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ブルーピーシーズ ~不思議な力が発現し子種や命を狙われ迷いの中で生きた僕の半生と関わる人々の生き方~  作者: 弧川ふき(元・ひのかみゆみ)
第二章 X

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14 追跡

 僕を後部座席に乗せたあと、彼――三十代後半くらいの男――は、僕の手に手錠の片方を掛け、もう片方を、僕の隣に最初から置かれていた銀色の大きなケースの取っ手に絡めてから、もう片方の僕の手に掛けた。

 銀色のそれは多分ジュラルミンケースという奴だ。それは物凄く重い物を中に入れられているらしい、ほとんど動かせなかった。僕をここから動けなくするための物、どう考えてもそうだ。

 彼は、僕を乗せた側のドアをロック状態にして閉めた。

 気になって、運転席に近い側の後部のドアのロックを見てみた。そちらは最初から閉まっていたようだ、用意周到なようだ。

 彼は運転席に乗り込むと、早速出発させた。

 状況を確認し、恐怖した。僕はどうなるんだろう。

 どこへ行くというのか。

 とにかく、助けてほしい。隈射目くまいめならできる、きっと――、僕はそう信じるほかなかった。助かる。助かるはず――。でも僕自身は、ほかに何を考えればいいかも分からなくなってきた。全てが無駄なように思えて……。

 また何か起こるのか? どうにかなってしまうのか? 周りの人は?

 研究されるのか? 閉じ込められる? 死ぬのか? 僕は――。

「やめてくれよ、こんなこと」泣きたいのを抑えながら言った。それが精一杯。

 対して彼は、てきぱきとだが静かに、正確な動きで『変装』を解いていく。サングラス、マスク、帽子、付け髭……、とにかく沢山の変装グッズを助手席に置いていく。

 そうしながら、彼は僕に返事を。「そんな風に言われてもやめない、やめるワケがない」冷たい声だった。

 あまりにも冷酷。口調、態度……、さっきの脅しも。彼が悪だということを、ここにある全てが示している、そう思えた。

 堪らず聞いた。「なんでこんなことするんだ」

 運転中だからか、逃げられる可能性を考えたからか、それともその両方か、彼は答えることをためらったようだった。

 だが少し経つと。「俺はな、網を張ってるんだよ、最近はこの東京でだけだがな」

 この時、車はどこかの建物の地下へと入っていった。

 運転しながらの、彼の声。

「お前は健康診断を休んだはずだ。だが、この辺のどの病院からもお前の情報が出ない。最近は食事量だって変わったはずだ。もっと大きな変化もあったはず。急な変化はなぜだ? 俺は探してたんだ、お前のような存在を、お前や警察が、俺に辿り着きやしないかと思ってな。だが見付からない、お前の診断をした人物の情報が。どこで診断された? お前には謎がある、お前はきっと俺と同じ――そう思って鎌を掛けた。あの夜、何かを操ったな? 本当にお前は同類だったワケだ。だが、この間お前を殺そうとした時、何度も人影を狙ったのにお前には当てられなかった。予想外だったよ。仕方なくその現場を別の方法で利用することも考えた。それで思い付いたのは犯人に仕立てること。少々俺にはデメリットもあったが、お前も力のことを誰にも、それこそ警察には話せないだろう、だから、この方法でお前の行動を制限できると思ったんだ、逃げられちゃあ堪らない……、逃亡すれば警察が動く、そうなればお前を探し易い、警察も馬鹿じゃない、が、この不思議な力までは信じられないだろう。そして捕まったお前を殺すのは簡単だ。だから写真を警察に届けさせ、『目撃したのが事実だ』と人を使って通報させた――のに、お前は捕まらなかった」

 少し間を置くと、彼はまた。

「あとはもう、俺自身が姿を見せてでも、暇を作って直々に殺しに行くしかない」

 言い終わると彼はフッと鼻で笑った。

 僕を逃がさないぞということだろうか、それとも、こんなことにまでなるなんてな、ということか。

 それにしても、と思った。

 僕や警察が辿り着くのを嫌がった? ということは。

「警察に追われるようなことをしたのか?」

 僕が問うと、彼は。「……人より上に立つのは、楽しくてしょうがない。ま、お前はそう思わないタイプかもしれないがな」

 追われるようなことをして、人の上に立っていると実感している――?

「何をやってるか知らないけど、ゲスなことはやめろよ。こういうことをやめるのは、あんたのためにもなる、そうだろ? なあ、自首しなくてもいいからさ、もちろん僕も誰にも言わない、言えない、分かってる。だからやめてくれよ、なあ」

 説得を聞く奴だとは思えない。どちらかと言うと念のためだ。言わない訳にはいかないと思ったから。

「ふっ、まあ大抵の人間はそう考えるだろうな、それも理解……いや、把握しているよ」

 彼は大きくうなずいた。

 そして。

「俺はそんな人間をいたぶったり、無力な人間の血の花火を見たりするのがどうしようもなく好きでね、ついやってしまう……。ただ、お前のせいでこんな力の持ち主がこの世に存在することが世間にバレるのは――特に警察にバレるのは――困るんだよ」

 なんて奴だと思った。血の花火という言葉の意味はよく分からないが、それもきっと酷いことなのだろう。

 何か言ってやりたくなったが、僕が言葉を放つ前に彼が続けた。「さあどうだ、お前は俺の秘密を知った、だが知って何ができる? 力を使えるようにはさせないぞ、お前は無力だ。それを噛み締めるしかない、ちっぽけな存在だ。どうだ、怯えてみろ、……俺が喜ぶぞ。はははっ」

 彼が気味悪く笑った瞬間、車はどこかの地下駐車場を出た、入ったにもかかわらず、どこにも停めずに。……尾行をくためだったのかもしれない。



右柳うりゅうくん、今どこです?」

 その声は、車内のエアコンの前のホルダーに設置しているスマホからのもの。スピーカーで話せるようにしているし、相手の声は、絶対に聞き漏らさないほどに大きな声で聞こえている。

 俺は焦りを覚えつつ運転していた。周りに気を配れるレベルで最大限に急がなければならないからだ、やることが多過ぎる。そんな中で答えた。「グランドパークマーケットの地下駐車場です! でも駄目だ、見失った! そっちはどうですか!」



 右柳うりゅうくんに言われて、私は第一会議室付にて、この部屋付属の電話を手にした。機械工学研究室に繋がるボタンを押すと。「はい、こちら機械工の花井はない」そう言われた。部下の男の声。

花井はないくん、反応機を見て大樹だいきくんのサクラの位置を計算してください、今すぐ。彼は今、拉致されています」

「りょ、了解!」

 数秒後、この部屋付属の電話が鳴り、私が再び受話器を取った。「はい」

 相手は花井はないくんだ。さっき電話したばかりだが、と思って白髪を掻きながら、耳に集中した。すると花井はないくんの声は。「あ、あ、あの……、どういう訳か、反応が一つしかありません!」

 ――ッ? まさか、居那正いなまささんにも何かがッ? その可能性を潰すためにも問う。

居那正いなまささんは今どうしていますか? まさかお体に何か――」

「違うんです」花井はないくんは否定した。「今唯一映っているのが居那正いなまささんの反応なんです。つまり、大樹だいきくんのサクラの反応地点が――居場所が――分からないんです!」

「そんな……」

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