06-2
その部屋に入るためのドアの上に『ゲートルーム』とある。それを目で確認した時には、舞佳さんや紫音さんは練習を再開していた。
「あそこから自宅に帰ってるんですよね?」僕が問う。
隣には奏多さんと禅慈さん。禅慈さんが質問に答えてくれた。「うん、そう、うちらはみんな、あそこから来てる。ゲートを作れるようになったら教えてね、一人一部屋で、鍵は絶対その人だけの物、ゲート化できるなら鍵を渡すから」
「分かりました」
僕がそう言うと禅慈さんと奏多さんも練習を再開した。さて、僕も練習に入ろう。
胡坐をかいて畳の上に座り、シャー芯を前に出した。まずは一本だけ。
そしてどうしようかと考えた。小さいままテレキネシスの練習をするべきか? 今はシャー芯が小さ過ぎて、遠くへ動かせても、僕自身がその一本を見失ってしまう。大きくするのが先だな。よし。
そう意気込むと、大きくなるように念じた。
とにかく念じた。
ぐぐ、と少しだけ大きくなる。縦横高さの全ての比率が同じ状態で――いわゆる相似的に――拡大。未使用の鉛筆より少し長いくらいの大きさになってから、めまいがした。念じるのをやめる――と、芯は小さくなった。
こんなもんなのかな、と僕が思った時だ、奏多さんが僕に。「え、初回で今の変化量……、え、ちょっと待って、凄いんじゃね?」
何だか無理に褒められてるんじゃないかと思ってしまうが、目はマジだった。その奏多さんに返事だ。「嬉しいですけど、小さくて大変だとも言われてるんですよね、プラマイゼロだったりして」
「ああ、そっか……。ま、頑張って。あ、そうだ、大きさの問題を解消できたら俺らより凄くなるかもよ」
「なるほど?」確かにそういう見方もできそうだ。
前向きになれた。だからこそ僕は。「助言ありがとうございます」
「いやいや」
そんなこんなで、疲れれば小休憩、疲れれば小休憩……を繰り返して練習――。
まだ休憩の方が長い――サクラをかなり消耗しているのだろう――が、その途中で気付いたことがあった。
待てよ、このシャー芯の細さを変えるとどうだろうか――太くすると言ってもいい――、そうすれば、均等に拡大するよりも少ないサクラの消費で『遠くまで行っても視認し易い大きさ』になるんじゃないか?
そういう訳でシャー芯を太くする練習にシフト。
練習中、シャー芯は何度も円盤状になる。最初は一般的なコップの半分くらいの大きさ。次はそれよりも大きく。だんだん大きくしていって、最後は手のひら大に。
さっきの繰り返しよりも長く練習できた。
だが、徐々に太くできなくなっていく。
おかしいな、さっきはできたのに。
首の後ろを掻く僕を見たのか、舞佳さんが僕の隣に来て。「体内のサクラが少なくなり過ぎてるのよ。今日はもう帰って休まないと駄目よ」
「え、休めば勝手に?」
「うん。まあ鉄分は取らなきゃ駄目だけどね」
「鉄分?」
「そう。鉄分を取って休むことで免疫細胞の増殖みたいにサクラは増える。それも筋肉みたいに使う前より少し増えるから、次の日は練習量を増やせるよ」
そうだったのか。と思って少し気になった。舞佳さんはあの扇子で僕を助けてくれた人だ。ほかにどんな力を――。「その扇子、刃物みたいにすることもできるんですよね?」聞いてみた。
すると。「ああ、そうね」
それからやや間があった。「えっと、大樹くん、だっけ」
「あ、はい」
「……大樹くんのサクラは、反応機に映った――のよね?」
「あ、はい、そうです」
「……私達は、ほぼ全員映らないのよ。でも、大樹くんと、私達のお爺ちゃんのサクラは映るの。聞いた? あー、今日説明を受けたと思うけど、その、大樹くんに色々と説明したのが、私達のお爺ちゃん」
「あ、はい、それは何となく」家系図的なものが脳裏に浮かんで、それから。「なんでなんでしょうね、僕とそのお爺さんだけ映る――っていうのは」
「私が言いたいのもそれでね、つまり、お爺ちゃん、変身できるのよ、だから、あなたも変身できると思うのよね、それが反応機に二人だけが映った理由、『共通点』だと思うの」
それを聞いて自分でも目が大きくなるのが分かった。
「そっかぁ」だからあの時、変身時間が約八分と説明する時、居那正さんの言葉にやけに実感が籠もってたんだ、自分がそうだからだったんだな。
僕は少し時間を掛け、数回うなずいた。
理解を待ってくれたのか、そのあとで舞佳さんが。「その変身ね、どんな姿に変身するかってことを選んでしまったら、もうほかへの変身はできないらしいのよ。『一つの別の姿にのみなれる力』らしいのよね、それ。お爺ちゃんが残念がって話してた、昔のことだけど。だから……慎重に選ぶべきみたいよ」
「なるほど……。ありがとうございます、助言してくれて」
「いえいえ」
そう言って舞佳さんはゲートルームに。一旦帰っただけか、それとももう今日は終わりか、どちらかだな。





