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ブルーピーシーズ ~不思議な力が発現し子種や命を狙われ迷いの中で生きた僕の半生と関わる人々の生き方~  作者: 弧川ふき(元・ひのかみゆみ)
第四章 ケズレルモノ

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36 手掛かりと繋がり

 三十日くらい前。

 俺達の船が隠されている場所が『この場所だ』と、的確に、すぐに特定できる者などいないだろう。

 俺達の証言を元に、船に待機していた調査員に絵を描かせた。似顔絵をだ。こいつはそれが得意。

『少し前に頬に傷があった』と注釈を入れさせた。身長や肩幅なんかについても書かせた。異文化の文字は難しいが、書かせない選択肢はない。これは『模写』のようなものだ。翻訳した文を映像的に見られれば、あとは認識力、画力の問題。

 さて。

 あの少年はとんでもない能力者だった。二対一だったのにほぼ押し切られた、あんな車ごと移動するためのゲートを使ったあとでだ。あのゲートは恐らくあの少年が作ったはず。戦闘時と対象物が同じだった。

 異常な強さ。そしてあの年齢。恐らく少年は地球人、且つ、少年の守ったあの男と同じように鉄吸収を使える――と考えた方がその強さに納得できる。俺達との戦闘で少年のサクラがあそこまで持ったのは絶対そのせいだ。まあ、そうでなくても立派に研究対象だが。

 あの少年に守られた男。彼はあの少年より手強くなさそうだった。あの男もかっさらいたいが、あれから十五日ほど調査しても、どこにも見付からなかった。

 最初はあのアパートのあの部屋に戻ってみたが、誰も住んでいない状態になっていた。表札らしき物もだ。

 そもそも表札には彼がいた時も名前がなかった。だから『模写』もできていない。

 顔写真も撮っておけばよかったが、それもしていない。逃げられるとは思ってもいなかったから。

 守るために動いた少年のことが強烈過ぎて、守られた男の顔をあまり覚えてもいない。こんな情報の少なさで、連日、記憶頼りの調査。それで見付かっていない、という現状――。

 もう彼はこの辺にはいないのかもしれない。

 これでは手当たり次第に探すのと同じ。不毛だ。

 ――どうせならあの少年を狙うか。

 最初からその少年を狙う気はあった。だから回収失敗のあとにすぐに絵を描かせた、あの少年の似顔絵を。

 俺達はその絵を持ち、翻訳機を使って――ついでに口元を隠して――聞き込みをした。あの少年が誰なのか、それさえ分かれば……。

 この星の警察の真似事をするために、この星の警察の者になりすますのであれば、警察内の情報も参照できそうだ、あの少年が何かに関わっていれば……。ついでにあの少年に守られた男のことも警察の情報から分かれば……。

 機密情報にアクセスする際には、あの絵画が得意な男の作った『パスワード解析機』を使った。絵画が得意な俺達の仲間は機械も得意。インドアな奴だ。まあその分俺達が外で動く。

 この『パスワード解析機』で何かロックされた機械を覗いた時には文字等はルオセウのものに変換される。そしてアラートを発生させることがない。アクセス場所が特定されることもない。ゆえに、潜入後、警視庁とやらのパソコンから機密情報を覗いても、そのことが知られる心配はない仕様だったし、実際バレなかった。

 それを使って結構な時間調査したが、何も出てこない。少年に守られた男についても何も出てこなかった。情報がたとえあったとしても既に抹消されていると考えるべきだろう。

 根気強く聞き込みだけを続けた。

 ある時、ある少年がこう言った。「いえ……、いや、知りません、俺の知ってる奴じゃあないです」

 微妙だが、その少年が嘘をついているように思えた。ほんの一秒にも満たない間のことだが、顔の緊張の仕方が目まぐるしく変わったと思えたのだ。だから俺は尾行した。

 そいつはファミリーレストランなる場所でくつろぎながら、誰かと通話した。「今日変なことがあってさ。ほら、同じ学校に藤宮フジミヤ大樹ダイキって奴がいるじゃん? 明らかにあいつを探してるって感じの、似顔絵を持った警官がいたんだよ。でもあいつ、警察に調査されるようなことやらなそうじゃん? むしろ被害者っていうか。事故に遭ったって言ってたらしいけどさ、あれって丸く収まったんだろ? そう聞いてたしさ、なんか警察手帳も一瞬しか見せてくれなかったし、最近、偽警察にご注意みたいに言われることもあるからさ、怪しいなと思って知らない振りして急いで離れたんだよ。……いやいや、あれはマジで変だったから」

 俺はこの声を録音していた。その声の主を尾行し続け、標的の学校までをも特定しようと試みたが、途中で尾行に失敗した。証言した少年の知人らしき男がバイクとやらにその少年を乗せて連れて行ってしまったのだ。

 だが、録音のおかげで名前がやっと分かった。

 船に戻り、その名の発音の練習をした。フジミヤダイキ。これが恐らくあの少年の名前。

 その名で音声入力し、俺達の機器を通して地球のネットという奴に繋げ、調べてみた。

 随分探したが、フジミヤダイキのことが載っているページは見付かりそうになかった。警察の厄介になったことや何かの功績で目立ったこともなかったのか。そうでなければ手を回されたか。

