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彼はあれから車を走らせ、別の地下駐車場に何度か入って出るという行為をしたあと、完全に尾行を撒けたと理解したのか、自分の家らしき場所のガレージの前まで車を進めた。
シャッターが開き、進み、停める。シャッターをリモコンで閉じると、彼は車を降り、トランクを開け、何かをし始めた。
どうやらナンバープレートを変えているようだった。
くそっ、それじゃあナンバーから特定することが……。
「さて」運転席に戻ってきた彼は、僕の鞄をまさぐった。
鞄の横のポケットから僕のスマホを取ると、彼は恐らくそれの電源をオフにし、助手席に捨てるように置いた。
そしてシャッターを開き、また車を進ませた。
ガレージから出ていくと、今度はまたしばらく走って、別の家へ。
「よし、これはもう不要だ」
唐突に彼がそう言った。
どういう意味だ?
『これ』と言う時、彼はシャッターのリモコンを手に持っていた。
じゃあ何か? そのシャッターのリモコンは、別の家のもの? だからって要らないって……? そうか! 別の人のリモコンだからか! いや、要らないとまで言うんだから、多分、『全く別人の所有しているガレージのリモコンと同型のもの』か! そりゃ必要ではなくなるし、捨てていい……!
くそっ、そこまでされたら誰もこの人の所に辿り着けないんじゃ――!
せめてサクラの反応で探してもらえないと……。
私は嘆いた。ここまで用意周到に大樹くんを狙う者がいるとは思っていなかったのだ。
GPSはどうだろうかと鳥居くんらが解析。大樹くんのスマホの最後の位置は、どこかの住宅街。
そこへ右柳くんに行かせた。
数分後、右柳くんが現地から。「この家には大樹くんはいません。さきほど住人が同じ色の車で帰ってきましたが、仕事から帰宅した風で……、この場所を利用されたとしか……。住人は事件と無関係としか思えません」
そんなまさか。
ならばもしや、ナンバーも偽装?
警察に問い合わせた。
住所は、今右柳くんがいる所のもの。つまりそこの住人が、ナンバープレートもGPS切断のタイミングも、丸々利用された、ということか。
こうなるともう手立てがない? くっ……、一体どうすれば。
最も大樹くんと接していたのは――、檀野くんだったか。私は彼に電話を掛けた。
「もしもし」
彼の応答があってほっとした。事情を話す。「大樹くんが誘拐されました」
「――! またですか!」
「今度のは手強いですよ、尾行も振り切られましたし、GPSからも辿れません。犯人は自分の場所を用意周到に隠している。それになぜか大樹くんのサクラが反応機に映されないんです、ゆえにそれで辿ることもできません」
「そ、そんな……。でも、本部長に案が出せないなら」
「いいえ、私も人間です、ミスはあります、だからこそ私はあなた方に頼ることもする、あなた方を信じている――、意見を聞かせてください。……たとえば、町中の監視カメラ――」
「どれだけ手あたり次第なんですか、それは無茶というものでしょう」
「……困ってます、何か意見をください」
ほかに手は……? 本部長に言われ、俺は考えた。
手がなければ、大樹くんは……。
追跡……? 犯人の特定が無理なら、大樹くんを……。
ん? 大樹くんを?
檀野くんの声が聞こえた。「もしかしたら――」
「何か思い付いたんですか?」
私はきっと気が急いていた。話を切るように促してしまったのだ。
檀野くんが改めて言う。「本部長、実は――」





