表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブルーピーシーズ ~不思議な力が発現し子種や命を狙われ迷いの中で生きた僕の半生と関わる人々の生き方~  作者: 弧川ふき(元・ひのかみゆみ)
第四章 ケズレルモノ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

101/152

40-2

 希美子きみこさんのタオルゲートで組織に戻ってすぐ、私は言った。

「うまくまとまりましたよ。二度目のジャック犯との連携をしないようにした上で、自衛隊と――日本の部隊と――我々で協力できる流れです」

 この時にはもう、藤宮ふじみや家の誰の姿も第一会議室にはなかった。

 部屋に戻って休んでいるのだろう。この作戦にも参加しないし、それがきっと妥当だ。ただ、万が一の時は……。まあ、そんなことはないといいが。

 イチェリオさんが言う。「では今すぐにでもその何やら部隊と協力させて頂きたい」

「分かっています。希美子きみこさん、警視庁にゲートを」

「はい」

 希美子きみこさんは、私に言われてまたゲートを作った。警視庁の上空が見える。屋上の少し上にゲートが開いたようだ。




 陸上自衛隊の眞霞まさか駐屯地。そこに続々と車が入っていった。

 それらの車の中には、拠点の捜査に参加している私服警官と機動隊員、隈射目くまいめの一員とイチェリオさん、ヴェレンさん、シリクスラさん、希美子きみこさんと私の総勢三十人くらいが分かれて乗っていたことになる。

 今や彼らは――私も含め――『緊急特殊対策室』と名付けられた一室にいる。

 その一室にて、改めてイチェリオさんが状況を話した。

 すると、ここにいて着席している自衛隊員達――第三十一普通科連隊の第三中隊狙撃班の者達――はざわついた。彼らにとっては初耳。当然だ。

 狙撃班は中隊の中に複数あるらしかった。念のため動かすのは二班。全部で十二人ほど。

 ということで、今ここには総勢四十二人くらいがいる。

 まずは作戦を決めていく。

 イチェリオさんが言う。「私達三人は、あれがイマギロ部長本人かどうかの直接の確認を行います。もしものためには、あなた方が近くにいることすら気付かれてはなりません」

 言い終わったあと、誰かが唾を飲み込むような音が聞こえた。

 きっと本当にその音だ。

 彼らは危険な現場に立たされるのだ、無理もない。思ってから私は言った。

「こういったことを陸海空全ての……つまり最低でもあと二か所に伝え、どんな状況下でも対応できるようにします。もし海上でということになれば、陸上自衛隊は近くの港等に配置することも考えられます。可能性は陸上の方が高いですが、彼らが指定する場所にもよります。このことを念頭に置いておいてください」

 私のあと、イチェリオさんがまた言った。

「二度目の電波ジャック犯が罪人だと確認できた場合、迅速に準備し、戦闘を開始します、というのは、彼らがもし罪人でありこちらがそれを正しく認識できた場合、こちらが察したことを気付かれる可能性は高いし、恐らく攻撃されるからです。私達との戦闘で敵は武器を見失う可能性があります。そうなれば敵は『ゲート』を使えません。ですが走って逃げる敵を捕まえることは我々でも簡単ではありません、油断すると『別の装備』でやられる危険性も上がりますし、逃げ切られてしまう可能性もあります。武器無力化ができた時は合図を出しますので、それからは逮捕行動に慎重に参加してください。狙撃用の武器を使うなら足を狙ってください」



 陸海空。それぞれ一か所ずつ、近場で協力を要請できたあとで、また眞霞まさか駐屯地に戻ってきた。

 ほかの場所で伝えたのはここで伝えたこととほぼ全く同じこと。

 合図のためにと、第三中隊の中隊長がマイクと小型の通信装置を持ってきた。彼ら三人のそれぞれのマスクの前にマイクをもう一つ取り付ける。そしてそこからコードを伸ばし、腰に装置を取り付ける。しっかり固定。落としたりしなければ、これでこの中隊長に合図を出すことができる。しかも三人分もあれば合図を出せない状況にはまずならないだろう。

「マイクテスト、あー、あー」

 彼、イチェリオ・クルヨークの声。正確には翻訳機を通したあとの。

 それが聞こえると、イヤホンとそれに繋がる受信装置を持っている隊員――中隊長のすぐ近くにいた男性――がこう言った。「正常です」



 希美子きみこさんのタオルゲートで、俺と中隊長と嘉納かのうさんの三人と希美子きみこさん自身、そして警視庁の女性刑事、計四人が別の場所に移った。移ったこと自体は、GPS等で探られないようにするためだ。

