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ブルーピーシーズ ~不思議な力が発現し子種や命を狙われ迷いの中で生きた僕の半生と関わる人々の生き方~  作者: 弧川ふき(元・ひのかみゆみ)
第三章 隠し事

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26 船と傷

 実千夏みちかに打ち明けてからすぐのある日、封筒が家に届いた。漢検のものだった。

 あ、そういや受けてたんだ――。

 そんなことを思うなんてと、僕は自分を笑った。マギウトに目覚めなければ、こういうことが大事なだけの人生だったのになと、そう思う。今は、マギウト関連でもし何かあった時だけは、生き残ること、命そのものの方が大事になる。そんなことを意識しなきゃいけなくなってる。

 封筒の中身は検定結果と標準解答というやつだった。

 間違った部分は標準解答を参考にするとして、問題は結果。恐る恐る見る。

 合格だった。

 その数日後、もう母も知ってしまっているし、どうせならと、祖父母以外の家族全員で佐倉守さくらもり一族と会うことになった。

『この四人全員がマギウトやサクラの説明を詳しく受けておくべきだし、過去の遺物のことも知っておいた方がいい。その目で見るのもいい』――ということを僕が以前言ったが、父や母は僕の回復を待ってからにしたいと決めていたらしく、それでこんな日取りになっていたのだった。



 佐倉守さくらもり家の敷地には奏多かなたさんの消しゴムのゲートで向かった。

 広い所だった。古めかしくて大きな屋敷もあるし、倉庫も奥にあるらしい。

 その辺の山は全部私有地らしいし、池も庭も別邸もあれば、木の柵もある。門も生け垣も松の木もあって、よく手入れもされているみたいだ。伝統的な和を思わせる、新鮮な空気に満ちた清らかな場所、そう思った。

 話を聞くと言っても、正直僕は宇宙船の方が気になっていた、日記や現代的に表現した絵も既に見ているし。

 そのことを話すと、居那正いなまささんが。「そうだね。大樹だいきくんはうちの子と遊んでやってくれるかい。あとで呼ぶからその時だけ来てくれればいい、その時はご家族と一緒に船を見せてあげるよ」

 それでいいなら。「じゃあ僕はここで」

 そんな時、「いいなあ」と姉が言った。

「しっかり聞いといた方がいいよ」と僕が告げると、姉は。「まあね、それは分かってるけど」

 つまり姉は、羨ましいと思ったことのみをそのまま口にしただけか。じゃあ忠告の必要はなかったな。

「じゃあまた」僕がその場を離れ、廊下を散歩していると、禅慈ぜんじさんが僕に声を掛けた。「やあ大樹だいきくん」

「あ、どうも」

「暇ならちょっとゲームでもしない?」

「お、賛成」

「じゃ、俺の部屋に行こう」

 そんなこんなで、僕は禅慈ぜんじさんについて行った。

 簡単なアクションやパズルのテレビゲームをして、のほほんと過ごす。

 数時間後、禅慈ぜんじさんの部屋に希美子きみこさんがひょこっと顔を出した。「ああいたいた、大樹だいきくん。船を見るんでしょ? 玄関で待ってるって言ってたわよ」

「はい、今行きます」



 佐倉守さくらもりの本家の屋敷の裏には屋敷そのものがすっぽり収まるほどの丘があった。その丘の中。そこが実は丸々宇宙船だった。外側からは丘にしか見えず、入口部分も芝生付きの扉でカモフラージュされている。

 居那正いなまささんが近くの木(のような装置)にあるボタンらしきものを押したような動作を見せると、その後、芝生付きの扉がこちら側の上空へと斜めにせり上がりながら左右に開いた。そこから入っていく。

 通路があった。材質はコンクリートか。幅は狭いが、高さは三メートルくらい。

 そこへみんなが入ったあとで、居那正いなまささんが通路の始まりの所にあるボタンを押した。すると芝生付きの扉が元に戻り、閉じられた。

 居那正いなまささんは「さ、こちらです」と先を案内していきながら話す。「あれはあとから付けた扉です、まだ船の一部ではありません。ほら見えるでしょう、あそこから先がそうです」

 奥を見やる。

 どう見ても材質が違うと分かる部分があった。つるつるとした白い壁や床、天井に途中から変わっている。それら白い部分と岩肌との間には、緩衝材もしくは摩擦力を上げるためにあるかのような木材が組まれている。多分その通りなのだろう、つまり、つるつるとした船体の上に、土や岩をしっかり積むための木組み、そのように見えるのだ。

 奥に進みながら――()()りながら(・・・・)――居那正いなまささんの声を聞いた。

「前後が細くなった亀の甲羅のような形だと異星望郷日記にもあります、現代的に言えば平たいラグビーボールのような。確かにそんな作りに見えるはずです、大きさは屋敷の端から端までと同じくらいで、かなりの大きさです。それを埋めたと日記にはあります。最初、日記の内容だけを知らされても、読み方を教わって読んでも、本当にそんな船があるのか私も半信半疑でしたが、ここを見て、事実だと認識しました」

