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ブルーピーシーズ ~不思議な力が発現し子種や命を狙われ迷いの中で生きた僕の半生と関わる人々の生き方~  作者: 弧川ふき(元・ひのかみゆみ)
第四章 ケズレルモノ

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34-3

 聞き返したのは女性だけだったが、彼らは三人とも、顔を見合い、知らない、という顔をした。

 え、できないのか? 鉄吸収の力がない? 知らない? そんな。

 もしこの力がなくても何か知ってるかも。そう考えてしまうのは、そこまで変なことじゃないはず。彼女は井下橋いかばし区のあの廃アパートの前にいた。粋暁きよあきさんの住んでいた前のアパートのあった区だ。その二か所の距離は離れていたかもしれないが、そこまででもない。それが偶然とは思えない。

「じゃ、じゃあ、どうしてあの場所に」僕が女性に聞いた。

 すると女性が。「あの場所とは、どの場所のことですか?」

 ああ質問が悪過ぎた。

 最初から説明してみた。

「昨日のあの廃アパートの……人に見られないような場所。あそこが何度かゲート使用場所にされていたと聞きました、どうしてあの場所でゲートを使うことにしていたんです?」

 三人は顔を見合って話した。ぼそぼそと。多分翻訳機を通してない。どうだったかなと話し込んでいるだけなんだろう。

 しばらくして女性が「――オあ、そうだった」と言った。途中から翻訳機に声が乗ったんだろう。

 それからこちらに向き直り、女性が話し始めた。

「看板に妙な変化が起きていることが分かって、一応怪しいと思ったので調べていました。その地域で一人の少年が消息不明になったことが分かったので、更に怪しいと思い、そこを重点的に調べるために、近くにゲートを使える場所を確保しておいたのです」

 なるほど、怪しむ程度にしか知らずに調べててそれで、か……。

「やっと理解できました。変なこと聞いてすみません」一応謝っておく。

 さて。

 彼らが鉄の吸収を知らないのは、使えないし見当も付かなかったかららしい。……いや、使えない、みたいなことを言われたっけ? でも多分そうなんだよな。

 思った僕がそのことを聞くと、真ん中の男性が。「ええ、そうですね、鉄の吸収などできたことがありません。私達のような三代目の誰にも――今ルオセウにいる者の中にも――そんな力の持ち主がいると認識したことは一度もありません」

 これで確実なものとなった。これは僕と粋暁きよあきさんの二人だけの力。過激派集団が注目する訳だ。

『そういえば、また僕だ』と僕は思ってしまった。

 そうだ、なんでなんだ? まただ。また僕。

 いつまでこんな不安を抱くことになるのか。何度その不安は大きくなるんだろう。

 規模もだんだん大きく――。とっくに僕だけの問題ではなくなってはいる。既に何度も、身近な人を危険な目に遭わせていて――。

 これ以上のことが起こりそうで、怖い。

 僕がこんな存在だから。僕がこうだからと言ってしまえばそれまで。そういう星の下に生まれた、って奴か? ……何だか、もう、ほぼ運命のレールだけを走る何かに縛り付けられてるような、そんな思いが胸に……。

 そんな僕のことを考えてか、檀野だんのさんが言った。「実は……大樹だいきくんにはその鉄の吸収ができます。つまり大樹だいきくんは、奴らにとって魅力的な遺伝子を持つ存在。大樹だいきくんは住所を変えてなどいませんし、大樹だいきくんに護衛を――あなた方の中からも付けた方がいいと思いますが、どうですか? 奴らが粋暁きよあきくんを見付けることは限りなく困難なのでそちらの心配はありませんが、何を手掛かりに狙われるか。あの連中もかなり行動的ですから」

 すると三人が話し合った。

 それから女性が。「私が護衛しましょう」

 その声を聞いて、僕は少しだけほっとした。そして思った。檀野だんのさんの存在が、いや、他の誰の存在もだけど、本当にありがたいな、と。

 僕は自分の運命の悪路を辿らずにいられるだろうか。しかも『それ』に巻き込まれるのは僕だけじゃない。――不安が何度も僕をむしばむ。

 ただ、悪いのはルオセウという星の過激派で、それに加担する研究者。

 そう考えることで僕は意思を固めた。もう乱されてたまるか、と。そいつらを捕まえさえすればいい。

 だったら目の前のルオセウ人に協力すればいいんだ。そうすることで解決できれば――そして僕の情報がルオセウでも保護されれば――僕の人生は守られる、僕の気持ちは守られる。そうだ、どんどん協力すれば、やりたくもない戦いに身を投じる必要もいつかはなくなるはず。そのために頑張れば――今だけ、少しだけ踏ん張れば――僕は……というか僕だけじゃなく、みんなが守られるはずなんだ。

 唐突に、真ん中の男性が立ち上がった。「まだ実感が少ない方がいらっしゃるようなので、見せておきましょうか」そう言って上着や靴を脱ぐと、彼は変身した。

 青い肌。翡翠ひすい色の爪、髪、虹彩。筋肉質で……二メートル六十センチくらいの体格か?