 移った先はとある廃工場。

 ほかの四人が見守る中、スマホとやらのキーを押していく。

 掛けたスマホを俺は警視庁の女性刑事に渡した。

 彼女に渡した理由は幾つかある。

 俺の元の声がどんなに小さくとも電波に乗るかもしれないのであれば、それはデメリットになりうる。そしてこの女性刑事はこういった交渉が得意だと言った。それにこの捜査に参加しているくらいだ、自信や度胸も相当だろう。本当は、俺の代わりに話す人物は誰でもよかった。が、彼女が進み出て、それを拒否する理由もなかった。そういう訳だった。

 俺と駐屯部隊の中隊長と嘉納かのうさん、この三人で耳を近付け、ませた。

 そんな中、相手の声が。

「どうもこんばんは。こちらルオセウ人の穏健派、フジミヤダイキを保護したいと考えている者です。一大事です。私に伝えたいことがおあり、ということで間違いないですか?」

 その振りをしている可能性がある――お前はいったいどっちの味方だ――。

 俺がそう思いながら目配せすると、女性隊員が答え始めた。

「はい。実は、私達の所に彼がいます。彼の家族もです。でも、ほかに大きな味方がいません。少しなら味方はいます、でも……みんな心細いんです。もし、あなたがたが守るのが一番いいということであれば、彼らを預けたいと……。彼らもそのことに同意してます。……ちゃんと守ってくれるんですよね? 彼らを。それだけの準備をちゃんと――」

「大丈夫ですよ。任せてください」

「そ、それで、彼を……、彼らを、いつどこに連れていけば」

 いい演技だ、焦りも不安もかなりあるように聞こえる。相手が納得しそうな感じに……とてもなっている、俺はそう感じた。

 すぐに相手の声。「では……、都央とおう区にある廃ビル、旧緑棚堂りょくほうどう月詩路つきしじビルの前に来てください。今日でもよければ……そうですね……二十三時までに」

「明日だとどうなりますか? もう夜遅いので、危なそうですから。明日の朝なんかは――」

「明日の朝なら、六時くらいから待ちますよ」

 互いに相手をだまそうとしている……のかもしれない。少なくともこちらはそうだ。

 何だか滑稽こっけいだが、妙な声を届けてはならない、真剣な声を出さなければ――と、女性刑事も気を引き締めていたことだろう。



 そばにいた私は、中隊長として当然の責務をと思い、耳を近付けて通話を聞いていた。聞き逃さないように。

 ただ、そうするのはルオセウ人とやら以外であれば誰でもよかった。嘉納かのうさんやこれに加わった警視庁の捜査員を信じるのであれば、私以外でも。

 正直私も信じたかった。通話内容もそうだが、これまでのことも。そのために自分の耳で聞いておきたいという気持ちがあった。その思いからの行動でもあったのだ。

 タオルによって空間接続をするらしいゲートとやらを通って廃工場から戻った。全員戻ってきてすぐ、私は指定された場所のことを皆に話し、地図で確認した。

 都央とおう区にある旧緑棚堂りょくほうどう月詩路つきしじビルというのは、同じ区にある月詩路つきしじ駅から近い所にある。近くに(少し北部に)東京駅も。

 この付近の地形を頭に叩き込みながら、部隊の配置計画を行う。

 近くのビルの屋上には狙撃担当を、そして突撃部隊を脇に。ただし、相手にバレないようにしなければならない。つまり、相手がどんな風に現れるのか、それも考慮しなければならない。

 もし彼らの言うイマギロ部長(仮)とその仲間なんかがそんな場所でひっそりと現れたいのであれば、現れる場所は恐らくビルの中か屋上。『――ビルの前に』という言い方をしたのは、そうやってビルの中から、つまり、そこへ来る前にできるだけ人と出会わずに目的の彼らとだけ接触を図りたいから、という意図があってのことかもしれない。

 彼らがよくそこを使うのであれば、中にはいれるようにしておくかもしれない。が、それなら『中に入ってください』とでも言いそうだ。もしよく使う場所という訳でもなくそこに決めたのだとしたら、彼らはどこかから歩いてくるかもしれないが……、そうではなく、よく使わないが知ってはいてゲートで来れはする、ということもあるかもしれない、それならばやはり中か屋上ということは十分にありうる。

 やはり、彼らはビル内に、もしくはその屋上に現れる。その率は高いと思えた。だが確率だけで考えるべきでもない。

 警戒していることを知られぬように、私服で、素知らぬ顔で近付き、どこからも誰からも見られない死角に誰にも見られずに予め隠れ、待機――ということをさせなければならない。今回この現場付近にて、結成した部隊のうち、たった一人ですら見付かってはならないのだ。

 私はこれをきつく言っておいた。皆に。そして自分自身にも。

 更に考える。

 駅から直接行くのはどうも怪しまれそうだ。近付く方法や方向も様々である方がいいだろう。

 結局、今回、海空かいくうに頼ることはないだろう。我々とここにいる警察、味方のルオセウ人、組織・隈射目くまいめ、これらで編制された部隊だけで動くことになりそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