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ブルーピーシーズ ~不思議な力が発現し子種や命を狙われ迷いの中で生きた僕の半生と関わる人々の生き方~  作者: 弧川ふき(元・ひのかみゆみ)
第二章 X

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20-3

 僕らが出た場所は、都会から離れた所にある廃工場の外、という感じだった。遠くに山も見える開けた所だが、今は機動隊員が多くいて、そのほぼ全員が、僕らに銃を――。

 僕は戸惑い、敵じゃないと示すために手を上げることしかできなかったが――。

「待て、俺達は被害者だ、逃げてきただけだ」それは檀野だんのさんが言った。

 とっさの交渉。流石プロだ、早い。

 僕ら全員が手を上げた。

 そんな時、部隊の一番前にいた数名が顔を見合わせた。

 そのうちの一人が、胸の無線を手に取り、誰かに連絡する。「被害者を発見、これから中を確認します」

 その男性に指示されて、僕らのいた廃れた施設に先頭数人が入っていった。

 それについて行くように、何人もの機動隊員が続いて入っていく。そのうち何人かが僕を見た、なぜか疑うような目で。

 なんだ? なんでそんな目で見る。

 待てよ、まさか――。映像を見て? やはり中継されてしまった……? だとしても、そんな目で見られたくはなかった。存在そのものを疑われているような目で……。

 それにしても、どうしてこの場所が? なんで被害者だとすんなりと分かってくれた? やっぱり映像を見たのか? 僕が思った時、檀野だんのさんが、この場に残った男性に聞いた。「どうしてここが」

 するとこの場に残った男性、隊長のような人物が――「ゴーゴーゴー!」という声を指示として出していたが――それをやめて答えた。「実は――」





 十時間ほど前。私は護衛組からの定期の報告を待っていたが、それが誰からも入ってこないことに驚いていた。

 二十分ほど待ったものの、そのあいだにあの人数からの報告が一つもない。これはおかしい。

 私はほかの部下に「このことを調べてこい」と命じた。が、数分後、影も形もないと報告された。

 地下七階の第二会議室から同じ階の情報管理室に移動し、そこにある追跡用の画面を確認した。受信した位置データはある一点に集まっており、その幾つかは消えてすらいた。

 彼らの身が危い。これはもう明白だ。

 先代の長が警視総監に隈射目くまいめの存在を知らせ協力関係を作っていたのを聞かされていたので、別の者に変わっていなければあるいはと、私は、その個人の番号へと電話を掛けることにした。



 サイバー対策課捜査六係に所属する俺は、係長から呼び出され、課長の部屋へと行くように言われた。

 課長室にて。課長は俺にこう言った。「極秘任務を言い渡す」

「極秘?」

 課長はうなずいた。「ある秘密組織に関する任務だ」

「秘密組織?」俺は眉間にしわを寄せた。

「まあ聞け。その秘密組織では最近、複数の組織員から定期連絡が来なくなったそうだ。そのことに気付いた者が、部下に、連絡が取れない組織員を訪ねさせたらしい。が、どこにもおらず、行方が分からないそうだ。連絡が取れない組織員達はある一家を護衛していた。その護衛されていた者達の行方までもが分からないらしい。恐らく拉致されている。その組織も調査していると言うが、長引きそうだということで、我々にも協力してほしいと持ち掛けてきた――という話だ」

「なんですかそれ。秘密組織なら……従う必要あるんですか?」

「そう思うのも分かる。だがな、まあ……一応は犯罪者を追うという点では同業者のようなものらしいんだよ。それに被害者は……一般人だ」

 俺はもしかしてとは思ったが、とりあえず。「ああ、まあ、それなら。――で。つまり、どうすればいいんですか?」

「犯人の拉致の目的の調査と、被害者の保護をしなければならない。ほかの課にも極秘の調査任務が行き渡っている。我が課ではそれを――犯人の手がかりの調査を――君が秘密裏に行うんだ」

 そういうことか。

 怪しい交流がネット上でされてはいないかと探ってみるべきだろう。拉致の目的は何なのか、もしや人身売買では? それとも? そんな方向からの調査をということになるはず。ネットを使ったやり取りやそもそもそういった犯罪に関わっている者の動きを探る……。

 これに関わっている秘密組織のことも気になったが、まあそれは是非による。企業のセキュリティ対策業をやっていた時代から小耳に挟んで知っていた、陰から日本を支える組織があるかもしれないということを。都市伝説だろうとも言われているが、もしかしたらそれが……?

 そのことを課長に言ってみると、課長は。「法によらず民を守る秘密組織だな。私も名前は知らん、だが存在する。今回のはその組織のことだ」

 やっぱり。と思った俺に課長がまた。

「他言は無用だぞ。君の調査も直接私に報告しなさい、いいね」

「はい、了解致しました」

 自分の所属する部屋に戻りながら考えた。どうやら警察と同じような立場の組織らしい、それでも、法によらないということは、警察としては見過ごせないのでは? とも。

 いや、だからこその秘密組織か。しかも民を守るための。それが本当ならば、その組織のことなど気にせず、今は被害者のことだけを考えるべきだな。

 その組織の存在理由は分からないでもない。たとえば証拠やデータなど何もかもに認められ何の否定材料もない極悪な犯罪者一人がその手に爆破スイッチを持っていたとして、今射殺しなければ数百人もの人間が爆死するとしたら――スイッチが押されんとしているとしたら――俺だって撃つかもしれない。ただ、そこまでの犯罪者はそうはいない、そう信じたいが……。その組織員が調査の間違いか何かで無実の誰かもしくは有罪だが事情に頷ける者、反省した者を殺したりしたその時は、俺はきっと、その組織の味方をすることができないだろうな……。

