思議な力が発現し子種や命を狙われ迷いの中で生きた僕の半生と関わる人々の生き方~  作者: 弧川ふき(元・ひのかみゆみ)
第四章 ケズレルモノ

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37-2

 南校舎から一階渡り廊下を通り、僕は北校舎の下駄箱のエリアに入った。

 そこで外靴にき替えて北校舎の正面入口から出ようとしてふと思った。誰かが通報していたら確かに誰かが現れそうだ。じゃあそれはどこから? 入口から? 地図なんかを参考にして近付いて来そうではある……。

 入口付近には近付かない方がいい、そんな気がする。

 僕を指名手配しているらしい連中は、僕を追って善人ぶるかもしれない、指名手配というていだからこそ。ということは、僕が見付からないでい続ければ、彼らは大胆な行動をもしかして取れないのでは? ――ということを、この話を聞いた時から僕はなんとなく考えていた。

 それもあって僕はすぐに振り返り、南北の校舎を繋ぐ通路に向かって走って戻った。

 土足なんて気にしてる場合じゃない、外靴をいた状態だ。それで中庭にもう一度出る。

 とにかく僕は護衛の人達と合流したかった。見付からないように動きながらそれができればいい。もし合流できそうになければ、自分だけで安全な場所に逃げるしか……。

 左右と上空を確かめた。辺りは至って普通の景色。中庭は静か。

 まだ連中は来ていない? まだ誰も通報していない? だといいけど。

 ちょうどそう思った時、右からシリクスラさんが走ってきた。左から右柳うりゅうさんも。ただ、示し合わせた様子はない。二人ともが自分以外の二人の顔色をうかがう。

 最初にシリクスラさんが。「何かあったんですか? 誰かと言い合ったりそんなに急いだりして」

 右柳うりゅうさんは、何やら今納得したような顔を見せてから、シリクスラさんの言葉を遮るように言った。「奴らが電波ジャックで通報を促した。大樹だいきくんのことを知るために。大樹だいきくんを犯罪者に仕立ててる」

 するとシリクスラさんが。「犯罪者に?」

 右柳うりゅうさんはうなずいた。「通報をし易くするためだよ」そして続けた。「電波ジャックされた地域の住民は、ルオセウ人の存在も、その力ももう知ってる。が、本当の情報なんてほんの少しだ、大樹だいきくんのことを歪んだ情報で知ってる――」

 右柳うりゅうさんは僕に向き直り、今度は特に僕に向けて。「鳥居とりいから聞いた。世間に知れ渡るのも時間の問題。――とにかく移動だ、どこでもいい、人に見られない場所に行こう、そこをゲートルームと繋げるんだ」

 ここではなく移動した先でゲートを? それがなぜか気になった。彼は人に見られない場所かどうかを気にしている。多分、無関係な誰かが能力を見て通報するという事態をけようとでもしているんだろう。僕の力の性質がバレるのをある程度けたい――きっとそういうこと。

 感覚的にその答えに至りながら僕はうなずいた。「分かりました」そして。「ええと……じゃあこっちに」言うと、左右を注視しながら走り出す。

 入口側が危険だと思ったから、南校舎の一階のトイレ。その奥なんかでいい、そう思った。

 走り出してからすぐの時、僕は背に鎌でも突き付けられているくらいにぞくりとした。なぜなら、北校舎の東端から回り込むように、何かが中庭に向かってくるのが、警戒しているこの視界の端に見えたからだった。

 僕は走りにブレーキを掛けた。その時にはもう、その何者かが何やら手を掲げて――。

「危ない! 後ろ!」とっさにそう叫びながら、右柳うりゅうさんから見て後ろの若干左に盾を作った。攻撃から三人全員を直接守れる程度の黒い盾。

 もう、マギュートを見られてしまうことなどを気にしている場合じゃない。そう思って作った盾に、何かが刺さる音がした。甲高い音。

 その盾を地面に激しく叩き伏せた。その刺さった何かを操作させまいとするために。

 一瞬盾で遮られた向こう側に――中庭の東端に――盾が伏せられることによって、相手の姿を確認できるようになる。その人物が、手元にある何かを動かした。赤いつやを持ったテープ。そう見える。盾に当たったのもきっとそれ。

 思ってハッとする。この盾に刺さった物をあとで利用されたら困る。不意打ちされうると気付いた僕は、それの刺さった盾を飛ばし返した。

 相手はそれを深く沈むような動きでけた。結果、盾は赤い物をヒラヒラさせながら北校舎の東側へと。その辺でサクラを込めるのをやめた。だからきっとその近くに芯は落下することになるし、奴の得物えものも落ちることになる。

 けた相手は姿勢を整え、またこちらに飛ばすべくテープを引っ張り出していた。

 奴の口元にはマスク。耳にはイヤホンみたいな物。服装はラフ。そんな男だ。やはりあの時の赤いテープを操る男。

 把握はほぼ一瞬。

 そして僕が次の攻撃を放とうとした時。

「ちっ、早いお出ましだなァおい!」右柳うりゅうさんが皮肉を言いながら銃を構えた。

 その瞬間、赤いテープの男が、「消えろ邪魔者ども!」そう叫び、放ってきた。

 新たに引っ張り出された赤いテープが複数枚に増え、拡大され、また僕らに降り掛かりそうになる。高速でこちらへと。



 私もこの事態に気付いてポーチからティノッカ・フラスパを取り出してはいた。この星ではこれをガラスのプレートと呼ぶ。成分的にティノッカがガラス、形状的にフラスパがプレート、それぞれそういう意味の言葉に当たるらしい。