 戸籍や住民票とかいうものも調べたかったが、俺達が使っている『パスワード解析機』はデータベースのある場所で使わなければならない。俺達にとって、それらの管理場所を特定するのは警察を調べること以上に骨が折れる。

 この星、この国の警察組織のパソコン内の情報を奪うことはさほど難しくなかったが、個人情報を管理する組織の名前なんかは、俺達にとっては、見当を付けることすら難しい。それに、アナログなセキュリティシステムがもしあれば調べるだけ損をするということになり兼ねない。その間に何か対応をされてしまえば……。

 溜め息も出るという時、ネットとやらで調べられるある文章が目に映った。匿名性の高い短文を羅列し様々な人物に向けて発信できるというツールのとある個人のページの中の文章だ。そこにはこうあった。『うちの中学の頃の同級生も書道の賞を取ってた、藤宮ダイキってヤツ。大器だっけか、大樹かな? 忘れたけど。そいつも有名になるかも?』

 気付くことができたのは、表示方式を改造した機械を通して怪しいページを探っていたが、その際に元の文章の音声も確認していたからだ。それができる機械を使っていた。そしてフジミヤダイキとフジノミヤダイキという音を確認。これだ、と思ったのだ。

 だが、これが同名の別人の情報である可能性がまだある。

 この人物に関しては名前をどう書くかもある程度分かったが、これも完璧とは言えない。その上、関連する写真はない。ほかの情報と言えば、その発言の投稿者がどの辺りに住んでいそうかということくらいだ。

 画像が添付された発言もあった。その辺りの中学校を調べた。

 ある学校のサイトを調べている時、『書道コンクールにて三年生の生徒が入賞』という内容が書かれているページを見付けたが、名前も写真もなかった。ほかの記述にも名前と写真がないものが少々あった。違和感を減らすためか? 小細工をされている可能性はある、そう思えた。

 その学校に実際に足を運んで調べるため、校名とその発音を覚えた。深笠屋みかさや中学校。字もメモ。

 この中学校の場所を調べ、学校責任者の部屋を探した。そこで卒業アルバムを探したが、なぜかなかった、ありそうなものだと思ったが。これも先回りされたか。やはり怪しい。

 ならば次は、この学校に現在通っている者の兄弟だ。通う者を監視し、尾行……。そのうちの誰かの兄弟はもしかしたら。

 と、家宅侵入を繰り返してようやく写真を見付けた。

 映っている一人の顔が、俺の記憶の中の顔とほぼ同じ。これで本当に名前と顔が一致。ついでにこの写真も使える。

 そして今日、フジミヤダイキの現在の住所や学校の特定をしようと思ったが、思いとどまった。彼を取り巻く者達が団結するとこっちがやられる、もしくは隠れられ、より捕まえ難くなるだけかもしれない。その可能性はかなり高い。俺達が逃げたあの戦いの最後に、奴らは援護してきた、あの援護は妙に早かった、やられると思ったほどだ。あの援護の速度。それだけを考えても、『奴らの仲間があれで全部だと思うべきではない』だろう。

 それにフジミヤダイキの家族そのものも危険視すべきだ。あれだけの力を持つ者の兄弟ならば同じくらいの能力を持っているかもしれないし、その親も怖い。

 返り討ちにされるのだけは御免だ。ゆえに、俺達の勢力では、不用意でなくとも近付くべきではないだろう。それに、現在の住所がアルバム内のものと違うかもしれない。

 ならば、奴らのうちの一人だけでも人質に取れれば。その辺の誰かでもいいが。……いや、別に人質を調達したとしても、それをこちらの誰かの別の姿だと勘違いされても嫌だな、奴らの中の誰かだと確信される人質が欲しい。……だが、それがそもそも難しい(かもしれない)のだ。

 直接人質と共に姿を見せて脅すわけにはいかないだろう、もし数で負け不意を打たれるなら――その可能性はあるから――気絶させられてしまったら終わりだ。奴らが武器を持っていない状況を作れれば心配もそこまでないが、難しいだろう。

 やるなら映像を送り付ける方法。それで人質を取るにしても、その人質の居場所は、俺達がよく利用する場所とは別に用意する必要があるかもしれない。ふむ……、少々面倒だ。

 まあいい。それなら今やるべきことは? フジミヤダイキを孤立させること、か? どうやる?

 フジミヤダイキを孤立させられたとしても、そのあとどうする? まあこれは孤立させる方法次第でもあるか。捕まえ易い状況にできれば……。

 そもそも一人にならざるを得ないようにさせられるのか? いや、少年が少しでも誰かに目撃されればこちらに情報が入るように、少年を悪状況下に叩き落とせれば、たとえ逃げられたとしても――。そうなれば揺さぶるのも楽になりそうだ……。

 これはもう、やるしかない。

 そう思ったからこそ、今日俺達は、インドアな『あいつ』の技術で電波ジャックをし、指名手配のような真似をさせたんだ。急がせた。俺達も捜索されているだろうから。

 俺達がこの方法を取ることでこの星の者がルオセウのことなどを知っても、俺達は一切構わない。何十年、何百年も経てば、情報管理され、忘れ去られるだろう。

 逆に常識化したとしても構わない。この星のことなど知ったことではない。

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