 とにかく、調査をした。一時間くらい経ったあと――サイト管理者に認められた特定アカウントしか見られないとあるサイトを盗み見た時――、近いうちにとんでもないことが行われると知った。

「嘘だろ、ホントかこれ」

 それは、命そのものを見世物にする動画発信サイトだった。

 こういった発信をしないのであればその度にページを消しているのだろうか、今まで見付けたことがなかったレベルの危険度。

 よくよく見てから、なんてことをするんだと思った。気付いたら身震いしていた。それほどの恐ろしい事態。こんなことだけのために? もしやほかにも目的があるのでは。そんな考えも過ぎる。

 この情報を、まずは課長に報告。その伝達後、部隊を編制して対応してもらうことになるだろう。対応するのはかなり大きな部隊になるかもしれない、機動隊のような……。





「『あるサイトで、人の命を利用した賭け事が行われる』そういう連絡を受けて管理者を逮捕し、その賭けの対象者がいる場所を特定してここへ来た。もう大丈夫だ、映像になるはずのところを、サイバー対策課が通信不能にして阻止したそうだ。代わりに我々で見ているが……」

 そこで、隊長のような男性は僕をちらりと見た。またあの目だ。

 そのあとでその男性がまた。「信じられないことが現実に起こっている、それは理解している。が、周りは理解者ばかりじゃあない。何か一つ間違えば……、藤宮ふじみや大樹だいきくん、君は、危険人物として捕まり兼ねない」

 下手なことをするなよと僕に釘を打った、そういうことかもしれない。まあ妙なことをする気はないけれど、意思の表明をしておいた方がいいか。

 そう思って僕は言った。「ええ、そのことは分かってます」




 この部隊に協力を要請されたという医師によって、僕の左腕には部分麻酔の注射がなされた。銃弾も既に取り除かれている。

 あとは縫合ほうごう。その処置をされながら、隊長らしき人の声を聞いていた。

「サイトの管理者は既に逮捕しています」

 それに対し、廃工場を出る時には最後尾にいたウタガワさんが。「ええ、さっきも聞きました」

 やはりその会話は、ウタガワさんが奥にいて話を聞きそびれているのではと判断されたからだと思えた。

 隊長っぽい男が言う。「そうでしたか。ここにいたのはその人物が従えている部下か何かだったんでしょう、ひとまず安心してください、この件に関わっている共犯者を全て逮捕できたはずです。では私はこれで」

 その男性は敬礼をしたあと軽い会釈をし、廃工場の中へと入っていった。

 廃工場と表現しているが、実際何の施設だったのか。「何の場所なんですかね、これ」

 僕がつい聞いてしまうと、僕の腕を縫合ほうごうしている医師が。「もう使われてないけど、古いゴミ処理施設らしいよ。古いと言っても、そこまで昔じゃないみたいだけど」

 確かに、中はそこまで古びてはいなかった。それにかなり丈夫だった。

「ここを使えた、ここを知ってた――っていうのは、どういう人なんだと思います?」

 ここと犯人の繋がりは? 僕はそれを気にしていた。それに、本当にこれで全員捕まったのか? とも思っていた。とにかく安心が欲しい。

 話を聞いてくれている医師の男性は、少し考えたような顔をしてから『ああ』と言いそうな納得顔を見せた。「ほかにも共犯者がいるかもって? でもま、考え過ぎじゃないか? 警察もああ言ってるし。それに――まあ事件は終わったと思うけど――ほかにいてもだよ、こんな場所、調べりゃ幾らでも知られそうだしなあ」

 まあ、それも確かに、と思う。そこから辿れはしない、か。




「中継カメラの破壊も全て完了したようです」隊長然とした男性が言った。「ですが――」

「何です?」と、先を促したのは右柳うりゅうさんだった。

 傷の処置も終わっていて包帯もバッチリな今、彼らの会話を、僕は近付いて間近で聞くことができていた。

 そこへ、別の機動隊員が駆け寄ってきて。「隊長、やはり見付けたカメラのうち、一つだけデータの送信先が違ったようです」

 やっぱり隊長だったか。

 隊長は報告してきた部下に問う。「その送信先の特定は?」

「それが、幾つか中継地点があったようで、協力していたサイバー対策課の辿った先のPCが破損したようで――恐らく爆破されています。今回は特定が不可能になったそうです」

「そうか……残念だな。だが、ほかはよくやった」

「ありがとうございます。では!」

 部下が去っていくのを見送った隊長が、僕らの方へ向き直った。そして。「聞いた通りです。見付かったカメラのうち一つだけ送信先が気になっていたんですがね、それが特定できませんでした。……もしかしたらこの首謀者は、既に逮捕されたサイト管理人ではない可能性があります」

「つまり……」と、檀野だんのさんが言った。

 気になって、つい僕も声を出す。「ほかにも見てた人がいる? もしそうだったら、その人がサイト管理人にこのことを……今回のことを……」そこまで言葉にして「そうか」と思い付いた。「もしかして、僕らの能力について知ってたのも、その人経由で……、『あの声』……、僕らへの警告が、まるで伝聞みたいだった。『使えるそうだな』って、そんな感じで。だからやっぱり――!」

 隊長は、僕らの目を見て重々しくうなずいた。そんなことがあったのならその推察が合っている可能性は高い――と、そういうことだろう。

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