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ブルーピーシーズ ~不思議な力が発現し子種や命を狙われ迷いの中で生きた僕の半生と関わる人々の生き方~  作者: 弧川ふき(元・ひのかみゆみ)
第二章 X

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16-2

 あいつの兄として、華賀峰かがみねグループの会長として、俺は察した。「失敗したな、あいつは」

 ネクタイを緩くし、背もたれに身を預け、考える。

 あいつもそこまで馬鹿じゃない。が、連絡は取れない。ならばもう――。

 貫次かんじは、持ち物を警戒して奪ったかもしれない、俺達と同じ性質の武器を持っている存在が相手だ。だが、着替えさせることまでやったか? 時計やリストバンド、ハンカチや靴紐、ネクタイ、色々な物が俺達にとって武器になりうる。

 そうだ。着替えさせること。そこまでやれるかが肝心だ。

 あいつ、そこまでしなかったのかもしれないな。



 貫次かんじの家に行った。合い鍵で入った。一歩、二歩と踏み出しながら、念のため手袋をした。

 特にいつもと違いはなかった。地下も『真っ白』な状態……。

 あいつはあの趣味のための録画を度々している。

 映像を確認すべく、あいつの部屋で、パソコンを付け、あいつが自慢したことがあったファイル内の新しい動画を見てみた。

 だが動画ファイルはなかった、録画停止ができなかったせい? もしくは消されたか。ほかには……、あいつが捕まってパソコンへ送信するボタンを押せなかったから動画データを転送できなかった? 恐らくそれか。

 仕方なく、今度は地下にあるはずのあいつの隠しカメラを探し、メモリを抜き取って自宅に帰り、自分のパソコンで直接データを見てみた。

 カメラの機能でなら、オートで停止される部分まではデータで残る可能性があるとにらんだ――。そのメモリの一番最後のデータを見やり、思う。そのデータで合っていた。撃たれて倒れた様子が映っていた。

 ああ、これは死んだな、災難だったな――と、ひとまず地獄の弟に言葉を投げ掛けた。

 映像を更に詳しく見る。

 あいつ、猫を潰すのを見せたのか、見せたがりな奴め。

 だが部屋は真っ白だった。恐らく組織的になかったことにされている。まさかそこまでとは。信じられないが事実だろう。

 俺達は捜査されることを恐れていた。今は俺だけが。あいつと手分けして同じ能力者を探し――何人かいたが――中でも一番怪しいと睨んだ藤宮ふじみや大樹だいきから確かめ、あいつは「確証を得た」と俺に言った。

 藤宮ふじみや大樹だいきは能力者。藤宮ふじみや大樹だいきから抹殺していくことで、俺達への手掛かりを警察が掴めないようにしたかった。順繰りに怪しい者を殺し、俺達だけは誰にも捕まらない、研究者の手にも染まらない、そのはずだった。だが、藤宮ふじみや大樹だいきは既に誰かと組んでいる? 組織的に守られている――?

 何てことだ、だったら、この力については、その何やら組織には最低でも知られていることになる。

 そうだ、このような力があることを、既に知られているんだ。じゃあ、殺す必要性はもうほぼなくなっているんじゃないか? 行動しても俺が捕まる危険性が増すだけだ。

 じゃあどうする、放っておくか?

 奴らはこのカメラのデータに気付かなかった。油断している。救出を急いでいて、貫次かんじの奴がここまでやっているとは考えてもいなかったんだろう。奴らは猫の血の掃除や銃弾なんかの証拠隠滅で精一杯だった、ということになる……か?

 とにかく俺がこんなデータを手にしているとは奴らも思っていないはず。俺はしらばっくれていて一般人の振りができている。

 だが実は俺も同じ能力者。そうだと奴らは知らない。だから俺が尋問されていないのだし、あいつの家に入った俺も多分見られていない。

 尾行つけられている気はしなかった。もし見られていても、俺が弟に会いに行って『弟がいないな、どうしたんだ』と思うに至っただけ、という状況にしか見えないはずだ、そういう振りもした。

 俺はとことん能力のことを知らない振りをしよう、そうすれば誰も俺がそうだとは断定できない。証拠さえ出さなければ――、そうだ、証拠さえ出さなければ――、組織的に動いている彼らを、一網打尽にするのはアリ、か……?

 ……いや、もし一網打尽にできても、また別の『能力者を保護する団体』のようなものが立ち上がるだけかもしれない。やはりやらないでおくか? もしやるならどうする?

 大樹だいきとやらが守られているとしても、体に追跡用の機械を埋め込んで位置を特定し守り続けるというのは、難がある、藤宮ふじみや大樹だいきだけが、という意味であれば、恐らくそんなことはしていないだろう。仕掛けるなら服だ。

 だったら、俺はやはり、やるなら服を着替えさせるか。これは一石二鳥だ、能力者の武器を奪うことにもほぼなる……。

 しばらく考えてから、最終的な答えを出した。

「よし、やるか。どう料理するかな、このわずらわしい小蠅こばえを――。しかも今度は、その周りのゴミも掃除しなければならない、か。用意が必要だな――」

 ふむ、とうなずいてから、あいつのカメラのこのメモリカードを、引き出しに仕舞った。



 ――時間が経って隠し切れなくなれば、明るみに出るのは当然。警察も調査をしたが、俺を怪しむ証拠は出ないだろう。そしてインタビューされるのも当然。大きな事件だ。

 記者に取材される時も、俺は、兄として、そして会長としての威厳を保ちながら、頭の片隅で常に考えていた、大樹だいきという少年とその取り巻きをどうするかを。

 触れないのが一番よかったりする。それは分かっているが、いつかは俺にも矛先が向くかもしれない、俺もあいつ以上に世間に知られたくないことをしているからな……。だから行動には絶対に出ることになる。

 できればその行動は早い方がいい、それだけは間違いない。

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