11-2
ホームルームの出欠確認で、「休みは藤宮だけだな」と先生が言った。
え? と私は驚いた。いったい何が?
「どうして休みなんですか?」
私が聞くと、先生は言った。
「多分風邪だって話です。みんなも、クーラーを利かせ過ぎたりしないよう、注意するように。手洗い、うがいもね。ああ、うがいはし過ぎないように、殺菌し過ぎも免疫力低下の原因に繋がるらしいので」
今日のプリントを配る先生は、なんだかちょっと悩んでいるようだった。
今日は一人で帰るしかないのか――と思うより先に、お見舞いに行きたいなと思った。
大樹くんの住所を知らない私は、昼休みになって職員室を訪ねた。
「失礼します、一年三組の恩田実千夏です。真住先生はいらっしゃいますか」
「ああ、ここにいるけど」真住先生――担任――自身の声だった。
近付いて話してみた。
「あの……、藤宮くんのお見舞いに……、何かプリントがあれば届けますけど」
すると、真住先生はハハーンという顔をした。
「よし、そういうことなら、これ。住所は――」
先生は、「ええっと」と生徒資料を漁り、そのあと口頭で教えてくれた。
私はそれを聞いてメモ。
なんだか勘繰られちゃったな、と恥ずかしい思いに駆られながら、指示を聴いていた。「これ届けて、朝のプリントね」それを了承。これで大樹くんの家へ行ける――。
その日の夕方、インターホンが鳴った。うちの部屋のものではなく、マンションの入口のもの。そこで誰かがうちの部屋番号を押したことになる。
どちら様?
そう思いながら、扱っていた鍋の火を弱め、台所からリビングに向かった。
インターホンのモニター類はリビングにあった。付近の通話ボタンを押す。「はい、藤宮ですが」
すると。「あの、大樹くんと同じ学校の、友達です。届け物があって来たんですけど」
「あらそうなの? ありがとね。ドアが開いたら入ってきて。三〇五号室だからね」
「分かりました」
私はその声を聞くと、開錠ボタンを押して台所に戻った。
あとは鍋蓋を落とし、コトコト煮込めばよし。
それにしても、と思った。モニターで見えたのは私がまだ会ったことのない女の子。そんな子が大樹に届け物? あの子、やるじゃない?





