02 さらう者達
「早くそっちも!」
私は小声で叫ぶように指示した。
男の子に薬を注射したのと別の部下が、同じように女の口を塞ぎ、その腕に睡眠薬を投与した。
女の子も少しは逃げようとしたが、すぐにぐったりとした。
直後、部下二人に急がせ、女を荷台に乗せさせる。
命じながらも、私は周りを見ていた。
さっきからほかに人通りはない。そういうタイミングを選んだ。恐らく目撃者はいない。
運び込むのが済んで、すぐに部下二人から合図の声が。「オーケー」
私はトラックの後ろの扉をしっかりと閉めると、その扉(リヤドア)をロックし、運転席に乗り、トラックを出発させた。
暗いトラックの中で、奥の段ボールの中に隠されていたライトを点けた時、一緒に乗っている男が言った。
「大丈夫なんですかね、こんなことして」
俺はその言葉を疑った。何を聞くことがあるのか。
俺は女を押さえる役だったが、だから考えないようにしている、という訳でもない。その胸の内を確かめながら、同僚に答えた。
「こうするしかない、あの一家に頼る訳にはいかないからな。ま、これは理解されないだろうよ。だからこそバレずに採取するしかないんだよ。一族を利用しようとしても敵に回したことがバレたらやり合うことになるし、そうなったら負ける。厳重過ぎるんだ。だから俺達にできるのはせいぜいこいつを今のうちにってことだけだ。それに時間を無駄にできなかった、俺達以外にも狙ってる奴がいたら? ――必要なことなんだよ、コレは」
「苦しいっすね」
「言い訳っぽくて苦しいって言いたいのか?」
「あ、いえ……」
こいつは否定するが、実際はそういう意味だったんだろう。
もし違う意味だったとしても。
「こうするしかないって言ったろ、それが事実だ、飲み込めよ、必要なことなんだよ」
俺は吐き捨てるように言った。
それから考えた。恐らく『こいつら』のうちどちらかには特別待遇が待っている。だが、そうでない方には――。