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水草

作者: 青条 柊

 好きな人が出来ました

 恋という川に溺れました

 岸辺を歩いていた

   はずなのに

 いつの間にか水中にいました


 もがくと沈みそうで怖いのです

 でももう浮かべないかも

   そう思うと

 手を伸ばさずにはいられない

 水面に透る太陽がキラキラ眩しくて

 つい目を細めてしまうのです


 水面の光は眩しくて

   惹かれます

 水底の泥は心地良くて

 いつの間にかゆうらゆうらと眺めるだけになりました

 太陽は今日も光を透してくれました


 いつの間にか

 水中の水草になりました




 好きな人が居ます

 恋という川は心地がいいのです

 水底から眺める光は

   気づくと

 月の光になっていました

 

 目を細めてしまうのです

 どうにかして光を浴びていたい

   そう思うと

 それでも動けはしないのです

 サラサラ流れる水面の光は優しくて

 壊れものを扱う気分になるのです


 月の光は優しすぎました

   浴びていたら

 水底は遂に暗くなってしまいました

 光を探そうとしてぐぐっと手を伸ばしたとしても

 最早届かない所に流されてしまいました


 いつの間にか

 水中の水草になってしまったのです




 好きな人が居ました

 恋という川の中で

 沈むでも浮かぶでもなく

     流されていきます

 いつの間にか水中でありました


 後ろを見続けて

 水中の水草であり続けてしまいました

 

 

 もう一度あの太陽の下で溺れたいと思うのは

 きっと愚かなことなのでしょう

ゆく河の流れは絶えずして

また元の水にあらず

よどみに浮かぶ泡沫は

かつ消えかつ結びて

        ――――鴨長明『方丈記』より

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