黒雪伝説・王の乱 14
レグランドは困惑していた。
城の周囲に、見張りすら見当たらないのである。
まさかもう皆殺し・・・?
恐ろしい考えが頭をよぎる。
どうしようかと、しばらく辺りを伺っていると
城の一部屋で、白い布が振られている。
観察していると、その布は定期的に振られているようである。
罠か?
それとも囚われている人があそこにいるのか?
迷いに迷ったあげく、レグランドは黒雪を見習う事にした。
堂々と正門から入るのである。
あたしが無理をしないと、きっと黒雪さまがムチャをなさるから・・・
主を危険な目に遭わせるのは
親衛隊として、無能を意味する。
生き恥を晒すぐらいなら、犬死にを選ぶレグランドもまた
筋肉バカのひとりであった。
正門への道を歩き始めた途端
城の外壁の東端で、白い布が激しく振られ始めた。
レグランドは、反射的に道路脇の木の陰に隠れた。
北国の城は、城下町の東1kmぐらいのところに
孤立して建っているのである。
高い塀で周囲を囲まれていて
街道脇には木が等間隔で、ポツンポツンと生えているだけで
何とも寒々しい風景である。
逆に言えば、気付かれずに城に近付くのは困難なのだ。
レグランドは、そのまま夜を待つ事にした。
城壁の布は、自分を止めている気がしたからである。
太陽が沈みきり、自分の影が闇に溶け込んだ頃
先ほど、白い布が振られていたあたりで
今度はランプの明かりが揺れている。
レグランドは、足音を立てないように気をつけつつ
明かりの方へと走った。
明かりの主は、城内警護の兵士であった。
「王子さまたちはご無事でしょうか?」
「ええ、今は私の報告を待ってるところです。
あれから城内では何が起こったんですか?」
「それが・・・」
兵士が首を横に振りつつ言う。
「何も起きていないんです。」
「それは一時待機、とかでですか?」
「いえ、あの後、王さまは何も言わずに
部屋にお戻りになられて、それっきりなのです。」
レグランドは、兵士の言う事が理解できずにいた。
「私たち警護も、どうして良いのかわからず
城の者も皆とりあえず、通常の業務をこなしていて・・・。」
レグランドの無言に、兵士が小声で叫んだ。
「だって、ヘタに訊いたらマズい雰囲気なんですよ。
王子さまたちを追え、という命令でも出されたら
それこそ、困りますし・・・。」
「黒雪さまと王子さまのお子さまたちは無事ですか?」
「はい、ネオトス殿がお守りになっておられます。」
「そう・・・。」
レグランドは考え込んだ。
実際に追手が来なかった事から、この兵士の言葉は信じられる。
では、次にどうするか・・・。
「王さまの部屋を探る、しか選択肢はないだろう!」
いきなり真後ろで声がしたので
慌てて飛び退くレグランド。
見ると、ファフェイが立っていた。
後ろを取られる、というのは想像以上に悔しいものだ。
「拙者は忍びだから、これが仕事なのだ。」
ファフェイは、悲しき宿命のように頭を振ったが
単なる趣味である事は、レグランドにはわかっていた。
ゆえに、その小芝居で余計にはらわたが煮えくりかえった。