「なるほど……」そう口にしたのは父だった。

 居那正いなまささんの解説は続いた。

「船の下を掘って少しは沈ませて、木組みを作り、上には土や石を載せて、隠した所に草花や木を植えた――、それが千年も続く我が家の庭の真実。災害で崩れたら埋め直したり……なんてこともあったのかもしれません」

 装置がたくさんある所には妙な文字列があった。おそらくボタンの説明書き。

 一応、居那正いなまささんが言う。

「触っても平気ですよ、今は動きません、稼働装置も停止させています」

 それらの文字は、曲線と直線の組み合わせで作られた文字だった。表音文字なのだろうか。少ない画数のものもあれば明らかに多いものもあるが……。日本と同じようにひらがなやカタカナだけでなく漢字もあるような、そんな感じだろうか? だとすると画数が極めて多いものは表意文字? ……画数が少ないものは使用頻度が高いように思える。それらは本当に表音文字かもしれない。

 まあ何はともあれ、これで見るものはすべて見た、そう思った時、装置があったような運ばれたような、そんな跡のある場所を発見。

「そこは、サクラの反応機があった場所です」居那正いなまささんが教えてくれた。

 なるほど、ここから機械工学研究室に運ばれたのか。

 そして研究され、使用された。僕が助け出された時も役立った。……ということは、何が動力かということや構造も、ほぼ分かっているということか? 技術者は凄いな。

 そう思ってから割とすぐ、居那正いなまささんから声が掛かった。「さあ皆さん、確認は終わりです、もう出ますよ」

 言われて船を出る。芝生付きの隠し扉の前に戻ると、最初のボタンで扉がまた閉じられ、それから今度はまた正面玄関へと歩いた。

 玄関では奏多かなたさんが待っていた。

 奏多かなたさんの目の前まで歩くと、居那正いなまささんが言った。「さ、帰りのゲートを頼むよ」

「オッケー」奏多かなたさんが四個の消しゴムによるゲートを作った。それで僕らは佐倉守さくらもり家から僕の部屋へと。

 奏多かなたさんは、僕に『じゃあな、お疲れ』と言ったみたいに軽く手を振りながらゲート化を解いたようだった。僕らが見る中、僕の部屋からゲートが消える。

 それからは、まずはみんな、リビングへ向かった。

 そこでとにかく色々と話した。

「展開が映画過ぎない?」だとか……それは姉が言った。

「俺からもさ、こういう力のことだけでもそもそも言えてればよかったなって……正直ホント悪かったなって思ったわ」僕に――だけじゃないかもしれないが、とにかく――謝ったのは兄だった。

 何も知らなかった母はこう零した。「正直、私、まだ夢なんじゃないかって」

「夢じゃないのが……怖いところでもあるよね」と、僕も、最初を思い出した。おんなじように困惑した気がする。

 なぜ僕だけが特に異なる性質を持っているのか、という話になった時、父は言った。「もしかしたら、未熟児だったかどうかが関係してるのかもなあ」

「え? 僕がそうだったの? 写真にはなかったけど」

 僕が問うと、父は。「いや、近延ちかのぶ理美りみのことだよ」

 兄ちゃんと姉ちゃんが?

「え、そうだったんだ」とりあえず僕はそう返事。

「ま、あの頃の願いは叶ったワケだよ、二人は元気で、至って健康だ」

 父がそう言って笑うと、姉が冗談めいた声で返した。「おかげ様で」

 すると父が。「……あとは夢とか仕事の問題だな」

「一気に現実に引き戻すのやめてくんない?」姉が言った。確かに――と、僕も少し笑ってしまった。

 さて。

 僕の力だけみんなと少し違う。

 この力の変化は、突然変異的なことなのだろうか。引き金は生まれ方――未熟児でないかどうか――? つまり、僕は健康な状態で生まれたから普通のマギウト使いとは違う――ということであるなら、ほかのみんなも未熟児だったってこと? サクラを宿す地球人としては、未熟児として生まれるのがほとんど? んなワケない。もしそうなら佐倉守さくらもり家や隈射目くまいめの人だってそんなことを話しそうなもんだけど……。

 どういうことだろう。

 うちだけの問題? 遺伝子的な問題? まあ、そう考えるとありえなくはないのかな、多分……。

 遺伝的な――と考えてから、血縁関係がまた気になった。

 藤宮ふじみや家は佐倉守さくらもり家と、そして華賀峰かがみね家と血縁だったのでは、という話だ。これがまだ予想でしかない……。

 僕は自室に戻ってスマホを手にし、国邑くにむらさんに掛けた。「僕の家族と佐倉守さくらもり華賀峰かがみね家との関係が分かるように、DNA鑑定できませんか? というか既にしていたりしてませんか?」

 聞いたらこう言われた。「既に鑑定してるって話はないわね、幾ら裏の組織だと言っても、了承を得られそうな相手から得もしないのは今までなかったと思う。それに、鑑定が本当に必要なのかにもよる。ともかく、私の仕事じゃないけど、隈射目くまいめでやれるから言っておくよ、そっちも了承を得といてね」

「分かりました」

 その話を父にしたあと、僕の部屋から奏多かなたさんが「やあ、さっきぶり」と顔を出した。

 準備が早いなあ、と思ってから、言い出しっぺの僕は父と共に奏多かなたさんの作ったゲートを潜った――。

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