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ブルーピーシーズ ~不思議な力が発現し子種や命を狙われ迷いの中で生きた僕の半生と関わる人々の生き方~  作者: 弧川ふき(元・ひのかみゆみ)
第一章 始まりの受難

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05-2

 居那正いなまささんはまだ僕に詳細を話した。

「口もほら、こんな風に横幅がかなりあるらしい、あごも下に長いし丸々としているらしいから愛らしい外見だったのかもしれないが、体を全体的に見たらとても厳つい。手足も長く強靭。尾があったような名残があるけれど、進化の過程で尾は退化したらしい、その点は私達と似ているね」

 確かにと思った。標準でこれなのか? がっしりとした体形。目の前に急に現れたら腰を抜かしそうだ。

 耳は僕らと違った。真横に、ひし型に近い形で伸びているらしい。これも結構な大きさ。

 絵を見た感じでは、ルオセウ人というのは意外と僕らに似ている。首が少し長いが、筋肉がきちんと支えている絵だからか、不自然には全く見えない。その筋肉もまた頑強さを際立たせている。

 堀の深い目の出っ張りの上に、眉毛も薄らとある。薄緑色。それが僕にも分かるのは、この絵が何か特殊な技術で修復されていると思えるほどの鮮やかさを持っているからだ――きっと本当に修復されているんだろう。

 更には最近描かれたらしい絵も添えられた。かなり写実的なものが数枚。

 それも含めて全ての絵を見るに、ルオセウ人というのは、サファイアの画像を白で薄くしたような薄い青の美しい肌を持つ鬼のように見える。まあ宝石ほどの光沢がその肌にあるかどうかは絵や文字からは分からないが。

 鬼を連想したせいか、つい思う、伝承と関わっていたりしないかと。まさかな、それは考え過ぎか。

 眉だけでなく、髪もある、それも薄緑色。

 うなじは長い首の下部なので、髪の毛が生える範囲自体は広いのだろう、頭部の髪に関しては僕ら地球人とあまり変わらない生え方に見えた。

 肘と手首の間の部分とすねには、亀の甲羅のような――そのぐらいの大きな模様の――小手でもあるように見える。アルマジロの体表のようなものだろうか、その部分だけ硬いのか。そこだけは浅葱色。

「この絵では髪が長いけど、これは個性だね、きっと種全体に共通のことなんかじゃあない。あとこれは甲殻だね、毛と同じ成分でできたものらしい」

 そう言った居那正いなまささんは絵の前腕とすねを指さしていた。

 やっぱり、と心の中でうなずく。ただ、毛と同じ成分だということまでは予想していなかった。あれ? 確かサイの角もそうなんだっけ。

 まだまだ説明は続いた。

「手の指は片方六本、足の指も片方六本。爪は半透明な翡翠ひすい色。この指の数――、宇宙船の一部らしき機械のとある部分では十二進数が使われているんだけど、これは彼らの指の数が要因だろうと見られているんだ」

「なるほど……」

 確かに聞いた。数値は十二進数のようだ、と。このことにもちゃんと符合してる……。

「で、でも、それでも、姿がというか、種が全然違うんですよね? 子供なんてどうやって――」

すると居那正いなまささんは。「うん、そう思うのも分かるよ。でも、ルオセウ人には変態能力があったんだよ、今の子は変身能力と言った方が分かるかな」

「変身? それで……? そうか、人間に変身したのか! 当時の日本人に変身した――」

「そう、だからできた。と、この異星望郷日記にある」

 ――はは、日記さまさまだ。

「じゃ、じゃあ、えっと……、ルオセウ人は、人間を……」

「そう、愛したんだね。色々と問題もあったみたいで、いいことばかりじゃないことがこの日記に書かれているが、それを読むに……、健気に接してくれた者を好きになり変身し、愛し、家庭を持った、そういうことらしいよ。いい話じゃないか、ねえ……」

 確かに泣ける話だ。望郷の思いがありながらも、それでも、もう帰れないとでも思ったのか、どうなのか……、とにかく、その思いがあったから現実を受け入れて――? そうするしかなかったのかな――それで、人を愛したんだ。愛せたんだ。だから一族がある。こんなに秘密を守り通せるほどの、力で支配しているなんて聞かないくらいの――その在り方を、継がせるための誠実さも持っていたんだろう、だから問題が起こっていないくらいの、それくらいの一族を築いた祖……? 素晴らしい『人』だったに違いない、僕はそう思ったことを誇りに思った。

「だがねえ、その変身は、長くは続かなかった」

「え?」

「酷いもんだよ。九分かな? いや、八分――どうかなあ、いや、八分も持たないかな」

 なぜだか実感がもっているな、と思った。まるで、居那正いなまささんが自分の話をしているみたいに。これは祖先の話なのに。いや、そうでもないのか……?

 まあいい、今気にしているのは、その変身時間の短さだ。

「じゃ、じゃあ、そのルオセウ人は――」

「そう、ルオセウ人は、ほぼずっと、元の姿のままで過ごしていた」

「――!」

 僕は感涙しそうになった。つい口に出る。「じゃあその人は――、いや、そのルオセウ人を愛した人は――」

「そうだねえ。見たことも聞いたこともない見た目恐ろしいとすら思ってしまいそうな存在を、理解し合える者として、しかも最愛の存在として、受け入れた。そして何があっても一緒にいたんだ。素晴らしい人だよね」

 ――何てことなんだ。そんなことが。大変なことだったはず。なのに。その姿のまま……?

 ――本当に尊敬する。

 そんな人がいたのか、この力を持つ一族の祖に……。

「でも、じゃあ、ルオセウ人は男だったんですか? いや、女だったとしても男に変身する必要があったのか、十月十日も変身が続かないなら……人としての遺伝子を残すなら――」

「うん、そうだね。性別を超えての変身、やろうと思えばできるだろうね、何せほぼ全ての細胞が一時的に変化するんだ。まあ、必死な思いがないとできないし、多分必要になることなんてないだろう。もしできても、そうだね、変身は長く続かない」

「じゃあ」

「でもまあ、『もとより、をとこ』と――男だと書かれている。男のルオセウ人が、当時一人の日本人の男に長くとも八分間だけなった。ほかにも生きていたルオセウ人はいたみたいだけど、結ばれたのは一人。ほかはしばらく暮らして病死したとつづられている」

「そっか……。それで、力が子供に移った」

「そう。そして子供は普通の、地球の人間の姿をしていた――」

 うなずくものの、居那正いなまささんは、ううむ、と悩んだっぽい様子を見せた。

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