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ブルーピーシーズ ~不思議な力が発現し子種や命を狙われ迷いの中で生きた僕の半生と関わる人々の生き方~  作者: 弧川ふき(元・ひのかみゆみ)
第二章 X

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16-3

 日曜日にはマギウトの練習をした。もう悲しい思いをしたくない、させたくない、その一心で。

 かなりのレベルで扱えるようになってきた。ただ、扱えるシャー芯の本数はまだまだ少ないが……。




「アツシゲ様、少年が、妙な店の裏に入ったっきり出てきません、どうしますか?」

 私がそう問うと、アツシゲ様は電話口でこう言った。「なるほど……、ならば追うな。何をされるか分からん」

 言われればそれに従う。それだけで私()はアツシゲ様からをもらえる。

 従うのはその味を知ったからではない、アツシゲ様が気に入らない者を斬り捨てるのを知っていて、それでいいと思う者だけが残った、言わば同類、それだけのことだ。




 ふと気になって、缶をぶつけられて倒れたあの三人のことがニュースになっていないかと、隈射目くまいめのパソコンルームで調べた。……事件は隠されたのか、該当しそうなページが見付からなかった。

 うーん。

 悩んでいる僕に、とある女性が近付いてきた。聞かれる。「どうしたの?」

 彼女の胸には名札があって、そこには左雨ささめ真未まみとふりがな付きで書かれている。鳥居とりいさんの部下っぽい。実際どうなんだろう。

「あー」僕は頭の中でできるだけ整理してから。「僕が警察に写真付きで通報されたっていう事件の時の、缶で昏倒させられた三人のことが知りたいんです、あのあとどうなったのか気になって。ニュースになってるかなって思ったんですけど」

「あの三人なら……亡くなったって話よ」

 ショックだった。

「亡く……? え、そんな……」

「嘘って言えればよかったんだけどね」

 左雨ささめさんは僕の肩にぽんと手を置いた。そして。「気にするな……って言っても、無理な話みたいね」

 そう言って手を離すと、この席から去り始めた。

 でも少し歩いた所で立ち止まり、振り向いた彼女が、僕に言った。

「いつかこんなことを思い出しても、今みたいに悲しむことってそうないと思うけど、きっとそれって自然なことなのよね、次第に、あの時は辛かった、と思うだけになってく。……あなたがどうにかなってしまったらそれこそ悲しいから、思い詰めるのは他の人にとってもよくない、私にとってもね。せっかく命があるんだから、どんなことも落とし込めて……それでも責任の感じ方を間違えないで――誠実で――、まあ、亡くなった人のためを思う意味でも、いい人で居続けられれば……それが一番いいこと……だと私は思うな。うまく伝わったかな」

「……はい、大体は」

「そう、ならよかった」

 そう言うと、左雨ささめさんはまた僕に背を向けた。そして歩き出し、少し離れた斜め前の席へと。

 さっきまでそこに座っていたんだろう、そちらにはドアもないし。

 ――僕は、全部を僕のせいのように感じていた。


 黒い盾の裏に隠れさせた時、男が僕をも怖がったのか、後ろに身を引いた……、そんなことをさせないようにしなきゃいけなかった。それができなかった。僕のせい。ほかの二人も、どうにかすれば死ななかったんじゃ。そう思ってしまうが、あまりにもそう思うのは、どこかおかしいのかな。

 確かに僕は軍隊の人間なんかじゃない。全部を完璧にできる訳ないのに、全部自分のせいだなんて……。でも、そう思わなくていいと思うのも、なんだか……。


 一つ思ったのは――『こんな力と付き合っていかなきゃいけないのなら、もう、とことんまで付き合っていこう』ということだった。

 強くなろう。少しだけでも。少しずつでも。できる限り……。それで、助けられるように……。もっとうまくできれば。先手を打って後悔しないようにできれば。全部。全部……! 少しずつ……。


 左雨ささめさんの言葉で気付かされた。誠実で……居続けられればいいと言うなら……。

 心の中から泥や鎖が取り払われたみたいに、ほんの少しだけ気が楽になる。だからと言って切なさがなくなったワケじゃないけど。

「あの」

 僕は礼を言いたくて呼び掛けた。そして少し近付いた。

 既に座っていた左雨ささめさんに向けて、僕は軽く頭を下げた。

「ありがとうございました」

 以降は彼女の目を見て言った。

「さっきの言葉で、色々と、気付くことができて、ちょっと……ちょっとだけ、もやもやが消えたっていうか」

「そう? それならよかった」

 左雨ささめさんは、そんなの何でもないと言いそうな顔で笑った。

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