黒雪伝説・王の乱 10
レグランドとファフェイは、西の村にいるクレンネルと会っていた。
「城から追っ手は来てないよ。
と言うか、動きがまったくないみたいなんだ。」
レグランドは眉をしかめた。
「それはちょっと解せないね。
あの王さん、何がしたいんだろう?」
「“権力の誇示” じゃないでござるかね、ウフッウフッ。」
「で?」
「へ?」
「誇示して、そしてどうするの?」
ファフェイはニタニタしながら、軽く答えた。
「何も考えてないんじゃないでござるかね、ウフッウフッ。」
「・・・・・・」
イラ付いて無言になるレグランド。
「この分だと、多分あたしも移動して良いと思うんだ。
エジリンが来たら、あたしは東に進もうか?
この辺ももうじき初雪だよ。
あたしらなら雪山越えも可能だけど
王都の連中には辛いんじゃないかね。」
クレンネルの提案に、レグランドがうなずく。
「そうだね、多分もう西には追っ手は来ない。
来ても、あまり意味がないし。
ここは放置で、我々は黒雪さま近辺にいた方が良いね。」
「クレンネルさんは、荒野と城の間のここに陣取るべきであろう。
私は城の南東に位置して
城に潜入するレグランドさんとの
連絡の中継ぎをいたすとしましょう。」
ファフェイのしっかりした喋り方に
レグランドが驚いて、広げた地図から顔を上げると
ファフェイはかけていたメガネを慌てて外した。
「メガネ、普段は掛けないんでござる、ヒュヒュヒュ
似合わないんでござるよー。 恥ずかちーーー! ウフッウフッ」
「ちょ、似合う似合わない以前の問題じゃ?」
「そこまでケナさないでほしいでござるよー、ヒュヒュヒュ・・・」
「いや、そうじゃなくて!」
いきり立つレグランドに、クレンネルが耳打ちをした。
「何て説明するつもりだよ?
『メガネを取ると気持ち悪いですよ』 ってか?」
そう言われたレグランドは納得した。
確かに、誰もそんなひどい事を言えるわけがない。
「黒雪さまは、『裸眼のおまえは気持ち悪い』 って
おっしゃるんですよ、ひどいと思いませんか? フシュッ!」
・・・言ってるじゃん、しかも一番言いそうな人が。
そこでレグランドは、逆方向から攻めた。
「あたし、メガネをしている人が好きなんだ。
だからずっとメガネをしていてくれないか?」
ファフェイはモジモジしながら、メガネを取り出す。
「うう~ん、惚れないでくださいよおっ? ウフッ」
握っていた鉛筆を、ついヘシ折ったレグランドだが
表情はあくまで平静を保つ。
メガネを装着した途端
ファフェイはキリッとしたインテリ・イケメンになり
レグランドとクレンネルを驚愕させた。
ちょ、顔付きまで変わってる!
「では、あたしはエジリンが来たら東に向かう。
エジリン、もう今日にも来ると思う。」
「うん、あたしは城に忍び込んで
とにかく状況だけ掴んで伝えるよ。」
「そして、それがしはそれを黒雪さまたちにお伝えしよう。」
「「 ・・・・・・ 」」
腕組みしてキリッとするファフェイを
呆気に取られて見つめるレグランドとクレンネル。
その後、三者は三方向にと歩き始めた。




