表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブルーピーシーズ ~不思議な力が発現し子種や命を狙われ迷いの中で生きた僕の半生と関わる人々の生き方~  作者: 弧川ふき(元・ひのかみゆみ)
第四章 ケズレルモノ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/152

37 日常

「ねえ、これ見てよ、これあんたの弟のことだよね?」

 私の隣の席の友達、真緒まおが急にそんなことを言った。

 教室で次の授業が始まる前の休み時間のことだ。

 私は耳を疑った。弟のこと? 習字か漢検、じゃなきゃデザインのこと? それともクライミング? 私は思いながら、友人が見せるスマホの画面を覗き込んだ。

 そこに映っていたのはミーパイプという配信サイトの動画。問題の動画内の下部には字幕スーパーみたいに電話番号らしき数字が並んでいる。その上に顔写真。弟の顔に似てる、というより、少し前の弟の顔……そのものに見えた。

 その動画からは声も。その内容を聞いた私は、この状況の意味がよく分からない、と思うことくらいしかできなかった。

 この話に参加しているのは、スマホを見せてきた友人と私を含めて四人。そのうちの一人、私の後ろから覗き込んでいた有希ゆきはこう言った。「映画の宣伝か何か……じゃ説明付かないよね? その『なんで弟の名前と顔がわざわざ?』ってのがよく分からないとこよね。……あ、何か心当たりあるんだ?」

 言い当てられた。顔に出てた?

 どう言えば? 悩んでしまう。「えっと……」

「大丈夫だって。みんな味方なんだから」そう言ったのは有希ゆきの隣、真緒まおの後ろの席から覗き込んでいた一人、水奈穂みなほだった。水奈穂みなほは続けた。「最近さ、なんか尾行みたいなのされてたの、知ってる? 目配せしてたかも……っていう瞬間を見たことがあるんだけど」

「え、どういうこと? 私が目配せした瞬間をってこと?」

 私がそう聞くと、水奈穂みなほは。「んー、というか、あんたが目配せを受けてうなずいてたって感じかな。……だからさ、何かあるんでしょ? なんか……SPみたいだったし、あれ」

 確かにそんな時期はあったけど。

 と、私が思い出す間を挟んだ直後、真緒まおが言った。「何か事情があるとしても。大樹だいきくんはいい子らしいじゃん、前から聞いてる話によるとさ。じゃあ、だったらさ、私らは『大樹だいきくんの正体は悪者』って部分は嘘だって信じるからさ、私らの間では気にしないでよ。でも、ほかの人には何か言わないとやばいよね」

「そ、そうだね」

 私はスマホを手に取った。このことを大樹だいきがまだ知らないかも、伝えないと――と思ったから。

 そして椅子から立ち上がる。

 その頃には、周りはざわついていた。みんなの視線が私に向く。そして聞こえる。「藤宮ふじみや。お前、弟いるって言ってたよな、大樹だいきって奴」前の方の席の間山まやまくんだった。

 私と話していた友人以外、ここにいるほぼ全員が怪訝な目で私を見ている。

 間山まやまくんは自分のスマホを指差しながら、更に。「これ、本当なのか」

 もう、言うしかない。そう思って答える。「本当だよ。ただ、本当なのは、弟が不思議な力を持ってるってことだけ」私もだけど――とまでは、さすがに言えなかった。

 すると。「はあ?」間山まやまくんは驚いて。「マジかよ……。いや、なんていうか、俺も藤宮ふじみややお前の弟を信じたいよ――」

 でも、と言われる気がした。「何よ、本当なんだってば。……マジなの!」

 私がそう軽く叫んでしまうと、間山まやまくんは一旦深く息を吸って、小さく何かを言った。微かに聞こえたのは、「嘘だろ……」と現状を嘆くような声だった。それから信じたらしく、態度が変わった。「さっきの話、少し聞こえたよ。半信半疑だったけど、お前らの話が本当なら……、ほら、その弟がいい奴ならさ、電波ジャックしてる奴が嘘をついてるってことになるよな?」

「う、うん、多分……」

 と、私が言うと、間山まやまくん。「ジャックが取り締まるためで弟がいい奴ならこんなことする必要ない――俺なら違う方法を取る。だから……藤宮ふじみやのことは信じられる。で思ったんだけどさ。特殊能力のことが本当なら、それを狙ってるって線、ありそうだろ? ジャック犯がいい奴の振りをして……。目的は分かんないけどそれっぽくね? ってことは……というか、お前も狙われるんじゃ――?」

