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ブルーピーシーズ ~不思議な力が発現し子種や命を狙われ迷いの中で生きた僕の半生と関わる人々の生き方~  作者: 弧川ふき(元・ひのかみゆみ)
第二章 X

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21 話せない理由

 翌日、弟のカメラのデータを漁った時に、俺は思わずほくそ笑んだ。

「ふ、なんだ、あるじゃないか、いい写真が」

 ただ、一つ気になった。弟はこの写真で何を狙ったのか。

 必要でなければこんな撮り方は多分しない。部下に探させるためか? それとも、犯罪者に仕立てたかった、というところか。今の俺と同じような狙いがあったかもしれない、か。

 仕立てるなら雑誌社や新聞社、警察に。特殊部隊でも動かすなら警察に通報し写真を提出するのが手っ取り早いだろう。『賭け映像』の件では『能力』と『大樹だいき少年』と『警察』が結び付いたはずだが、そんな今、この写真の提出・通報をしたら、相当、大樹少年のことを怖いと思うはずだ。少なくとも疑惑は生じるはず。まあ今も抱いている者はいるかもしれないが。

 もちろん自分が関与したとバレないように人を使って通報、写真の提出を行う。が――、弟がそうしていたとしたら、その頃から警察がもっと動いていたはずだな。……映像のあいつらは護衛だ、それがついていたくらいだ、揉み消されたか? 『この写真』を、警察は信じなかった、それだけの何かがある……?

 いや、何かが警察以上の権力を持って……?

 アツシゲからは、『護衛が警察手帳を持っている』という連絡はなかった。『護衛がいて厄介で少々時間が掛かります』と聞いてはいたが、警察との関連性を耳にしなかった、一度も。

 別の団体として動いている存在? それが警察以上の権力を?

 弟にできなかったが俺にはできる、と思いたいが……、安易に思うべきではない、か……。これは無理そうだ、そのくらいに、あの少年がどっぷり何かに関わっている、その可能性が高い。

 いい写真だと思ったんだがな。

 これが使えないとなると……。

 だったら、こっち・・・で脅すか。もうこれしかない。

 報告ではこっち・・・にも護衛が付いているんだったか。それをどうするかが鍵だな。

 ……それにしても。少年の変身やこの能力が、いまだに話題にならない。

 なぜだ。なぜなんだ。中継を見た会員が、違法行為だと知っているためにそれを周りに言えない?

 いや、それだけではない気がする。

 何か……、何かを、警察が先回りしてやった? そうか、それはありうる……。




 機動隊と隈射目くまいめの組織員の色んな人達を前に幾つか質問され、事情を聞かれ、解放されてから、日常が戻ってきた。

 腕の包帯に関しては、それを見た母に「どうしたのそれ!」と言われ、僕が事情を隠した。「大したことないんだよ、平気平気、ちょっと擦っちゃっただけ」

「ならいいけど」

 この程度の反応で済んでいる。きっと怪しまれちゃいないだろう、うん、そう思いたい。

 その程度で済んだのは、多分時間も関係している。その時リビングで時間を確認したが、まだ八時くらいだった。うちでは、まだぎりぎり夜御飯の前。そろって帰ると不自然なのでバラけて一人ずつ帰ってなんとかなった、という訳だった。

 失った服やバッグ、スマホなんかのほとんどが新しく買い替えられた。それには隈射目くまいめも協力。

 そして普通の生活の日々――。とはいえ、僕、兄、姉、父の四人は、拉致された時のための発信機付きベルトを隈射目くまいめから与えられて普段から装着している。それでも姉はのんびり過ごしているみたいだ。

 兄はというと、水泳部のイベントで大忙し。

 そんな日々の中、考える。あの件の裏に一体どんな人物がいるのか。

 本当は考えたくない。でも、そうも行かないはずだよなあ、なんて思ったりする。僕はカッコつけてるだけなのかなあ、違うと思いたい。

 そういえばと考えた、兄や姉はいつマギウトに目覚めたのか。それによっては、僕みたいに狙われなかったのはなぜなのか、という謎も出てくる。……ああ、でも、もしかしたらマギウトを使う頻度が少なくて僕みたいに大食いになり過ぎなかったのかも。X線の検査情報の出所もハッキリしていたから……とかもあるのか? それに、あの華賀峰かがみね貫次かんじって奴がどう調べたかにもよる。

 学校や会社、病院……検査を必要とする人がいる所はいくらでもある。範囲を絞って『次の年はあそこ、今年はここ』という風にでも調査したのかも。それで今年は僕の学校付近を調べて、順番的に、僕が網に掛かるのが早かったのかもしれないな……。

 あとは、僕が『あの三人』の前で盾を作ったのが……。でも、あの時はああしないと……、ああしないと、人を守れない気がした。




 機動隊から解放されて連日、マギウトの練習を特に夜に欠かさず行った、色々思う所があって、気合も入った。そうしてようやく、ホウキの柄ぐらいの大きさにした四本のシャー芯を数秒操ってもギリギリ倒れないでいられるようになった。

 さらに数日後、ホウキの柄ぐらいの大きさの四本の芯を組み合わせたゲートをやっと作れるようになった。

 ただ、まだゲート移動はしない。実験が必要だ。ゲートを維持してノートの切れ端をそのゲートに通し、半分だけワープさせた状態でサクラを込めるのをやめたらどうなる? そんな疑問を解消しておきたかった。

 やってみると、ワープする面にまるでギロチンが下りたみたいに、ノートの切れ端は真っ二つになった。

 立体的なものでもやってみる。例えば消しゴム。それもゲートを通った部分と通っていない部分の境で綺麗に切断された。

 なるほど――と理解すると、急にやり切った感がしてきた。何やってんだろう、という感じもしてくる。

 こんな力がなかったら、狙われるかもしれないことで対策する必要なんかもなくて、こんな時間にロゴやフォント、看板のデザインの勉強として、絵でも描いてるはずだった。この力でどうこうしたい訳じゃないのに。

 力をきちんと習得して何かに備えなきゃいけないのは、なんというか……疲れる。

 冷静になって考えてみることも大事だけれど、嫌な事件なんてもう忘れたくなってきた。溜め息も出る。

 そうだ、今できたゲート化でどこかに行ってみよう、気晴らしに。これを使えば、人の目さえなければ、どこにだって行けるんだ。いいな、それ。どこがいいかな。お爺ちゃんとお婆ちゃんは今どうしてるんだろう、見てみたいかも。

 そう思って繋ぐ。

 その際裏庭を思い浮かべた。今の時間ならそこには誰もいないだろう。

 ゲートを通って裏庭に出てから、そっと、古民家然とした縁側から覗き見る。

 テレビを見るお婆ちゃんが見えた。何やらお爺ちゃんと話している。

「今度は東北なんてどうかしら」

「お好きな所に行きますよ」

「あら、たまには決めてくださいよ、尊重してくださるのは嬉しいですけど」

「そうかい。だったらそうだなあ、夏に行くなら……新潟にするか、色々と見たい所があるんだよ」

「じゃあ新潟ね。計画はお任せ致しますよ?」

「はいはい。あなたへのサプライズになりますから、お楽しみに」

「あらあら」

 会話を耳にして、二人の孫であることを誇らしく思った。互いに大事にしているのがとても強く伝わってきた気がしたからだ。――それに元気そうで、その声が聞けてよかった。

 振り返り、自分の部屋にゲートを繋ぎ、それを通って帰った。

 確かな実感が湧く。これで奏多かなたさんみたいに移動可能になった。

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