 脚は長く、足の甲も指もそれぞれ長い。その足の甲と指では指の方が長く、そしてその数は片方六本、左右合わせて十二本なのは変わっていないらしい。

 目がぎょろりとしていて口は前に出ている。そこだけは亀っぽいカエルみたいな感じだ。

 前腕とすねには翡翠ひすい色の甲殻。その腕も長い。全体的に甲殻でない部分の皮膚はただ青いというだけでなく、青黒い箇所もある。

 肌の質感は僕らとほぼ同じ。

 口は横長。耳はひし形。首は僕らより若干長く、肩の筋肉も大きい。

 ほぼ古書の通り。

 現代のタッチで再現された写実的なあの絵もだいたい特徴を表現できていたらしい。

 僕らの目に、彼の元の姿が映ってからの数秒間、この場は静まり返っていた。

 彼はすぐにさっきの『日本人に化けた姿』に戻った。そして解説。「あなた方には怖い見た目かもしれません。でも怖がることはありません。それに、女性のルオセウ人はこれより少し柔らかな感じで、性差もあるんですよ」

 単純な興味でか、姉が聞いた。「ルオセウ人も、もしかして日焼けとか、するの?」

 すると彼。「もちろんします。濃く焼けた者もいれば、日焼けし難い体質で色が極端に薄い者もいます」

 これで今起きている現実をそのまま受け止めてもらえるだろう、というのが彼の狙いだろう。その達成もできたということか、彼が言った。「ではこれで一時解散しましょう。捜査員の割り当ては各地からの増員ができてからということで」

「分かりました、じゃあ」と、犬神いぬがみさんが、元気よく立ち上がった。「皆さんは、もう帰られて結構です、ですよね?」

「いや――」と否定したのは真ん中の男性だった。彼は続けた。「その前に、何か質問は」

 僕は聞きたいことを探したが、何も思い浮かばなかった。

 みんなが無言。誰も何も思い付かないでいる?

 誰にも何も言われないまま、また真ん中の男性が。「なければこれで終わりです。ですが、協力してもいいという方だけ少し残ってください。戦いたくない、協力するのが怖いという方が残らないことは、私達への協力になるでしょう、どうしても協力できない方は帰ることで私達に協力してください。それを責めたりなどしません。戦わない、戦えない、そんな遠くにいることになる者、色々な者を、守るために私達や彼らがいます、自分の意思に従ってください、尊重します。では解散しましょう」

 会議は一旦終わったようだ。帰っていく者もいる。

 そんな中で、僕はしばらく椅子に座ったままでいた。

 マギウト使いで残ったのは、僕と兄と奏多かなたさんと舞佳まいかさん、そして居那正いなまささん、この五人だった。

 歌川うたがわさん、犬神いぬがみさん、嘉納かのうさん、檀野だんのさんも含め、計九人で、中央の椅子に座り直した。

 そこで女性が言った。「連絡できるようにしておきましょう、必要だと判断した時、こちらから連絡します、私達からだけでなく彼らの組織からも連絡できるようにしておいてください」

 すると、背の高い紳士的な男性が胸ポケットからスマホを取り出した。ラフな格好の男性はズボンの右前のポケットから。女性はポーチの中から。

 こんな場に来て何かあったら……。そんなことを思いもするだろう、みんな、スマホを持ってこない訳がない。僕もだ。僕はスマホをズボンの右前のポケットから出した。そこで気になることがあったので聞いてみた。

「それ、地球の……スマホですよね。よく考えたら、なんで皆さんが使えるんですか? 住所とか戸籍は?」

 すると女性が。「高戸たかとさんという方にお願いして買って頂き、使わせて頂いています」

 ああそっか、なるほど。自分で買えるようにするよりも、誰かが買ったものを貰う方が早い。なら、協力者がいればいい。入念に選別したんだろうな、事情を誰にも話さないでいてくれる人かどうか。前提として金銭的に余裕があるかどうかも。

 彼ら三人は僕ら九人のスマホの画面に映された番号を登録し、僕ら九人はその逆を行った。

 ただ、登録名をどうするつもりなのか。こちらもどう入れればいいのか。

 番号の交換が全部終わったあとで、女性が。「あなた方のお名前を教えてください、辞書とこれ・・に登録しますので」

 ああそういうことか……と、これにも納得。

 彼らは僕らの名前をスマホに登録し、番号と対応させた。

 その画面を見て思った。僕らのスマホとは文字が違う。彼らの文字か。改造でもしたのか。

「ああ、これは、ルオセウの機械で改造されています。私達に読める文字にしているのです」女性が言った。やっぱり改造してたんだ。

 その後、彼らは、翻訳機の辞書とやらに登録する際、マスクを一旦外した。そしてマスクの内側に巧みに取り付けられている丸い装置にある青いボタンを押し、名前を口にした。次に青いボタンを二度押すと、別の者の名前を。更に次も同じように。最後の名前のあとだけ押す数が一回だった。

 どうやら固有名詞の登録方法がこれ――青いボタンを押してからもう一度押すまでに発声すること――であるらしい。互いの音声が重なること、誤動作などをけたのか、彼らは互いに少しだけ離れ、その登録を同時にはやらなかった。

 彼らが登録し終わり、元の位置に。

 直後、背の高い男性が。「では、今度はあなた方がこちらの名前を登録してください。私はヴェレンテロウル・ランダジエ、といいます。呼ぶ際はヴェレンで結構です」

 僕らがヴェレンさんのことを登録し終えると、次は肩幅のある軍人っぽい男性が。「イチェリオ・クルヨーク。イチェリオと呼んでください」

 イチェリオさんの名前も登録。

 それも終えると、髪の長い女性が。「シリクスラ・ガトルビノといいます。シリクスラとお呼びください」

 シリクスラ……さん、と。

 登録を終えると、今度はそのシリクスラさんが。「では、これで本当に解散です。次は、何か分かった時に」

「ええ」とは、歌川うたがわさんがうなずいた。

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