 最後の二言三言を発する時、間山まやまくんは今気付いたという顔をした。

 言われて私もハッとした。自分のことも不安になる。

 そのすぐあとで、教室に騒がしく入ってきた担任の鬼戸おにど先生が。「おい藤宮ふじみや! 今大変なことになってるぞ!」

 私はまた答えなきゃと思った。今度はみんなに聞こえるように。「私の弟は、酷い人なんかじゃないし、その情報のほとんどはデタラメです。みんな信じないで。先生も」

「あ、ああ……そうだよな。そうだそうだ、うん、あるワケないよな。イタズラだイタズラ。電波ジャックの件、みんなも信じるなよ」と、鬼戸おにど先生はこの場を和ませながら去っていった。

 鬼戸おにど先生は多分、職員室に、私と話した手応えを知らせに行ったのだろう、それで余計な行動を取る人が出なくなるなら、まあ引き留める必要もない。

 本当はもっと詳しく教えておくべきかもしれない、そのことで迷いもした。けど、今はそれよりも。

 私はみんなに、特に間山まやまくんに向けて告げた。「気付かせてくれてありがとう。私、早退する」

 荷物をまとめている時、聞こえた。「マジなら早く行けっての」

「ここが危なくなったらどうすんだよ」

 それらの声で荷物をまとめる手が一瞬止まることもあった。私は何も言えなかったけど、代わりみたいに間山まやまくんが言った。「おい。分かってるから今急いで用意してるんだろ。こいつだって自分の身を守りたいワケだし。気持ちは分かるけど言ってやるなよ」声のした方へ、まあまあ穏やかに言ってくれた。

 真緒まおも注意した。「今の言葉がなきゃもっと早く去ってたかもね」

 私は愚痴った数人に対しても言いたくなった。告げる。「ごめんね、そんな思いさせて」間山まやまくんと真緒まおにはさっきのことを感謝。「ありがとう」

 同時に荷物をまとめ終える。それから、「じゃ」とだけ言うと、急いで教室をあとにした。



 俺はあいつから受け取った画材を棚に戻した。本当に戻ってくるのかよ、そう思いながら入れ込む。

 教科書はあいつの机に。入れた時、その机の横のフックに掛けられた鞄から、何かの振動するような音がした。多分ケータイとかのバイブ音。あいつのか。

 それを大樹だいきの鞄のポケットから見付けて取り出すと、その画面を見た。スマホの液晶には『藤宮ふじみや理美りみ』とある。姉だっけ?

 俺は、ここにいない大樹だいきの代わりに、出てみた。「もしもし」

大樹だいき? あんた今どうしてるの? 大変な――」

「俺、友達の須田川すだがわ要太ようたっていいます。大樹だいきはもうどこかに行きましたよ」

「えっ」

「周りに、通報しないように言い残して、被害を出させないために、自分からどこかに行ったんです」

「そっか」何やら感慨深くなったのか、少し間があった。それからまた理美りみさん。「そのスマホ、今日の夕方にでも、うちに届けてくれない?」

「分かりました。一応、必要そうなのは全部届けます」

「ありがとう」この一言の直後、通話は切れた。




 通報は、実際あった。通報者には『フジミヤダイキがどこにいるのか』まで言わせた。

 だがそれに留まらず、俺は解析機などの扱いが得意な仲間に言った。「カシュル。シャグ、ボゼレカサモ」

『特定しろ。この、発信元を』という意味だ。

 こうするのは、通報者が口頭で位置を言っても、それが俺達を誘導する嘘かもしれないからだ。奴らの仲間がもし通報者だったらそんなこともありうる。

 特定した結果、発信者の言う位置と発信元の位置はほぼ同じだと分かった。しかもそこは学校らしい。発信者が奴らの仲間なら人のほぼいない場所に誘導するだろう。『あの時の黒いゲートの先』もそうだった。……どうやら罠ではなさそうだ。

『この座標』の近くに俺達は行ったことがあった。まあこの学校に行ったことはなかったが。

 そこにフジミヤダイキが。ふふ。自然と口角が上がる。

 さて行くか、ゲートを使えばすぐだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