 普通はコップのコースター等に使う。それを盾にしようとしたが、そんな私より速くいて・・しま・・った・・者がいた。さっきの防御は確かに秀逸だった。けれど、私の行動が制限されてしまうような盾の展開でもあった。その盾がまた――。



 僕はまたシールドを展開した。芯を太く。今度は直径がこの渡り廊下の四分の三くらい。そんな円盤状にしたもの。

 だがこのままでは防ぎ切れるとは言えない。軌道を変えた攻撃をされたら、もちろんこちらに当たりうる。それにこの盾ではあちらが見えないし。

 対する防御のために僕は。「シリクスラさん! ガードを頼みます!」

 そして僕は盾を維持しながら、その盾の右下の脇から右前方へと飛び出した。



 私達が守るべき『彼』が戦うのは、あまりにも危険――。

「待って!」私は引き留めようとしたけれど、彼は動きを止めなかった。

 飛び出してから反応もない。聞こえなかった? 聞こえていても「待って」を「分かった」みたいな言葉と聞き間違って? 構ってなどいられないとも思った?

 どうであろうと――仕方ない――。右柳うりゅうさんと私自身を守らないと。

 私はティノッカ・フラスパの強度を高くし巨大化させると、右柳うりゅうさんと私をまとめて守れるよう壁になる位置に動かした。高さも校舎並みに。これでティノッカは透明で大きな壁に。更にはこれの数を増やし、この施設の壁に沿えるようにする。そうすることで、ここに通う人間に危害を加えさせない。奴から見て左右と正面を施設ごと守れればそれでいい。

 ただ、これほどまでの力を使うなら、私は、それだけに集中しなければならないくらいに消耗してしまう。

 彼が盾を作らなければ、視界が遮られることはなかった。彼の盾がなければ私が戦い易かったのに……。

 と思う私のすぐ左隣から、黒い盾で遮られて撃てずにいた右柳うりゅうさんの声。「援護しないと!」

 私はそれを制した。「駄目です! あなたは防御できない、私に任せて!」そう言いながら、ティノッカ・フラスパを自分の足元で巨大化させ、それを台にするように乗り、黒い盾の最上部よりも上まで浮き上がった。



 念のためガードをするように言ったが、男は僕に狙いを付けてきた。まあそれでもいい。

「ずっと探していたぞ! 今度はお前が標的だ!」

 男は、激しい口調となったその翻訳された声を、僕に対して。

 それはもう翻訳機を通さず肉声で叫んでいるのとほぼ同じように――自然な叫びのように聞こえた。

 そして男が手を振りかぶり、念じるのであろう姿勢も見て取れた。

 僕の付近に赤いテープが飛んでくる。僕はそれらを何とかギリギリでけながら、心の中で雄たけびを上げつつ走った。

 通り過ぎたそれは、先にあるガラスの盾や敷地と道路を隔てる壁に突き刺さっただろう。だろう――というのは、音で刺さったのが分かっただけだからだ。見はしなかった。

 音からして、それらはまるで嵐で運ばれる鋭い鉄板のようだったことだろう。当たるとどうなるか、想像に難くない。

 少しして、男は、何を思ったか一旦念じ直そうとしたようだった。それは、テープのことごとくがガラスの盾や壁に突き刺さった時だった。引っ張る手間が必要になったのだろう。テープを新たにカットすることで武器を補充しようとすると手間? 隙が多くなる? だからか。だから壁から引き寄せようと。――というようなことを瞬時に理解した。

 ただ、奴が選んだ少ない方かもしれないその隙を、僕は見逃さなかった。「捕まんのはお前だ!」

 ほんの一瞬の間。

 一つの芯を目の前に増やすことで出現させ、それを冷蔵庫より少し大きいくらいのサイズにした。縦の拡大率はそんなにない。一瞬後、『それ』は、男の太ももから下全部をぎ払うように低空を突き進んだ。

 超高速の操作。

 それが当たる。相手の膝に。

 男はその衝撃の反動で、膝のあとにあごか顔面でも打ったようだった。空を仰ぐように横たわってからは、顔を手で覆うようにして、微かなうめき声を上げ続けている。



 黒い盾よりも上に浮き上がってからほんの数秒観察した。

 それから私が攻撃しようとも思ったが、どうやらその必要もなさそうだ。

 全く無茶をする。

 そう思ってから違和感を覚えた。

 ……敵は本当に一人? もし彼だけなら、何か奥の手でも……?

 私は後ろに顔を向け、至る所に視線を向けた。野次馬以外に誰もいないことを確認できてからは、ガラスの盾をこちら側に増やし、自分達の背後とそちら側の校舎に透明な防壁として沿えさせてから視線をの方に戻した。

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